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コラム

データは財産?それとも負債?費用対効果を超える“本当に必要なデータ”はこれ!

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データの活用はオムニチャネル推進の核となります。これまで、データを効果的に活用するための体制や取り組みの始め方について説明してきましたが、実際には企業がデータを利用する際に「データのコスト負担」という問題が浮上することがあります。この課題が生じる原因を探るために、社内でのデータの扱い方についてさらに深く掘り下げていきます。データ管理や分析のプロセスにおける課題を明らかにすることによって、コストを抑えつつ、より効果的なデータ活用が可能になる道筋を探ります。【連載第8回:オムニチャネル~ビジネスを共創する時代の基本思考】

データは使う人が責任者!システム部門に押し付けちゃダメ! 

近年、多くの店舗がID-POSを導入し、買い物客のリアルな購買行動がわかるデータを容易に得られるようになりました。従来のPOSデータは商品の販売情報を保有するのに対し、ID-POSデータは商品販売情報と顧客の購買行動を個人単位で保有することが可能です。そのため企業は、会員情報と購入商品、店舗、日時の情報が繋がった状態で管理・分析できるようになり、店舗来店者に対してEコマースと同様の分析も可能となりました。

しかし一方、データを管理・運用するためのコストが大きな負担となりつつあります。個人情報を扱うため、セキュリティ環境を整備しなければならないほか、分析対象となる他システムのデータと連携する仕組みづくりも欠かせません。そのため企業の中には、システムやデータ処理に関するコストを情報システム部門が負担し、分析ツールや販促ツールの導入コストを営業や販売部門が負担するケースも珍しくありません。

全社におけるデータの理解が進まないことも課題です。縦割りの組織構造の企業がデータを管理すると、会社が保有する全データの状況やどんなデータを保有しているのかを理解する人が減ってしまう恐れがあります。予算会議や経営会議で、「これはどの部署が管轄するデータなのか?」や「ITだから情報システム部門がコストやその費用対効果を説明すべき」といった混乱が発生してしまうこともあるのです。

データは使用する人が、どの項目をどれだけの期間必要なのかを設計すべきです。その上でデータをどう処理し、蓄積して分析できるようにするのかを情報システム部門に依頼しなければ、使いやすい環境にはなりません。だからこそ、営業・販売部門の人たちがデータに関するプロセス全体とコスト、費用対効果を説明できるようにならなければなりません。こうした適切なステップを踏むことで、ITシステムが苦手な人でも情報を整理できるようになります。

よくある誤解は、「データはとにかくたくさん蓄積しておけば後で困らない」という考え方です。これは一見正しそうに見えますが、その結果、データベースに大きな負荷がかかる、分析結果を導き出すまでに時間がかかる、サーバーのコスト増を招く、データ容量に応じた従量課金型クラウドストレージのコストが膨らむなどの問題が発生することがあります。

だからこそ、まずは社内にあるデータとその項目を整理して全容を把握し、「どのデータを残すべきか」、「どのくらいの期間のデータを比較する必要があるのか」、「商品情報のどの項目のデータを管理・維持すれば良いか」といった営業的視点からの整理が不可欠です。そうすることで必要なデータ項目を必要な量だけ活用でき、費用対効果を計算できるようになるでしょう。

逸見光次郎

CaTラボ 代表取締役
日本オムニチャネル協会 理事

1994年に三省堂書店に入社し、神田本店や成田空港店などで勤務。1999年にソフトバンクに移り、イーショッピングブックスの立ち上げ(現:セブンネットショッピング)。2006年にはアマゾンジャパンに入社し、ブックスのマーチャンダイザーを務める。2007年にイオンに入社し、ネットスーパー事業の立ち上げ後、デジタルビジネス事業戦略担当となる。2011年、キタムラに入社し、執行役員EC事業部長を経て、2017年にオムニチャネルコンサルタントとして独立。現在はプリズマティクスアドバイザーやデジタルシフトウェーブのスペシャリストパートナーなどを務める。

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