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コラム

新たなスキル習得だけでは意味のない新人研修、企業が本当に学ばせるべきこととは

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 企業にとって4月は、学校を卒業したばかりの新入社員を迎え入れる時期。多くの企業が研修を通じ、社会の常識はもちろん、業務に必要な知識やスキルを新入社員に習得させています。最近はITリテラシー向上を目的に、主要な業務アプリケーションの基本操作を学ばせるほか、DXを見据えたグループワークなどの応用的なカリキュラムを取り入れる企業も少なくありません。多くの企業が自社の未来を見据え、今後役立つであろう知識やスキル習得に注力しています。
 一方で、自社がこれまでどんな道を歩んできたのかを新入社員に学ばせることも大切です。つまり「温故知新」です。自社の歴史から、今後役立つ知識や教訓を得ることが必要です。自社の人気商品がどんな経緯で生まれたのか、どんな改革を繰り返して成長したきたのかなどの歴史は、これからを担う新入社員にこそ伝承されるべきです。
 もちろん、社会人として今後役立つ知識やスキルを学ばせることは必要です。しかしそれより、自社がどんな環境に置かれていたのか。つまり、社会や市場、業界などの視点でこれまでの自社を俯瞰することで、得られる教訓は多いと思います。
 例えば、自社がどんな失敗を繰り返してきたのかを知ることも必要です。IT業界であれば、2000年代初頭に多くの企業がERPパッケージの導入で失敗しました。自社の業務の進め方に合わせようとERPパッケージをカスタマイズした結果、アップデートできない、トラブル時の影響範囲を把握できないなどの問題を引き起こしたのです。こうした教訓があるのに今、SaaSのカスタマイズに踏み切ろうとする企業が散見されます。これではSaaSをアップデートできず、SaaSを利用するメリットも損なわれてしまいます。過去の教訓がまったく活かされていないわけです。
 企業は研修時の勉強会で、新たな技術やトレンドだけを学ばせるべきではありません。自社の歴史を意図的に教えるべきです。歴史を美化せず、数々の失敗もきちんと伝えることが大切です。これにより新入社員は、失敗体験も積み重ねられるようになります。「昔の古臭い歴史なんて…」と思う若者にこそ、自社の本当の過去を学ばせる必要があるのではと感じます。こうした研修を機に、新入社員は自社への関心を深めるはずです。周囲の先輩社員に事業の生い立ちなどを聞く機会が増えれば、世代間のギャップも埋められるでしょう。先輩社員も新入社員に教えるため、自社の歴史を再勉強するきっかけになるでしょう。こんな環境を醸成できれば、組織としての結束力も強められます。
 入社したばかりの新入社員は、会社の中で誰よりもフラットな視点を持ち合わせています。「この商品はこうなればもっと良くなる」「こんな機能を備えるサービスなら面白い」などの視点をたくさん持っているに違いありません。企業にとって、これらの意見こそが自社を改革するアイデアの源泉なのです。こうした新入社員の意見を事業へと昇華させるためにも、企業は自社の過去を新入社員に包み隠さず教えなければなりません。過去の教訓は新入社員によって現代向けにアップデートされ、必ず活かされるようになるのです。
筆者プロフィール

筆者プロフィール

鈴木 康弘
株式会社デジタルシフトウェーブ
代表取締役社長
1987年富士通に入社。SEとしてシステム開発・顧客サポートに従事。96年ソフトバンクに移り、営業、新規事業企画に携わる。 99年ネット書籍販売会社、イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)を設立し、代表取締役社長就任。 2006年セブン&アイHLDGS.グループ傘下に入る。14年セブン&アイHLDGS.執行役員CIO就任。 グループオムニチャネル戦略のリーダーを務める。15年同社取締役執行役員CIO就任。 16年同社を退社し、17年デジタルシフトウェーブを設立。同社代表取締役社長に就任。 デジタルシフトを目指す企業の支援を実施している。SBIホールディングス社外役員、日本オムニチャネル協会 会長、学校法人電子学園 情報経営イノベーション専門職大学 客員教授を兼任
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