夏休みを迎え、日本の観光地は多くの人で賑わい始めています。アフターコロナの中、国内消費はどこまで回復するのか。消費行動を喚起するには何が必要か。ハワイ旅行で感じた現地の変化をもとに、消費者のこれからのニーズを考察します。【週刊SUZUKI #28】
新型コロナウイルス感染症による閉塞感から脱却し、これまでの日常を取り戻しつつある日本。観光地は日本人のほか多くの外国人で賑わい、国内消費の回復に期待を寄せる声も少なくありません。
では海外はどうでしょうか。アフターコロナを迎えた今、個人消費にどんな変化が見られるのでしょうか。そこで今回、私が海外で感じた“消費の変化”について話します。
私は7月末、少し早めの夏休みを取得。家族と1週間ほど、ハワイ旅行に出かけてきました。ハワイを訪れるのは4年ぶりです。観光地の定番であるハワイは4年前とどう変わったのか、観光客の消費行動はどう変化したのか。そんな変化を随所に感じ取れる旅行でした。
ハワイに着いてすぐに感じたのは、外国人観光客の変化です。私を含む日本人のほか、欧米人が大半を占めていたのです。4年前は中国人や韓国人など、アジア圏からの来訪観光客が多くを占めていました。中国による渡航制限や航空運賃の高騰などの影響により、ハワイを訪れる外国人も変わりつつあるようです。
消費に目を向けると、多くの観光客が「体験」を求めていることを痛感しました。ハワイには多くのブランド店が立ち並ぶショッピング街があります。しかし、こうした店舗に足を運ぶ人はわずかです。一方、遊んだり楽しんだりできる観光スポットは多くの人で賑わっていました。シュノーケリングやイルカウォッチング、パラセーリングなどのアクティビティを求める人が圧倒的に増えたと感じました。4年前と比べ、ユニークなアクティビティを楽しめる現地ツアーも増えていました。



ブランド品などを所有することに価値を見い出す「モノ消費」から、商品やサービスで得られる体験に価値を見い出す「コト消費」。モノ消費からコト消費へのシフトが加速し、ハワイではコト消費が常態化しているのを実感しました。モノをただ作るだけでは価値はない。ハワイで改めて思い知らされました。
こうした変化は、ハワイだけにもちろんとどまりません。日本も同様です。「コト消費」はもはや、国内の消費者共通の価値です。商品やサービスを開発、提供する企業は、日本の強みであるモノづくりにこだわるより、どんな体験を提案できるかを考え抜くことが必要です。コト消費を前提とした消費行動に追随するには、体験を磨き抜くことが何より大切です。
商品やサービスを利用する相手がどう感じるか…。これが体験という言葉の本質です。この本質を見失うことなく突き詰められるか。ハワイの観光産業が新たなカタチへシフトする中、日本の産業も新たなカタチへ生まれ変わることが求められているのです。

筆者プロフィール
鈴木 康弘
株式会社デジタルシフトウェーブ
代表取締役社長
1987年富士通に入社。SEとしてシステム開発・顧客サポートに従事。96年ソフトバンクに移り、営業、新規事業企画に携わる。 99年ネット書籍販売会社、イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)を設立し、代表取締役社長就任。 2006年セブン&アイHLDGS.グループ傘下に入る。14年セブン&アイHLDGS.執行役員CIO就任。 グループオムニチャネル戦略のリーダーを務める。15年同社取締役執行役員CIO就任。 16年同社を退社し、17年デジタルシフトウェーブを設立。同社代表取締役社長に就任。 デジタルシフトを目指す企業の支援を実施している。SBIホールディングス社外役員、日本オムニチャネル協会 会長、学校法人電子学園 情報経営イノベーション専門職大学 客員教授を兼任