「業務がまとまらない」「システムが混沌とする」DXの現場で起きる混乱の正体は、ただひとつしかありません。それは、“データを制していないこと”。どれだけ派手な施策を打っても、データが整理されていなければ成果は出ません。逆に、業務を整理し、データを武器にできた者だけがDXの勝者となれるのです。【連載第13回:ECの進化とシステムの変遷】
DXを成功させるうえで重要な取り組みの1つが、データに着目することです。データを整理していないシステムは不具合が起きやすく、時代の変化に対応できません。逆にデータを理解すれば、それは流行や時代に左右されない“不変の資産”となり、事業の成長や変革を支える基盤になります。
ビジネスでは、商品・顧客・店舗・物流といった多様なデータが日々発生します。これらを未整備のままにしておくと、在庫過多や欠品、顧客満足度の低下につながりかねません。どんなデータをどのように収集・管理・活用するのかを定義することが、DXの成否を左右します。複数システムの連携、API活用、AIによる需要予測やレコメンドなどを実現するためにも、根底にあるデータ構造を理解・把握することは欠かせません。
DXを支えるバックヤード業務に必要なデータ構造
主要なデータの3要素は、、商品データ、注文データ、顧客データ です。それぞれに必須のバックヤード業務が紐づきます。
• 商品登録:商品のマスタ管理、調達(発注・仕入)、在庫配置
• 注文管理:POS処理、決済確認、在庫引当、出荷・配送手配
• 顧客対応:購買履歴管理、配送案内、返品・交換、問い合せ対応
これらがDXの基盤業務です。店舗主体でもEC主体でも、対象が個人や法人どちらでも物販の基本構造は変わりません。
売上・成果を生み出す「フロント業務」
バックヤード業務だけでは売上は生まれません。DXによる成果を創出するには、注文データ、顧客データが生まれる公式を理解することが重要です。
来店・来訪者数 × 購買率 = 注文数
※ 法人取引では、リード獲得、リード育成の概念がでてきますが、応用です。
さらに、新規顧客とリピート顧客に分けて考える必要があります。
• 新規顧客売上 = 新規来店数 × 購買率(CVR) × 新規客単価
• リピート顧客売上 = 新規購入者数 × 2回目購入率(F2転換率) × 平均購買回数 × リピート客単価
成果を生み出すための主要施策
ECを例に主要施策をご紹介します。
• 集客(オンライン × オフライン連動):人が集まらなければ小売は成り立ちません。広告、SNS、イベント、検索対策で顧客を呼び込みます。
• 顧客体験(CX/UX):来店後に購買につなげるには、UI/UXやコンテンツの工夫が必要です。商品説明、レコメンド、レビュー、店頭とECの統合体験などが重要です。
• CRM(顧客関係管理):リピーターを育成できなければ利益が伸びません。購買データ分析、ターゲティング、パーソナライズ配信、会員特典などで継続購買を促進します。
フロント業務の施策だけに溺れて、バックヤード業務の精度が低ければ、欠品・誤配送・対応遅延が発生し、顧客満足度を下げてしまいます。結果的に、集客や購買率も伸び悩むでしょう。
また、運用が整理されずシステムが混沌とすれば、収益性は低下し、規模が拡大したときに業務やシステムが破綻します。データに基づき、フロント業務とバックヤードの両方を理解して初めて、DXは持続的に成果を拡大します。データの構造を理解し業務を整理し、売上の公式を数字で捉えることが、これからのDX担当者に求められるスキルなのです。

林雅也
株式会社ecbeing 代表取締役社長
日本オムニチャネル協会 専務理事
1997年、学生時代に株式会社ソフトクリエイトのパソコンショップで販売を行うとともに、インターネット通販の立ち上げに携わる。1999年にはECサイト構築パッケージ「ecbeing」の前身である「ec-shop」を開発し、事業を推進。2005年に大証ヘラクレス上場、2011年に東証一部上場へ寄与。2012年には株式会社ecbeingの代表取締役社長に就任。2018年、全農ECソリューションズ(株)取締役 JAタウンの運営およびふるさと納税支援事業を行う。2020年からは日本オムニチャネル協会の専務理事を務め、ECサイト構築パッケージecbeingの導入サイトは1600サイトを超える。
日本オムニチャネル協会
https://omniassociation.com/






















