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コラム

建設・金融はボーナス激増の一方、飲食は7.2%の大減給。2026年春に浮き彫りになった「給料が上がる仕事・下がる仕事」の二極化

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厚生労働省が2026年5月22日に公表した毎月勤労統計調査の2026年3月分結果確報によると、事業所規模5人以上における現金給与総額(一人平均)は318,563円で、前年同月比3.1%増となりました。名目賃金は確かに上がっています。しかし、この数字を素直に喜べない構造が、データの中に潜んでいます。

名目は上がった。では実質は?

実質賃金指数(消費者物価指数・持家の帰属家賃を除く総合で実質化)は前年同月比1.4%増となりました。名目3.1%増に対して実質1.4%増という差は、物価上昇がその分だけ賃金の購買力を削っていることを意味します。参考として示された消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)の前年同月比は1.6%上昇です。

指数の絶対値を見るとより明確です。実質賃金指数は87.1(2020年平均=100)です。つまり、2020年を基準にすると、物価を差し引いた実際の購買力はいまだ約13%低い水準にあります。名目賃金が上がり続けている一方で、実質の豊かさはまだ2020年水準に戻っていない。これが現時点での日本の賃金の実像です。

一般労働者とパートで広がる差

就業形態別に見ると、一般労働者の現金給与総額は414,612円(前年同月比3.6%増)、所定内給与は349,188円(同3.9%増)と堅調な伸びを示しています。

一方、パートタイム労働者の現金給与総額は113,183円(同2.0%増)で、一般労働者と比べて伸び率は低めです。ただし、時間当たり給与(所定内給与)は1,437円で前年同月比4.3%増となっており、時間単価ベースでの上昇は続いています。最低賃金の引き上げが時間単価に反映されている様子がうかがえます。

産業別では「二極化」が鮮明

産業別の現金給与総額(就業形態計)を見ると、建設業が438,470円(前年同月比8.6%増)、金融業・保険業が517,648円(同6.2%増)と高い伸びを示しています。情報通信業も481,518円(同3.5%増)と底堅い水準です。

対照的に飲食サービス業等は132,954円(同7.2%減)と大幅なマイナスとなっています。これは特別給与が前年同月比66.3%減と急落したことが主因ですが、業界間の賃金格差は依然として大きく、「賃上げが広がっている」という表現が全産業に当てはまるわけではないことがわかります。

共通事業所ベースで見える「本当の賃上げ」

今回の調査では「共通事業所」による前年同月比も参考として提供されています。これは同一事業所を前年と当年で比較したもので、事業所の入れ替えや労働者数の変化の影響を除いた数値です。

共通事業所ベースでの就業形態計の現金給与総額は前年同月比2.8%増で、全事業所ベースの3.1%増より低くなっています。企業規模の変化や新規参入企業の効果を除いた「純粋な賃上げ」は、やや抑えめな水準といえます。

DX推進と賃金構造の変化

毎月勤労統計は単なる賃金の記録ではなく、企業の人材戦略の変化を映す鏡でもあります。情報通信業や学術研究等の知識集約型産業で賃金水準が高く、伸び率も堅調な一方、労働集約型のサービス業では伸び悩む構図は、デジタル化・自動化の進展と密接に連動しています。

企業がDXを推進し、付加価値の高い業務に人材をシフトさせることができれば、それが賃金の底上げにつながります。実質賃金がいまだ2020年水準を下回っている現状を変えるには、名目賃金の上昇だけでなく、物価上昇を上回る生産性向上が不可欠です。毎月の統計を追うことは、その進捗を確認する作業でもあります。

レポート/DXマガジン編集部 權
(出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査 2026(令和8)年3月分結果確報」(2026年5月22日公表))

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