「ミドルシニアには経験に期待している」50代の転職や転身を語る場面で、よく聞かれる言葉です。実際、ミドルシニアの転職市場は拡大し、企業がこの世代に期待を寄せていることはデータからも明らかになっています。しかし、変化のスピードが速い時代において、「経験」は本当にそのまま価値として通用するのでしょうか。前回は、50代がキャリアを見直す中で起きる意識の変化について整理しました。今回はその続編として、「経験スキル」という言葉をあらためて捉え直してみます。肩書や職種のラベルの奥にある本当の価値とは何か。経験を“違う文脈で語り直す”視点から、ミドルシニアのキャリアの可能性を考えていきます。【会社員から社会人へ!50代からのキャリア実践ガイド #10】
拡大する50代の転職市場と「経験スキル」という言葉
「50代の転職市場が拡大している」というニュースを目にする機会が増えました。
総務省の「労働力調査(詳細集計)」によると、45〜54歳の転職者数は2012年平均で約40万人でしたが、2022年には約54万人へと増加しています。10年間で約14万人増、約35%の伸びです。さらに、エン・ジャパンの「ミドルの転職」調査では、2018年と比べて50代の転職者数が約4倍に拡大したと報告されています。
人口減少が進み、50代がボリュームゾーンとなる中で、企業がミドルシニア層に期待を寄せていることは明らかです。その理由としてよく挙げられるのが、「経験スキルがあるから」という言葉です。
しかし、この言葉を聞くたびに、私は少しもやっとします。
変化のスピードが速く、ビジネスモデルも前提条件も次々と更新される時代において、「経験があること」がネガティブに作用する場面も少なくないからです。過去の成功体験が思考を固定化し、新しい環境への適応を妨げる。そんな事例を、私たちはこれまで何度も目にしてきたのではないでしょうか。
「ミドルシニアの価値は、経験スキルがあること」この言葉は、ミドルシニア本人にも、受け入れる企業側にも、思考停止を招きやすいのではないかと感じています。
では、「経験スキル」とは一体何を意味しているのでしょうか。
経験を「違う文脈」で捉え直す
営業、PM、人事、品質管理、SE…こうした職種名で語られることが多いですが、実はそれらは分かりやすい「ラベル」に過ぎません。環境が変われば、前提も成功条件も変わります。だからこそ必要なのは、そのラベルを分解し、経験を“違う文脈で捉え直す”視点です。
例えば、「300人の営業部隊を部長として束ねていました」という経験。確かに迫力のある実績です。しかし、それはその会社、その商品、その組織構造という“文脈”の中で成立していた役割でもあります。
もし社員20名のベンチャー企業や、地域密着型の中小企業に関わることになったらどうでしょうか。
多様なメンバーの強みを見極め、柔軟に配置を変えてきたこと。
数字責任を背負いながら、経営に現場の事実を伝え、バランスを取ることに苦労したこと。
成果が出ない時に、方針を示し、リーダーを励まし続けたこと。
同じ「成果が出ない」場面でも、「自分が先頭に立ってやり方を示し続ける」「メンバー一人ひとりの話を聞き、状況を確認する」など、取り得る行動はさまざまです。分解していくと、「あなたが何を大切にしてきたのか」が見えてきます。
重要なのは、「どれだけ大きな組織を率いたか」ではありません。「どのような働きかけをしてきたのか」「なぜその行動を選んだのか」を問い直すことです。
そのシミュレーションは、一人で抱え込まず、第三者に壁打ちしてみるのも有効です。自分では肩書の陰に隠れていた価値が、別の光を当てられることで見えてくることも少なくありません。
一方で、ミドルシニア人材を受け入れる職場も「経験者だから任せておこう」と遠慮してはいけません。どれほど経験があっても、「この組織に新しく入ってくる人」であることに変わりはないのです。この前提に立って丁寧にコミュニケーションを取ることで、ミスマッチを防ぎ、早期に問題の芽を見つけることができます。
先日、ある自治体の人事の方が「経験者採用の方には、月に一度は必ず声を掛けるようにしている」と話していました。話す中で職場と噛み合っていない点が見えたら、職場のリーダーにも共有し、早い段階で文脈を合わせるよう働きかけているそうです。その組織ではすでに10名を超えるミドルシニアを採用・活用しており、こうした地道な取り組みが成果につながっていることに納得しました。
変化が前提となる時代において、経験は固定資産ではありません。違う文脈で捉え直してこそ、価値を持つ“アップデート可能な資産”になります。
あなたは、自分の経験を、違う文脈で語れますか?「正直、難しい」と思った方はぜひ一度、セカンドライフアカデミーに遊びに来てください!
日本オムニチャネル協会セカンドライフアカデミー:https://omniassociation.com/activity/academy/secondlife

筆者プロフィール
大桃綾子
Dialogue for Everyone株式会社 代表取締役
1981年生まれ、新潟出身。三井化学にて人事・事業企画に約10年従事。トリドールホールディングスを経て、2020年創業、40代50代に特化したキャリア自律・越境学習プログラムを展開。 地方企業と都市部人材の副業マッチングサービスJOINS取締役、新潟県産業ビジョン2030委員、広島県呉市中小企業・小規模企業振興会議ワーキンググループ委員などを務める。プライベートでは2児の母。
日本オムニチャネル協会
https://omniassociation.com/






















