多くの企業が今なお、DXを進められずにいます。こうした企業に共通するのは、経営者の自信のなさです。なぜ自信を持てないのか。持つにはどうすべきか。経営者が自信を持つときに必要な姿勢を考察します。【週刊SUZUKI #21】
DXを進められずにいる経営者の多くが、失敗を恐れがちです。DXを進めて本当に売上は伸びるのか、IT導入を予定通り進められるのか、新規事業は本当に成功するのかといった具合に、ネガティブなことが頭を埋め尽くしています。
つまり、自信を持てないのです。これまでのキャリアで一度も経験したことがないという不安、失敗したら社員の信用を失うのではという恐れから、DXに向けた一歩を踏み出せずにいます。「自信」という言葉が示す通り、「自分を信じる」ことができないのです。
では自信をつけるにはどうすべきか。自分を信じることができないなら、まずは「自分が信じるものを信じる」を実践すべきです。尊敬し信頼できる身近な人や、過去の偉人や成功者、さらには感銘を受けた書籍の内容を信じ、その信念や姿勢を真似します。これが自信をつける近道です。成功者たちの強い覚悟が自分を後押しします。
私も自分に自信がありません。これまでさまざまな経験を積んでもなお、自信を持って仕事に臨んでいるとは言い切れません。そこで私も「自分が信じるものを信じる」を徹底して実践しています。私の場合、「7つの習慣」や「論語」を読み倒し、そこで学んだことを真似しています。さらに、孫正義氏や鈴木敏文氏といった在職中に事業を学んだ人の教えを、今も経営に取り入れています。大切なのは、こうした人や書籍が示す考え方を素直に受け入れられるかどうか。謙虚な姿勢なしに、信じることを実践するなんて到底できません。謙虚に受け入れることが、自分を成功へと大きく前進させてくれるのです。
そもそも自分を信じるのは容易ではありません。普段の自分を見ると、きっと怠けたりサボったり手を抜いたりしているはず。こんな自分を信じられないと、自分自身が一番分かっているはずです。だからこそ自分を信じようとするより、信じる人や書籍を真似るのが有効なのです。
自分を信じて進もう、とただ鼓舞するだけでも自信はつきません。こうした姿勢はむしろ、自分が正しいと意地を張っているように見えます。経営者として周囲を頼らず、自身の信念を貫く姿勢はときに大切かもしれません。しかし、良いものは良い、正しいものは正しいと周囲の意見に耳を傾けることも必要です。柔軟な姿勢で多くの人や書籍を受け入れようとすればするほど、自信につながる“引き出し”は増えます。それだけ自信を積み重ねられるのです。
自分が信じる人や書籍をぜひ信じてください。そして真似してください。この取り組みが自分の後ろ盾になります。糧にもなるのです。そのとき初めて、社員に向かって心の底から言えるようになるはずです。「わが社もいよいよDXに舵を切ろう」と。
株式会社デジタルシフトウェーブ
代表取締役社長
1987年富士通に入社。SEとしてシステム開発・顧客サポートに従事。96年ソフトバンクに移り、営業、新規事業企画に携わる。 99年ネット書籍販売会社、イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)を設立し、代表取締役社長就任。 2006年セブン&アイHLDGS.グループ傘下に入る。14年セブン&アイHLDGS.執行役員CIO就任。 グループオムニチャネル戦略のリーダーを務める。15年同社取締役執行役員CIO就任。 16年同社を退社し、17年デジタルシフトウェーブを設立。同社代表取締役社長に就任。 デジタルシフトを目指す企業の支援を実施している。SBIホールディングス社外役員、日本オムニチャネル協会 会長、学校法人電子学園 情報経営イノベーション専門職大学 客員教授を兼任