相手と良好な人間関係を築くには、一方通行ではなく双方向のコミュニケーションを円滑にすることが大切です。自分は相手に対し、相手は自分に対し興味を持ち、共感する関係を築くようにします。では、相手を理解するにはどんな姿勢が必要か。相手が自分に興味を持ってもらうにはどうすべきか。双方が相手に興味を持つために大切なことを考えます。【週刊SUZUKI #144】
外交とは、単に相手を理解するだけでは成り立ちません。大切なのは、「互いの理解を深める」相互関係を築くことです。そのためには、相手に自分を理解してもらうことが不可欠で、そのプロセスは、まず相手に興味を持ち、その上で相手に興味を感じてもらうことから関係構築は始まると考えます。
つまり、相手との良好な関係を築くなら、双方向のコミュニケーションこそ重要です。一方的に話を聞くだけでも、一方的に自分を語るだけでも、真の理解は生まれません。相手があなたに興味を持ち、あなたを理解しようとする姿勢があって初めて、関係は次の段階へと進むのです。
では、どうすれば相手に興味を持ってもらえるのでしょうか。 第一に、あなたが心から相手に興味を持つことです。人は自分に興味を示してくれる相手には自然と好意を抱きます。相手の言葉、表情、感情に意識を集中させ、その話の裏にある本音や課題を探り当てる努力をしてください。事前に相手の興味の幅や深さ、広さを想定し、具体的な質問を投げかけることも有効です。
次に、その興味を相手に明確に伝えることです。意識的に相手を「褒める」という行動に表すようにします。褒められて嬉しくない人はいません。相手の強み、努力、成果、あるいは魅力的な個性を具体的に言葉にして伝えることで、相手はあなたが自分をきちんと見ていると感じ、あなたに対して肯定的な感情を抱くようになります。ただし、お世辞ではなく心からの称賛であることが重要です。
相手があなたに興味を持つ理由を理解しておくことも大切です。相手が興味を感じる主な理由は2つあります。 1つは相手との共通な興味や知識・経験をあなたが持っている場合です。共通の話題は、会話を弾ませ、心理的な距離を一気に縮めます。そのためには、自分の興味の幅と深さを広げ、多様な知識を持つことが、共通点を見つける確率を高めます。
もう1つは、相手にはない魅力ある知識や経験をあなたが持っている場合です。これは相手にとって「この人と付き合うと学びになるな」という付加価値を感じさせる要素です。あなたのユニークな視点、成功体験、あるいは失敗から得た教訓などを共有することで、相手はあなたとの関係から得られる「学び」を期待し、興味を深めるようになります。
そして、この全てを支えるのが「謙虚さ」です。いくら知識や経験があっても、傲慢な態度は相手を遠ざけます。常に学びの姿勢を崩さず、相手に教えを乞う気持ちを持つこと。相手への敬意と、学ぶことへの貪欲さを失わないようにすべきです。
相手に理解してもらうことは、自己顕示欲を満たすことではありません。それは真の相互理解に基づいた、豊かな人間関係を築くための努力なのです。
【外交の心得 その21】

筆者プロフィール
鈴木 康弘
株式会社デジタルシフトウェーブ
代表取締役社長
1987年富士通に入社。SEとしてシステム開発・顧客サポートに従事。96年ソフトバンクに移り、営業、新規事業企画に携わる。 99年ネット書籍販売会社、イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)を設立し、代表取締役社長就任。 2006年セブン&アイHLDGS.グループ傘下に入る。14年セブン&アイHLDGS.執行役員CIO就任。 グループオムニチャネル戦略のリーダーを務める。15年同社取締役執行役員CIO就任。 16年同社を退社し、17年デジタルシフトウェーブを設立。同社代表取締役社長に就任。他に、日本オムニチャネル協会 会長、SBIホールディングス社外役員、東京都市大学特任教授を兼任。




















