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コラム

すべての社会人に「営業力」が求められる時代に

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AIが多くの業務を担う時代、単に与えられた仕事をこなすだけでは価値を発揮できなくなっています。これから必要なのは、相手の課題を理解し、信頼関係を築き、ともに解決策を描ける力です。その土台となるのが「営業力」です。しかし今、多くの人がコミュニケーションに苦手意識を抱えています。その背景には学校や家庭、そして職場環境の変化があります。AI時代だからこそ不可欠になる“人とつながる力”の本質を考えます。【週刊SUZUKI #157】

「人と人とのつながり」。仕事の本質は、ここにあります。

どれほど専門性の高い業務であっても、仕事は決して一人では完結しません。同僚、上司、部下、取引先、顧客など、多くの人との関係性の中で初めて価値が生まれます。信頼関係を築き、相手の意図を理解し、協力しながら成果を形にしていく。この積み重ねこそが仕事そのものです。

ところが近年、この「つながり」が急速に弱くなっています。周囲と深く関わらず、極力会話を減らし、自分一人で完結させようとする働き方が広がっています。効率的に見える一方で、人と向き合う経験が決定的に不足しているのです。

その原因は、単に個人の問題ではありません。むしろ、学校・家庭・職場といった環境に大きな要因があります。

学校では正解を早く出す力が重視され、議論や対話の機会は十分とは言えません。家庭でもデジタル機器が会話の時間を奪い、家族同士でじっくり話す経験が減っています。さらに職場では、失敗を許容しない風土や過度なコンプライアンス意識が挑戦を萎縮させ、若手がぶつかり合いながら学ぶ機会が失われています。

こうして私たちは、人と意見を交わし、衝突し、理解し合うという「コミュニケーションの筋力」を鍛えないまま社会人になってしまっています。その結果、人と関わること自体を面倒に感じ、対話を避ける傾向が強まっているのです。

しかし、この流れはAI時代において致命的な弱点になります。

多くの人は「AIが進化すれば人との会話は減る」と考えがちですが、現実は逆です。AIはますます人間に近づき、自然な対話を前提としたツールへと進化しています。的確に指示を出し、意図を伝え、対話しながら活用できなければ、AIを使いこなすことすらできません。つまり、人と話せない人はAIとも話せないのです。

さらに深刻なのは、営業力のない人から順番に代替されていくという事実です。資料作成やデータ整理、定型業務はすでにAIが担える領域になりました。単に「作業する人」は、あっという間に置き換えられます。

一方で残るのは、相手の本音を引き出し、課題を見つけ、解決策を提案し、周囲を巻き込みながら物事を前に進められる人材です。つまり、営業的な力を持つ人です。

ここで言う営業力とは、営業担当者だけのスキルではありません。相手の立場に立って考え、信頼を築き、合意を形成し、協力を引き出す力のことです。社外の顧客に対しても、社内の上司や他部署に対しても必要となる、普遍的なビジネス能力です。

表情や声色から感情を読み取り、言葉にならない不安を察する力。「あなたと一緒にやりたい」と思ってもらえる人間的な魅力。周囲を説得し、仲間を巻き込み、物事を実行に移す調整力。これらはすべて、コミュニケーションの積み重ねによってしか身に付きません。そしてこれこそが、AIには真似できない人間固有の価値です。

だからこそ今、私たちは意識的に「人と向き合う力」を鍛え直す必要があります。対話を避けるのではなく、あえて踏み込む。面倒な調整から逃げず、関係性を築く努力をする。その延長線上にこそ営業力は育ちます。

AI時代に生き残る条件は、テクノロジーの知識量ではありません。人から選ばれ、信頼され、「あなたに任せたい」と言われる存在になれるかどうかです。これからの社会人全員に、営業力が求められる理由はここにあります。

「週刊SUZUKI」ではこれまで、仕事観や成長の心得を紹介してきました。次週からはその続編として、営業力を鍛える具体的な考え方や実践法を「営業の心得」としてお届けします。

人とのつながりが希薄になっていると感じている人ほど、ぜひ読んでください。AI時代でも必要とされ続ける力を、一緒に磨いていきましょう。

【営業の心得 はじめに】

筆者プロフィール

鈴木 康弘
株式会社デジタルシフトウェーブ
代表取締役社長
1987年富士通に入社。SEとしてシステム開発・顧客サポートに従事。96年ソフトバンクに移り、営業、新規事業企画に携わる。99年ネット書籍販売会社、イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)を設立し、代表取締役社長就任。2006年セブン&アイHLDGS.グループ傘下に入る。14年セブン&アイHLDGS.執行役員CIO就任。グループオムニチャネル戦略のリーダーを務める。15年同社取締役執行役員CIO就任。16年同社を退社し、17年デジタルシフトウェーブを設立。同社代表取締役社長に就任。他に、日本オムニチャネル協会 会長、SBIホールディングス社外役員、東京都市大学特任教授を兼任。

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