仕事は仕事、プライベートはプライベートと割り切った時間の使い方をする人が増えています。しかし、双方を時間で区切るべきではありません。なぜか。ここでは、仕事とプライベートをどう両立させるのが適切か、時間で区切らない仕事の仕方、プライベートの過ごし方について考えます。【週刊SUZUKI #41】
仕事とプライベートのどちらも充実させる「ワークライフバランス」の考え方が多くの企業で根付きつつあります。従業員の中には仕事に打ち込む一方で、始業前に勉強や運動をしたり、終業時刻で仕事を切り上げて趣味に割り当てたりする人も見られます。いかにプライベートを充実させるか。こうした考えのもと、ワークライフバランスを実践しようとする人が増えています。
しかし働き方が多様化する中、仕事とプライベートの時間を明確に分けるのが難しくなっています。急な対応を求められる連絡が週末に届くことがあるし、仕事の合間にプライベートな用事を済ませる人もいるでしょう。「いつから仕事、いつまでプライベート」といった線引きしづらい働き方が、多くの企業で常態化しています。仕事は仕事、プライベートはプライベートと切り分ける働き方は、通用しなくなりつつあります。
ワークライフバランスという言葉のイメージが先行した結果、多くの人が仕事とプライベートそれぞれの時間をバランスよく確保せねばという先入観を持っています。しかし、時間をどう確保するのか、どう工面するのかといったやりくりをすればするほど、双方のバランスを取りにくくなります。「時間を調整せねば」「早く帰らねば」と焦るほど、仕事もプライベートも充実しづらくなるのです。
仕事とプライベートを時間で切り分けるべきではありません。大切なのは、双方を良い塩梅で融合することです。仕事の中にプライベートがある、プライベートの中に仕事がある。こうした考えが当たり前で自然だと理解すべきです。例えば、旅行中に体験したことが仕事のヒントになるかもしれません。仕事中に知り得た知識が家庭で役立つかもしれません。仕事かプライベートかを問わず、感じたことや経験したことを活かせるようにします。その結果、プライベートでこれまで感じたことのない体験や気づきを得られるようになるでしょう。仕事で求められるアイデアや企画の幅も広がるでしょう。仕事とプライベートを融合すれば“時間”という制約から解放され、時間で追いつめられることによる焦燥感もなくなります。「やりくりしなければ」と、双方を無用に切り替える必要もなくなります。
プライベートな時間でも仕事のことを切り捨てないでください。そのとき感じたことを常に仕事に結び付けられるようにします。こうした考え方が自然に根付けば、仕事はより楽しくなります。プライベートももっと豊かになります。これまでの「仕事」や「プライベート」の既成概念を打ち破る過ごし方を模索してください。
筆者プロフィール
鈴木 康弘
株式会社デジタルシフトウェーブ
代表取締役社長
1987年富士通に入社。SEとしてシステム開発・顧客サポートに従事。96年ソフトバンクに移り、営業、新規事業企画に携わる。 99年ネット書籍販売会社、イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)を設立し、代表取締役社長就任。 2006年セブン&アイHLDGS.グループ傘下に入る。14年セブン&アイHLDGS.執行役員CIO就任。 グループオムニチャネル戦略のリーダーを務める。15年同社取締役執行役員CIO就任。 16年同社を退社し、17年デジタルシフトウェーブを設立。同社代表取締役社長に就任。 デジタルシフトを目指す企業の支援を実施している。SBIホールディングス社外役員、日本オムニチャネル協会 会長、学校法人電子学園 情報経営イノベーション専門職大学 客員教授を兼任