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コラム

脱・感覚論! 顧客の「なんとなく」の好意を、持続的なファンに変える 「2つの要素」

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効率的に購買意欲のあるお客様を見つけることが、必ずしも持続的な成長につながるわけではありません。短期的な売上を追う“狩猟型マーケティング”に偏重してしまうと、企業と顧客の関係は一過性のものに終わりがちです。SNSをはじめとした多対多のつながりが主流となった今、企業に求められているのは、顧客とともに成長し、長期的な信頼関係を築く“農耕型マーケティング”への転換です。本記事では、コトラーが示したマーケティングの変遷を手掛かりに、「購買者づくり」から「ファンづくり」へのパラダイムシフトを解説。経済的指標だけでなく、お客様の心にある「信頼」や「愛着」といった「心理ロイヤルティ」を科学的に捉え、持続的なファンベース構築に向けた具体的なフレームワークを提示します。【ファンをつくる「顧客ロイヤルティ」の科学 #4】

ファンづくりの基盤:心理ロイヤルティと「ドライバー」の構造

前回までは、「プラチナ会員だからといってロイヤルティが高いとは限らない」という、従来の企業都合のロイヤルティ評価の限界について論じました。購買金額や頻度といった経済的な側面だけではなく、お客様の心にあるブランドへの「信頼」や「愛着」、そして「共感」といった「心理ロイヤルティ」こそが、長く愛される関係を築く上での鍵となることを確認しました。

しかし、その「気持ち」の部分は目に見えず、捉えどころがないと感じる方も多いでしょう。そこで今回から、ファンづくりを「なんとなく」や「精神論」で終わらせず、もっと科学的に顧客の心の動きを捉えるためのフレームワーク、「3階層6つの法則」について解説していきます。

まず、このフレームワークの基盤となるのが、法則1:「心理ロイヤルティ(ロイヤルティスコア)は、複数のロイヤルティドライバーの満足から形成される」という考え方です。心理ロイヤルティの定義は、「ブランドや商品に対して信頼や愛着をもって末永く関係行動し続けたいと思う気持ち」でした。この気持ちは、お客様一人ひとりにとって一つですが、その気持ちを左右する要素を明確にすることが構造化の第一歩となります。

お客様がブランドと関わる中で、「ここがいいな」と感じるポイント、それが「ロイヤルティドライバー」です。ロイヤルティドライバーには大きく分けて二種類あります。一つは、商品やサービスの核となる価値を提供する「基本価値ドライバー」です。例えば、小売業における品揃え、商品機能、デザイン、店舗立地や、SaaS事業におけるソフトウェアの品質、機能性などがこれに該当します。もう一つは、お客様とのタッチポイントで価値を提供する「体験価値ドライバー」です。小売業であれば、店舗ディスプレイ、接客、ECサイトのコンテンツ、検索機能などが、SaaS事業であれば、チャットでのテクニカルサポートやFAQ、ユーザーコミュニティなどがこれにあたります。(図4)

特に重要なのは、お客様が実際に触れる接点である「体験価値ドライバー」です。現代のマーケティングでは、顧客体験に焦点が当たっており、この体験価値ドライバーを心理ロイヤルティ上の「強み」とすることが、重要な戦略となります。

これらのドライバー一つひとつの満足度を測定したものが「ドライバー満足度」です。例えば、「この商品のデザインが大好きで、ずっと買い続けたい」と感じるのは、「商品デザイン」というドライバーの満足度が高いからだと解釈できます。多くの顧客満足活動がロイヤルティを支えており、ロイヤルティ向上活動とは具体的には各ロイヤルティドライバーの満足度を向上させる活動です。心理ロイヤルティは顧客満足とは異なるレイヤーに位置しており、顧客満足活動が不要になることは決してありません。

筆者プロフィール

渡部 弘毅
ISラボ 代表

日本ユニシス(現 BIPROGY)、日本IBM、日本テレネットを経て、2012年にISラボ設立。一貫してCRM分野の営業、商品企画、事業企画、戦略・業務改革コンサルティングに携わる。現在は心理ロイヤルティマネジメントのコンサルティングを中心に活動。お客様の心理ロイヤルティアセスメントに関する独自の方法論を提唱し、ファンづくりの科学的かつ実践的なコンサルティング手法を展開する。業界団体や学術団体での研究活動、啓蒙活動にも積極的に取り組む。

■ 前回のコラム記事はこちら

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