寄稿・連載

    2022.08.05

    消費者の体験を価値と捉えるCXに目を向けよ【鈴木敏文のCX(顧客体験)入門 Vol.2】

    消費者の趣味・思考や消費行動が多様化する中、売り手となる小売業は、消費者が求める「体験」を価値として提供することが求められます。ここでは、「セブン‐イレブン・ジャパン」を創設したセブン&アイ・ホールディングス名誉顧問の鈴木敏文氏の著書「鈴木敏文のCX(顧客体験)入門」の内容をもとに、CXの必要性や価値をどう付与するのかを紹介します。

    コト消費というイベント性が重要に

      体験という「コト」への価値が高まることで、より重要性が増すようになったキーワードが「CX(顧客体験)」です。CXは、消費者が商品やサービスを購入・申し込むまでの過程、購入・申し込み後の体験を意味するマーケティング用語で、企業は消費者のCXを高める手段の1つとして、コト消費をどう具現化するか、良くするか、消費者を満足させられるかを、施策として検討するようになっています。

     ではなぜ、消費者は「コト消費」を強く望むようになったのか。鈴木敏文氏は著書の中で次のように述べています。
    自分の選択を納得できる理由、つまり、選択の納得性を求めるから
    via プレジデント社「鈴木敏文のCX(顧客体験)入門」
     消費者が商品を購入するのは、その商品に買うだけの価値があるから。つまり消費者は、買うべき価値があると自分の選択を納得させる理由を求めているというのです。これにより消費を正当化しているのです。

     例えば、「生活にメリハリをつけたいから」「自分へのご褒美をプレゼントしたいから」などの理由で商品を購入するケースは少なくなりません。こうした理由となるのが「コト消費」、つまり体験になりつつあります。
     モノにお金をかけるのではなく、自分が体験したいコト(イベント)にお金を使う。

     モノの価値だけをアピールする時代は終わり、コトとしての価値を発掘することが、市場を創造する条件になっているのです。
    via プレジデント社「鈴木敏文のCX(顧客体験)入門」
     鈴木敏文氏は著書で、消費行動の変化をこうまとめています。

    鈴木敏文氏が実践したイベント性付与の事例

     小売業は顧客に対し、モノを買うという消費行動に「イベント性」を付与すべきと鈴木敏文氏は著書で指摘しています。著書では実際に鈴木敏文氏がイベント性を付与した事例として、イトーヨーカ堂での「現金下取りセール」を紹介しています。

     これは衣料品を購入時、5000円ごとに不要になった衣類を1点1000円で下取りするという企画です。理屈上は「2割引き」ですが、「2割引きセール」と銘打たなかったのがこの企画のポイントです。

     鈴木敏文氏は、「20%引き」と謳わず「現金下取りセール」と打ち出した理由を、著書の中で次のように述べています。
     いまはモノ余りで、どの家庭もタンスの中は着なくなった服であふれています。着なくなった服は客観的に考えれば、価値はありません。でも、捨てると損をするような気がして自分ではなかなか捨てられない。

     ただ、下取りでれば、着なくなった古い服に新たな価値が生まれます。ならば、お金に換えて買い物をしようと思う。

    (中略)現金下取りなら、服を手放す損失の感覚を上回る喜びが得られるので、利用しようと思う。
    via プレジデント社「鈴木敏文のCX(顧客体験)入門」
     古い服をお金に換えるという発想は、消費者自身の選択を納得でき、消費を正当化できるというのです。結果として本企画は大ヒットし、他のスーパーや百貨店でも展開するようになったのです。

     鈴木敏文氏は、消費行動は常に人の心理や感情と結びついていると指摘します。その上で小売り業などの売り手は、自分たちの立場、都合で買い手と接するべきでないと言及しています。
     消費が飽和するほど、心理が消費を左右し、商品がイベント性を持つようになる。「コトを楽しむ心理の世界」にいる買い手に、売り手は「モノ売りの理屈の世界」で接してはいけません。
    via プレジデント社「鈴木敏文のCX(顧客体験)入門」

    DXマガジン総編集長 鈴木康弘の提言「お客様のためではない、お客様の立場で考える」

     最近、CXという言葉をよく聞くようになりましたが、CXの取り組みは各社さまざまです。「これ」といったCX向上策はなく、多くの企業が模索、もしくは迷走している状態です。具体的にどうすれば、よい顧客体験を創出できるかを描けずにいます。

     私がセブン&アイ・ホールディングスにいたとき、鈴木敏文氏から「お客様のためではない、お客様の立場で考えるんだ」と常に言われ続けました。パッと聞くと同じ意味に聞こえるかもしれませんが、「お客様のため」は第三者的な発想です。これに対し、「お客様の立場」は当事者意識で考えるということで、両者は大きく異なります。

     CXの向上を目指す上で、鈴木敏文氏がセブン&アイ・ホールディングスで実践した『コト消費』の視点が施策検討時の参考になるはずです。
    via DXマガジン総編集長 鈴木康弘
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    information
    書名
    鈴木敏文のCX(顧客体験)入門
    著者 鈴木敏文 取材・構成:勝見明
    出版社 プレジデント社
    発売日 2022年5月31日
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