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インタビュー

アート引越センターが「ぐるっとAI見積り」で切り拓くDXと未来の暮らし

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近年、引越し業界においてテクノロジーを活用した業務改革が急務となる中、アート引越センターの革新的な取り組みが注目を集めています。同社が開発した「ぐるっとAI見積り」は、その画期的な仕組みが高く評価され、見事に「DXイノベーション大賞2025事業部門にて審査員特別賞」を受賞しました。これまで、引越しの見積もりといえば「知らない人を家に上げる心理的負担」や「共働きや単身層にとって時間を捻出する難しさ」が大きな課題でした。本記事では、そのような課題を根本から解決する「ぐるっとAI見積り」の開発秘話と、テクノロジーの導入によって人と人との繋がりをさらに深めようとする、アート引越センターの熱きDXの全貌に迫ります。

50周年の節目と新社長の就任

――まず、御社の歴史やこれまでの歩みについて教えてください。

西嶋:弊社がDX化に足を踏み入れたのは、ちょうど社長交代のタイミングでした。現社長が就任した際、方針として「DX」に着目し、「より効率的に、そしてお客さまに喜んでいただける業務展開をしていきたい」と掲げたのが大きなきっかけです。
しかし、どれほどデジタル化が進みライフスタイルが変化しても、決して揺るがないものがあります。それは、50年間脈々と受け継がれてきた「お客さまのあったらいいなをカタチにする」という熱い思いです。最新技術を導入しながらも、この「アートイズム」とも言える根幹の精神を守り抜くことこそが、弊社のDXの原動力となっています。

見積もりの常識を覆す「ぐるっとAI見積り」の仕組み

―― 今回DXイノベーション大賞2025審査員特別賞を受賞された「ぐるっとAI見積り」ですが、具体的にどのような仕組みなのか、また開発に至った思いを教えていただけますか?

畠山:「ぐるっとAI見積り」は、お客様がご自身でお部屋をぐるっと動画撮影するだけで、AIが家財の量や種類を自動で識別し、荷物量を正確に算出するアプリです。そのままアプリ内で引越し料金の確認から申し込みまでをすべて完結できる仕組みになっています。
これまで、引越しの見積もりといえば、お客さまが業者の担当者を自宅に招き入れる必要がありますので、事前にお部屋を片付けたりとお客さま側にご準備が必要でした。特に単身の女性にとっては知らない人を家に入れる心理的なハードルが高く、忙しい共働き世帯にとっても時間的な負担が非常に重いものでした。こうした従来の訪問見積もりの煩わしさを解消し、お客様の時間的・心理的負担を完全にゼロにしたいという思いから開発に至りました。

左:広報宣伝部 畠山 菜織氏 右:不動産法人営業部法人営業一課 課長 西嶋 春香 氏

開発の裏側とブレイクスルー

―― 画期的なサービスですが、AIのエンジン開発など、華々しいイノベーションの裏側にはかなりご苦労があったのではないでしょうか?

畠山:AIのエンジンを育てるためには膨大なデータが必要不可欠です。開発当初は従業員一人ひとりに「自分の部屋を撮影してきてくれないか」と声をかけて回る日々でした。生活がわかる部屋の中を撮影するという心理的なハードルや「本当にサービス化できるのか」という不安を払拭しながら協力を仰ぎ、スピード感を持って開発を進めた結果、わずか3ヶ月で約700件もの貴重なデータを集めることに成功しました。

橋の点検技術からの着想と、家具の多様性という壁

―― そもそも、画像認識AIを見積もりに活用しようというアイデアはどこから生まれたのでしょうか?

西嶋:展示会で、インフラである「橋の点検工事」にAIの画像認識が使われているという紹介を見たのがきっかけです。絶対に壊れてはいけないインフラの安全を確認できるなら、引越しの荷物の確認にも応用できるのではないかと着想しました。
しかし、実際の開発は困難を極めました。橋はある程度決まった枠組みがありますが、お客様の家財は多種多様です。タンスと本棚の違いなど、AIが家具の複雑な形状を正しく認識できず、初期段階では2通り程度しか判別できないという絶望的な状況に直面しました。「新入社員でも3ヶ月あれば覚えられるのに、AIはなぜできないのか!」と、開発チームとエンジニアの間で意見が激しく衝突したこともありました。

―― そこからどのようにしてブレイクスルーを果たしたのですか?

西嶋:暗礁に乗り上げかけた開発チームを救ったのは、新しくオープンソース化された革新的な家具認識技術の登場でした。これにより開発はどんどん進むことになります。もちろん、現在でも「鏡の認識が難しい」といった技術的な課題は残っていますが、そこは「撮影時に鏡には布をかけていただく」といった運用上の工夫や注意書きでカバーし、サービスを形にしていきました。技術の限界を知恵と熱意で乗り越えた結果です。

人と人のコミュニケーションのためのDX、そして未来の暮らし提案へ

――テクノロジーが進化する中で、企業における人間同士のコミュニケーションの重要性についてはどのようにお考えですか?

西嶋:「引越し」はお客様の大切な家財を運ぶ仕事ですから、10年後も100年後も「人が運ぶ」という本質が変わることはありません。ですから、スタッフ同士のコミュニケーションがうまくいっていないと、最終的にお客様に良いサービスを提供することはできないのです。
AIやDXによって属人化している業務を自動化し、徹底的な業務効率化を図るのは、スタッフ同士のコミュニケーションや、高品質なサービスを提供するための全国統一のスタッフの教育などに「より多くの時間を割くため」に他なりません。デジタル技術に頼ることで生み出された貴重な時間を、人と人とのコミュニケーションを深めるために使う。これが私たちの描くDXの真の目的です。

――最後に、今後の展望について教えてください。

西嶋:引越しのタイミングは、ありとあらゆる需要が発生する瞬間です。「ぐるっとAI見積り」を使えば、お客様のお部屋にあるタンスやテレビといった家財のデータをAIがすでに把握しています。

畠山:将来的には、このデータを活用してECサイトや他業種(家具メーカーなど)とコラボレーションし、「新しい部屋にはこんな家具が合いますよ」といった生活空間の提案を行う構想を持っており、こうしたデータを活用した展開も今後検討していきたいと思っております。どんなに技術が発展し便利になっても、常にお客さまの声に耳を傾け、お客さまの満足を第一に考える。その精神を大切にしながら、今後も「暮らし方を提案する企業」として事業を展開していきたいと考えています。


編集後記
アート引越センターが推進する「ぐるっとAI見積り」は、従来の訪問見積もりの常識を覆し、お客様の利便性を飛躍的に高める革新的なサービスです。その裏側には、3ヶ月で700ものデータを集めた従業員の努力や、インフラ技術からの斬新な着想、そして現場とエンジニアがぶつかり合いながらも進めた泥臭い情熱がありました。

同社がDXを通して真に目指しているのは、業務効率化によって生み出された時間で、お客様やスタッフ間のコミュニケーションをより密にし、「暮らし方を提案する企業」として新たな価値を創造していくことです。最新のテクノロジーと、50年間変わらない「人への思いやり」。その両輪で進み続けるアート引越センターの未来から、今後も目が離せません。

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