WhatsApp Busines Platformをはじめとした複数のコミュニケーションチャネルを統合管理・運用する「Mobile Service Cloud」。店舗などへの問い合わせ対応を効率化し、応対遅延による機会損失を防ぐ効果などを見込めます。店舗業務のどんなシチュエーションで効果を発揮するのか。具体的にどんなメリットを見込めるのか。さらにCM.comは日本市場に対してMobile Service Cloudの価値をどう訴求するのか。 CM.comのインターナショナル・ゼネラル・マネージャーのホッドニー・ベナッジ氏 と、テクニカルコンサルタントのユープ・ブーセンバーク氏 、カントリーマネージャーの中藤丹菜氏、そして羅針の営業企画部マーケティング課主任の遠藤有隆氏に話を聞きました。
――CM.comではメッセージサービスを筆頭に、顧客対応向けのサービスを提供しています。こうしたサービスを導入する企業がどんな課題を解消し、どんな効果を上げたのかの事例があれば教えてください。
ベナッジ:腕時計の販売や買取事業を展開する羅針では、インバウンドをターゲットにした販売戦略を推進しています。その際の重要なチャネル戦略として、WhatsApp Business Platformを使った WhatsAppでの顧客との関係構築に注力しています。
WhatsAppは世界でおよそ30億人が利用するメッセージアプリで特に東南アジア、ヨーロッパ、メキシコ、ブラジルといった国々ではWhatsAppの利用が非常に多く、米国でも利用が拡大しています。企業がWhatsApp上で公式アカウントを保有し運用できるサービスがWhatsApp Business Platformです。羅針様のようなインバウンドをターゲットとする事業者は、WhatsApp Business Platformを活用することで、海外のWhatsApp利用者とのコミュニケーションを円滑に進めることができます。
――羅針ではこれまで、どのような課題を抱えていたのでしょうか。
遠藤:羅針は以前、腕時計を販売する4つの店舗がそれぞれ個別のWhatsApp Businessアプリを使って運用していました。WhatsApp Businessアプリは携帯電話のアプリケーションのため情報が店舗ごとに分断され、店舗間の連携に多大な手間がかかっていました。例えば、ある店舗への問い合わせが別店舗の在庫確認だった場合、その引き継ぎが煩雑だったといいます。こうした対応の遅れや遅延は販売機会の損失につながりかねません。機会損失を防ぐためにも、店舗ごとのWhatsApp Business アプリではなく、WhatsApp Business Platformの運用を検討する必要性に迫られていました。


――羅針では課題を解消するためにどのような解決策に打って出たのでしょうか。
遠藤:現状の課題解消に向け、WhatsApp Business Platformソリューションである「Mobile Service Cloud(MSC)」の導入に踏み切りました。各店舗のWhatsApp Businessアプリのアカウントを一つのWhatsApp Business Platformの企業アカウントに統合し、店舗ごとのWhatsApp経由の問い合わせを集約・管理できるようにしました。問い合わせの内容によって適切な店舗や担当者に振り分けられるようにしたのです。MSCを使ってこうした体制を構築したことでコミュニケーションプロセスが標準化し、業務効率が劇的に改善しました。

――「Mobile Service Cloud(MSC)」とはどんなサービスなのか、詳しく教えてください。
ユープ:MSCは複数のコミュニケーションチャネルを一つの管理画面で統合し、利用できる、当社のグローバルエンゲージメントプラットフォームの中核をなすソリューションです。以前は個別の製品として提供されていたさまざまなサービスを1つに統合することで、導入企業は単一のプラットフォームからすべてのコミュニケーション活動を管理できるようになります。例えばWhatsApp Business PlatformとAI機能を組み合わせることで、チャット内で支払いまでを完了させるなど、個々の製品では実現できなかった複合的な価値を提供することが可能になります。
――MSCの特徴を教えてください。
ユープ:MSCの特徴の1つが、企業が開発する必要なく、すぐに利用できる管理画面です。ログインIDとパスワードがあれば、どのPCからでもインターネット経由でアクセスできます。すべての問い合わせが1つの受信トレイに集約されるため、対応状況を俯瞰的に把握することも可能です。これにより、情報がサイロ化することなく、チーム全体で顧客対応の進捗を共有できるようになります。
担当者の割り当て機能も特徴の1つです。問い合わせの内容ごとに担当店舗や担当者個人を割り当てることができ、「顧客名と担当者名」といった具合に、双方を紐づけて管理可能です。誰がどの顧客に対応しているのかが明確になるため、引き継ぎの効率化や責任の所在がはっきりします。
タグ付け機能も便利な特徴です。会話ごとに「購入成功」「見込み客」「請求書に関する問い合わせ」といったカスタムタグを付与できます。これにより、どのくらいの会話が購入に繋がったかなど、定量的な分析が可能となり、応対品質の評価や改善に活用できます。
さらに、MSCではテキストメッセージに加え、画像や音声ファイル(MP3/4形式)の送受信が可能です。ボイスメッセージも管理画面上で直接確認・再生できるため、多様なコミュニケーションニーズに対応できます。
――羅針はMSCをどのように活用しているのか、具体的な使い方を教えてください。

遠藤:顧客がWhatsAppから問い合わせした場合、その問い合わせはMSCの受信トレイで一元的に管理されます。問い合わせ内容を確認した後、どの店舗に回答してもらうのかを振り分け、以後の対応を引き継いでもらうことにしたのです。腕時計の専門的な知識を求める問い合わせや、特定モデルの在庫を確認する問い合わせなど、内容に応じて適任者が回答する体制を構築したのです。さらに、商品の状態、付属物の有無、取り置きの可否、免税、値引き交渉など、さまざまな問い合わせ内容に対し、適切に回答できるようになったわけです。
一方、弊社ではアウトバウンドマーケティングにもMSCを活用しています。例えば、来店者や問い合わせがあった利用者に対し、「先日ご覧になった商品はいかがですか?」といったフォローアップメッセージを送信し、売上獲得の重要な手段として活用しています。
ちなみにWhatsApp Businessには「24時間ルール」という制約があります。顧客から最初のメッセージを受信してから24時間以内なら、企業は自由にメッセージを送信できるものの、24時間を超えるとテンプレートメッセージしか送信できなくなる仕組みです。羅針はこのルールに対応するため、事前に多様なテンプレートメッセージを準備。24時間ルールに縛られることなく、好きなタイミングで適切な内容のメッセージを送信できるようにしました。コミュニケーションの内容を定型化するとともにメッセージ送信時の効率化も見込めるようになりました。

――「MSC」を日本市場で販売するにあたっての戦略などがあれば教えてください。
中藤:日本市場へ展開するにあたり、MSCのローカライゼーションに注力しています。MSCはオランダで最適とされているソリューションではあるものの、日本市場で同様に受け入れられるとは限りません。そこでUIやUXデザインから、ビジネスの進め方まで、日本の文化や商習慣に照らして細部まで調整していく考えです。
一方、羅針様がMSCを先行導入し、効果を上げているのは、外国人観光客とのコミュニケーションにおいて海外の文化やトレンドに柔軟に対応することの重要性を示してくれた理想的な事例と捉えています。当社も同様に、日本企業の文化に寄り添うことが大切だと思います。日本企業の課題の本質に迫り、MSCを通じて課題解決に寄与できればと考えています。日本企業が何を求め、どんな理想形を描いているのかを共有し、理想の実現に向けて当社のソリューションが効果を上げられれば幸いです。ソリューションの導入効果を最大化するには当社として何をすべきかを模索しながら、日本市場に向くソリューションに仕上げていければと思います。

CM.comJapan株式会社
https://www.cm.com/
株式会社羅針
https://www.rasin.jp/






















