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セミナー

なぜ「いいサービス」をつくっても選ばれないのか? JTグッドデザイン賞に学ぶ、ビジネス×UXのサービス開発

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DXマガジンは2026年9月2日、「JT・グッドデザイン賞に学ぶ 人に選ばれるサービスのつくり方 ~実例から学ぶビジネスとUXの融合。企画のレベルがあがるチームと考え方~」をテーマにDX経営セミナーを開催しました。登壇したのは、株式会社Sun AsteriskのエグゼクティブUXデザイナー三角由紀乃氏と、エグゼクティブビジネスデザイナー加藤彰紘氏。モデレーターはDXマガジン総編集長の鈴木康弘氏が務めました。

セミナーでは、Sun Asteriskがサービスデザインや開発を支援し、日本たばこ産業株式会社(JT)が提供するメンタルケアアプリ「beSelf(ビーセルフ)」を題材に、ユーザー自身も気づいていない本音や潜在的な欲求(ユーザーインサイト)の見つけ方や市場分析、ビジネスとクリエイティブの連携、AI時代のサービスづくりについて議論しました。

インタビューで見つけた「休憩したという実感」のインサイト

まず三角氏が紹介したのが、JTのメンタルケアアプリ「beSelf」の開発プロジェクトです。
beSelfは、日々の気持ちや状態を振り返りながら、「自己理解・対話・回復」という3つのケアサイクルを通じて、自分自身の心と向き合う習慣をサポートするアプリです。三角氏は、メンタルケアやジャーナリング系のサービスは継続利用のハードルが高いため、「いかに日々の生活の中で使うハードルを下げられるか」を意識して設計したと説明しました。

写真:株式会社Sun AsteriskのエグゼクティブUXデザイナー三角由紀乃氏

プロジェクトで特に重視したのが、まだ課題が顕在化していない領域における将来的な顧客ニーズを探索し捉えるための「あったらいいな型」の事業開発アプローチで、ユーザー自身も明確には言葉にできていない本音や潜在的な欲求を意味する「ユーザーインサイト」を押さえることです。

三角氏らは、市場データだけでは捉えられないユーザーの潜在的な欲求を探るため、約30人に1対1のインタビューを実施しました。「心の豊かさとは何か」「ひと休みできたと感じるのはどんな瞬間か」といった問いを掘り下げていった結果、見えてきたのが「休憩の本質は、休むことそのものではなく、『休憩したという実感』を得ることである」というインサイトでした。

鈴木氏が「本当のユーザーインサイトをどうやって見つけているのか」と質問しました。これに対して三角氏は、あらかじめ用意した質問だけを順番に聞くのではなく、相手の発言で気になった部分があれば「なぜ?」と繰り返し掘り下げていく「半構造化インタビュー」を行っていると説明しました。

さらに、「ユーザー自身が『これが課題だ』と言ったことを、そのまま受け取ってはいけない」と三角氏は指摘します。本人が認識している課題とは別のところに、本当の原因や無意識の欲求が隠れている場合があるためです。 これを聞いた鈴木氏は、「営業で顧客のニーズを引き出すときにも似ている」とコメントしました。顧客が最初に口にした要望をそのまま受け取るのではなく、「なぜ」を繰り返すことで本当のニーズが見えてくると、自身の営業経験を振り返りました。

市場分析は「競合がいない場所探し」ではない。顧客起点で市場を分ける

続いて加藤氏は、ユーザーインサイトをどのように事業へとつなげていったのかを、ビジネスデザインの観点から解説しました。
加藤氏によると、市場分析の目的は分析することではなく、顧客に提供できる独自の価値である「バリュープロポジション」を見つけることにあります。顧客が求めている価値、自社が提供できる価値、競合が提供しにくい/できない価値。その3つが交わる場所を見つけることが、新規事業では重要だといいます。beSelfでも、市場をどのような軸で分けるべきか、何度も試行錯誤しました。

株式会社Sun Asteriskのエグゼクティブビジネスデザイナー加藤彰紘氏

加藤氏は、企画構想の約3カ月のうち、色んな調査分析を進めながらも1.5〜2カ月ほどは、本質的に市場を捉えるための「軸をつくっては壊す」作業を繰り返していたと振り返ります。鈴木氏が「一人で考えるのは大変そうですね」と問いかけると、加藤氏も「かなり泥臭く試行錯誤しました」と答えました。

その中で大切にしたのが、「逆張りを狙いすぎない」という考え方です。競合が集中している市場を見ると、競合のいない市場、いわゆる「ホワイトスペース」を狙いたくなります。しかし加藤氏は、「ユーザー自身が本当にそれを求めているのかを検証しなければ意味がない」と説明します。

需要が集まる場所なのであれば、競争が激しくても、その中で独自の価値をつくる。競合がいない場所を探すことよりも、「ユーザーが本当に求めているものは何か」を捉えることが重要だと述べました。

「上流・下流」と捉えない。異なる専門性を“面白がる”

対談では、サービスづくりを支えるチームについても議論が広がりました。鈴木氏が、ビジネス、クリエイティブ、テックという異なる専門性を持つメンバーがどのように連携しているのかを尋ねると、加藤氏は「一番大事なのは、お互いが対等であること」と答えました。

Sun Asteriskでは、「企画を考える上流」と「開発する下流」といった「上・下」のように捉えず、フェーズで捉え、ビジネス・クリエイティブ・テックそれぞれが対等な関係の中で、自身の専門性を持ち寄ることを重視しているといいます。

また三角氏は、案件によってビジネス、テクノロジー、クリエイティブの比重も変えていると説明しました。beSelfのように世界観やUI/UXが利用継続に影響するサービスではクリエイティブを厚くし、BtoBサービスなどで事業戦略や他社との連携(アライアンス)が重要な場合などビジネスのイシューがより重要な事業開発では、ビジネス側を厚くするといいます。加藤氏は、こうした連携を支えるカルチャーについて、「自分と違う専門性を持つ人を『理解できない・分かり合えない』と思うのでなく、その違いを『面白い・心強い』と思えるか」が重要だと話しました。鈴木氏も、「お互いの違いを面白がれることは、新規事業を進めるうえで強い武器になる」と応じました。

写真:株式会社デジタルシフトウェーブ代表取締役社長 鈴木康弘

AIが300案を出す時代、人に残るのは「選ぶ力」

最後に議論は、AI時代のサービスづくりへと移りました。beSelfのサービス企画・設計で は、2023年当時からAIを活用し、JTのアセットや市場トレンドの情報をインプットしながら、約300個のコンセプト案を生成し、人間がブラッシュアップしながら絞り込んでいきました。

鈴木氏が「AIがさらに発達していく中で、選ばれるサービスのつくり方はどう変わるのか」と問いかけると、三角氏は、AIはアイデアを幅広く大量に出す発散では非常に有効だと評価する一方、サービスに人の温度感を込めたり、ユーザーインサイトの微妙なニュアンスを表現したりする部分は、人間が担う必要があると話しました。

加藤氏も、AIに市場分析の軸を出してもらうことはできても、「その中のどれが本当に良いのか」を判断するには、人の目利きが必要だと指摘しました。その力を磨くには、「どれだけ日常で良い体験をしているか」「どれだけ感情をストックしているか」が重要になるといいます。

AIによって、多くのアイデアや選択肢を短時間で生み出せるようになりました。一方で、ユーザーの言葉の奥にある感情を読み取り、市場の中から進むべき方向を見極め、最後に何を選ぶのか。三角氏、加藤氏、鈴木氏の議論からは、AI時代だからこそ、サービスづくりにおける人の「洞察」と「判断」の重要性が、より高まっていることが浮かび上がりました。

関連リンク
株式会社Sun Asteriskへの問い合わせはこちら
https://lp.sun-asterisk.com/260902_omnichannel-seminar_r

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