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インタビュー

【レガシーシステム近代化へのアプローチ 第3回】ツール導入で属人的なシステム保守体制から脱却、情報システム部門こそDXして全社DXを支援する体制づくりを目指せ(連載全3回)

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“DX”という潮流に乗るため、レガシーシステムの刷新を検討する経営者は少なくありません。しかし、今一度踏みとどまってほしい。本当にレガシーシステムはDX時代にふさわしくないのか。10年先を見据えたシステム像を描くとき、大事なのはレガシーの切り捨てではなくシステムの本質を正しく見極められるかどうか。では本質を探るときのポイントと現実解はどうあるべきか。ジーアールソリューションズ 阿野幸裕氏に話を聞きました。

X-Analysis導入で効果を上げた事例

-IBM i(AS/400)上で稼働するアプリケーションを可視化する「X-Analysis」。アプリケーションのブラックボックス化を解消する手段として、多くの企業が導入している。具体的にどんな企業がX-Analysisを使ってどんな効果を上げているのか。 阿野:X-Analysisは業種を問わず、多くの企業が導入しています。例えば、ホームセンターを全国展開するコメリの場合、19台の論理サーバー(物理サーバーは12台)上で稼働する何万ものアプリケーションを可視化するのにX-Analysisを使っています。  主に2つの課題を解消するためにX-Analysisを導入しました。1つは、アプリケーションの設計や改修記録をまとめたドキュメントの作成・更新時間の短縮です。アプリケーションを改修してもドキュメントは手付かずという企業が多い中、同社はドキュメントを頻繁に更新してIBM iアプリケーションを管理・運用しています。しかし、ドキュメントを更新するのに時間がかかり、担当者の負担になっていました。システムを改修する時間より多くの時間をドキュメント更新に割いている状況は望ましくない。そこで更新作業を時短し、効率化を図りたいと考えていました。  もう1つは、情報システム部門の若手技術者の育成です。同社では情報システム部門を子会社化し、そこに300人超の技術者が在籍しています。多くの若手技術者も在籍していますが、いろいろなシステムやアプリケーションの開発や保守、運用を任せられるようになるには数年かかることも珍しくありません。IBM iに触れたことすらない若手も多い。IBM iを含むレガシーシステムの保守や運用を任せられる若手を短期間で育成したいという思いもありました。  これらの課題を解決する手段として、同社はX-Analysisを導入しました。前者の課題については、X-Analysisの可視化機能や影響分析機能を活用することで、ドキュメントを更新する時間を半減。アプリケーションを改修したときの影響を調べる時間をX-Analysisで大幅に削減しました。  後者の課題も、X-Analysisを使えばIBM iに触れたことがない若手技術者でもアプリケーションを調査することができます。IBM iをすべて理解せずとも、その上で稼働するアプリケーションを“丸裸”にできるわけです。これならアプリケーションにトラブルが発生しても、何が原因なのか、どのシステムに影響が及ぶのかといった調査を実施できます。これまでならIBM iに徐々に慣れてもらい、調査経験をコツコツ積み上げるしかありませんでしたが、X-Analysisを使えば育成期間も短縮できます。短期間で仕事を任せられるようになった若手技術者のモチベーションアップや理解力向上にも寄与しました。
図1:コメリのX-Analysis導入による効果

図1:コメリのX-Analysis導入による効果

-コメリとは異なる効果を上げた事例も教えてほしい。 阿野:カタログギフトを企画・販売するハーモニックの場合、属人的なIBM iの運用体制を脱却する目的でX-Analysisを導入しました。同社では法人向けギフトサービスの強化や、自社のリソースを活用したフルフィルメントの受託業務への進出など、業務に変化が起こっています。こうした変化に追従して、システムを改修する必要が生じていたのです。  しかし、IBM iを軸とするバックエンドシステムとの連携のスピードが問題になりがちでした。IBM iを保守・運用できる技術者に限りがあり、いざ連携しようと思ったとき、IBM iが足かせになってしまうわけです。事業のスピードをさらに加速させるためにも、バックエンドシステムを適正に運用する体制づくりも必要と考えるようになりました。  これらを解決する手段として、同社はX-Analysisを導入しました。自身が担当していなかったアプリケーションの状況を把握できるようにし、属人的な保守・運用体制から平準化した体制に刷新させました。一番の効果は、保守や運用に関わる時間を削減し、前向きな業務に時間を割けるようなったことです。新規事業創出に伴う新システムの設計や開発など、保守以外の業務に多くの時間を割けるようになりました。さらに新型コロナウイルス感染症の拡大に伴うリモートワーク体制の環境整備など、突発的なリスク対応に時間を割けるようになったのも効果です。
図2:ハーモニックのX-Analysis導入による効果

図2:ハーモニックのX-Analysis導入による効果

-2社に共通するのは、IBM iに関わる時間を削減できたこと。 阿野:X-Analysis導入による保守・運用業務の時短以外にも、人材育成や空いた時間を新規事業に活かすなど、さまざまな効果を見込めます。共通しているのは、「IBM i」を詳しく理解していない技術者でも、X-Analysisを使えば、アプリケーションの調査ができるようになるということ。IBM iを使い続ける企業の多くが、技術者の高齢化や属人的な運用体制に課題を抱えています。こうした体制から脱却できるのが、X-Analysisを導入する一番のメリットです 。
X-Analysisの主な導入先と具体的な導入効果はこちら
積水化学工業
コメリ https://www.gr-sol.co.jp/x-analysis/review/219/
京王ITソリューションズ https://www.gr-sol.co.jp/x-analysis/review/241/
ハーモニック https://www.gr-sol.co.jp/x-analysis/review/0219/
シンエイシステム https://www.gr-sol.co.jp/x-analysis/review/i202004223_01/
郷商事 https://www.gr-sol.co.jp/x-analysis/review/gohshoji/
キャノンITソリューションズ https://www.gr-sol.co.jp/x-analysis/review/canonit_20200901/
JA石川電算センター https://www.gr-sol.co.jp/x-analysis/review/20201103/
DINOS CORPORATION https://www.gr-sol.co.jp/x-analysis/review/case_dinos_20210914/
SBSリコーロジスティクス https://www.gr-sol.co.jp/x-analysis/review/ffrpg_sbs/

情報システム部門こそDXを

-X-Analysisを導入すれば、情報システム部門がこれまで多くの時間を費やしてきた保守・運用業務を見直せる。さらには昨今のDXブームを機に、情報システム部門に求められる役割も変わってくる。IBM iを使い続ける企業の情報システム部門は今後、何を目指すべきか。 阿野:DXを推進する企業の多くが、DX専門部署を立ち上げるなどしてプロジェクトを主導しています。そんな中、多くの情報システム部門は、導入予定のシステムを検証するなどの業務に忙殺されています。IBM iを始めとするバックエンドシステムに関わる機会は減っているのではないでしょうか。  しかしこのとき、情報システム部門が考えなければならないのは、バックエンドシステムとの連携を踏まえたフロントエンドシステムの開発です。顧客やパートナー企業、従業員向けのサービスを重視し、フロントエンドシステムをいかに速く運用開始できるかに主眼を置く企業は少なくありません。必ずしも悪いことではないものの、フロントエンドシステムを支えるバックエンドシステムやデータを含め、一気通貫のシステム像を描くことに目を向けるべきです。顧客向けのシステムを迅速に運用できたものの、「基幹システムと連携しない」「CRMの顧客データベースとフロントエンドシステムが取得した顧客データを一元化できない」などの課題が、後になって必ず顕在化します。こうした課題を事前にキャッチアップできるのは情報システム部門しかないと思います。
図3:情報システム部門のモダナイズ実現を

図3:情報システム部門のモダナイズ実現を

-情報システム部門がDXに積極的に関わるべき。 阿野:フロントエンドシステムの選定や導入を事業部門主導で進めるケースが増えてきました。特定業務向けに機能を絞ったSaaSが数多く登場したこと、情報システム部門に限らず事業部門のスタッフのITリテラシーが高まったことなどが要因として考えられますが、このときバックエンドシステムやデータとどう連携するのかまで考え抜いている事業部門は少ないのではないでしょうか。  情報システム部門は、フロントエンドシステムを導入するときの懸念事項や想定されるトラブルを事業部門に伝えられるようになるべきです。「IBM iではこんな機能を追加するのが難しい」もしくは「IBM iならこんな使い方ができる」などを事業部門に説明する機会を設けるべきでしょう。システム導入に対し、積極的にサポートできる情報システム部門になるべきだと思います。そのためには、これまでの保守・運用重視の業務体制を見直し、事業部門をサポートするための体制への「転換」が求められるでしょう。 -情報システム部門が体制を刷新しなければDXを進められない。 阿野:情報システム部門は、「人」や「時間」といったリソースを十分確保するところから始めるべきです。新規事業や新システム導入などのプロジェクトが同時並行で進むことになるDXでは、情報システム部門の柔軟な対応が求められます。「保守・運用で忙しい」などと言っている場合ではありません。  では、こうした「人」や「時間」を確保するにはどうすべきか。その答えの1つが、X-Analysisです。IBM iのメンテナンスを属人的な体制から機械的な体制へとシフトし、「人」や「時間」を確保できるようにします。従来の延長線上の考え方で業務をいくら工夫しても、「人」や「時間」は確保できません。X-Analysisのようなツールを活用し、業務を抜本的に見直すべきです。つまり、情報システム部門こそ「DX」しなければならないと思います。自分たちの業務をDXしなければ、全社DXを支えられない。そんな強い気持ちで、現状の保守・運用体制にメスを入れるべきでしょう。

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