再生可能エネルギーや電力小売の自由化に向けてソリューションを打ち出すユニファイド・サービス。IT業界での実績、クラウドやAIといった先端技術を軸に、既存の電力会社や新規参入の企業の電力事業を支援します。IBMやセールスフォースなどで数々の実績を挙げて来た代表取締役社長の宇陀栄次氏は、ユニファイド・サービス社の事業にどんな思いを込めるのか。宇陀氏のこれまでの経歴を振り返るとともに、会社が描こうとしている未来の姿を聞きました。(聞き手:デジタルシフトウェーブ 代表取締役社長 鈴木康弘)
大企業を経て築かれた宇陀氏の発想
――宇陀さんのこれまでの経歴について、特に転機となった出来事や、印象的なエピソードを教えていただけますか。
私は1981年にIBMに入社し、20年間勤務しました。IBM時代には、大手金融機関の不良債権問題の解決するために、IBMとの合弁会社を設立し、10年契約の2800億円のアウトソーシングで700億円解消させるという画期的な提案をしました。これはWSJ紙にも掲載された案件でした。IBMでは営業部長や社長補佐、製品事業部長を務め、営業部門時代もトップレベルの成績だったと思います。(笑)
ーー輝かしいご経歴ですね。その後はどのようなキャリアを積んだのでしょうか。
その後、2001年に孫正義氏の誘いを受けソフトバンクコマースの社長に就任し、約3年勤めました。私の専門がITだったので、ソフトバンクが通信事業にシフトしていったのであまりお役に立てないと思いました。それでも孫さんを間近で見ることが出来たことは色々な面で非常に勉強になりました。
――その後にセールスフォースに移られたわけですね。
はい。当時まだ日本では知られていない未上場のセールスフォースに創業者のベニオフ氏から直接誘っていただきました。最初は断ったものの、マーク・ベニオフ氏の熱意に動かされ、本社のSVPと日本法人の社長に就任。日本郵政の約20万人規模の導入やエコポイントなど、日本でのクラウド普及にお役に立てたと思います。約10年間社長を務めた後、時差と多忙な毎日で健康や家庭に影響も有ったので、次の人にバトンタッチと言う形で退任させてもらいました。
――セールスフォースでのご活躍は私も鮮明に覚えています。クラウド黎明期の日本をまさに主導していましたね。そして現在は、ユニファイド・サービスで代表を務められているわけですね。
はい。2004年に設立したユニファイド・サービスは、既存システムとクラウドサービスを統合する「ユニファイド(統一された)サービス」の時代が来るとの思いを込めて創業しました。セールスフォースで得た私個人の収入を当社に投資し、2014年にセールスフォースを退任後は、ユニファイド・サービスの事業に専念しています。米国セールスフォース社と東京電力EP社とJPインベストメント社から合計20億円以上の出資を受けています。
――ソフトバンクやIBM、セールスフォースといった大手企業でキャリアを築かれてきた中で、どんな学びを得られたとご自身では考えますか。
IBMでは「投資対効果の重要性」を学び、価値のある提案を大切にしてきました。孫社長からは時代に先駆けた新しい事業の起こしかたを少し学ばせてもらいました。セールスフォースではグローバル企業での経営やコミュニケーションを学ばせてもらいました。イノベーティブなビジネスで、ビジネスの本質的な価値提供と社会貢献を融合することの重要性を学びました。組織のしがらみや人間関係などに時間を費やすより、前向きな挑戦にエネルギーを注ぐべきという私の信念もこうした経験から培われました。

電力小売業界に変革をもたらすユニファイド・サービスの強み
――ユニファイド・サービスの事業についてお聞きします。現在の事業内容を教えてください。
当社の主力事業は、「インダストリークラウド」と呼ばれる電力業界に特化したクラウドサービスの提供です。カーボンニュートラルの実現、EVの普及、更にAIによる電力需要増大など、電力は今後も社会基盤として益々重要な役割を担います。規制産業から小売の自由化、カーボンニュートラルなどによって非常に幅広く変化して行くと考えます。そこでユニファイド・サービスでは、電力小売の料金計算にとどまらず、広義の電力の流通をクラウド技術とAIで最適化し、持続可能な社会への移行を支援して行きたいと考えています。
一方、電力事業で培った実績と知見を糧に、現在はAIも活用して社内の基盤技術を効率化するとともに、CRM関連のビジネス拡大も積極的に図っています。電力に関連した顧客のDX(デジタル変革)を支援し、社会に貢献することが当社の事業の大きな柱となっています。
――具体的にどのようなサービスを展開しているのかを教えてください。
ユニファイド・サービスでは、主に3つの柱となるソリューションを展開しています。
1つ目は、資源エネルギー庁から受託しているFIT(固定価格買取制度)の管理システムです。太陽光発電拠点は一般家庭の屋根の上まで含めると全国で約500万拠点を超えます。その中で事業用の発電所だけでも約40万拠点あります。これらを、今後、地域活用出来る様に提案しています。昨年の能登半島沖の地震の際、被災地域には事業用発電所が350拠点ありましたが、復旧の為に地域活用出来る様になっていたのはわずかに1箇所だけでした。これを非常時の緊急電源やEV普及の為の充電拠点としても地域で活用出来る様に努力しています。首相官邸や千葉県茨城県の知事などにもご提案いたしました。皆さん非常に良い話だと喜んでいただきました。
2つ目は、 「Unisrv 電力CIS」 これは、電力小売事業者向けのクラウドサービスです。顧客管理、料金計算、請求、収納代行といった煩雑な業務をクラウドを利用して自動化し、効率的な事業運営を支援します。契約の申し込みから変更、解約までを管理したり、変化に応じて料金メニューを柔軟に設定したりする機能などを備えます。電力会社としては、日本最大の東京電力EP社の高圧のシステムで当社のサービスが採用されて稼働しています。
現在、新電力業界でトップクラス含めて30社以上が導入しています。導入時には、東京電力からも転籍してくれた経験豊富なコンサルタントが電力事業の立ち上げや業務フロー構築までを支援するのも、当ソリューションの特徴です。
――もう一つの柱であるソリューションも教えてください。
事業規模としてはまだまだですが、「Unisrv AI Ready Web」 は、AIを駆使したWeb構築ソリューションです。従来の「情報提供型」のWebサイトから一歩進み、Webサイト内の情報を構造化し、AIの力を駆使することで顧客の課題解決に寄与します。(YEXT) 具体的には、Webサイト利用者が求めるWebページにただ誘導するのではなく、AIチャットとの会話を通じてより的確な情報を提供できるようにします。検索エンジンや生成AIがWebサイト情報を読みやすくなるよう構造化することで、AIの導入効果を最大化します。AIサイト内検索やAIチャットといった機能を備えることで、顧客満足度の向上に寄与します。
「Unisrv AI Powered CRM」 は、CRMやSFAを顧客向けに最適化し、AIを使ってさらに高度化させるソリューションです。MAや各種サービスと連携して顧客情報を統合し、データの一元化も実現します。導入後も伴走型で継続支援することで、顧客のマーケティングやセールス、さらにはビジネス全体を包括的に支援します。
――AIを積極的に活用し、効果を高められるようにしているわけですね。こうしたソリューションをラインナップするユニファイド・サービスの強みを教えてください。
電力エネルギー分野におけるクラウドサービスの実績と専門性は、他の追随を許さないと自負しています。大手電力会社から新規参入企業まで幅広い顧客を支援するのはもとより、FIT(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)の運用を通じて、複雑な規制環境や最新の法規制に準拠したシステム提供が可能です。過去には、大手電力会社の約100億円規模の料金計算システムを、わずか1年で10億円で実現した例もあります。これは当社の技術力とコストパフォーマンス、迅速な実行力を示す好例だと自負しています。
最先端のクラウドとAI技術の活用するのも当社の強みです。業界特化型のクラウドサービス提供により、ユーザーは最適な電力エネルギーを最適な価格で利用できるようになります。一方、AIの需要増によって電力の安定供給が喫緊の課題となる中、当社の技術で電力小売業界に変革をもたらすことができるのも強みだと考えます。
社会課題解決への強いコミットメントも当社の価値であり強みであると考えます。私はこれまでの経験から、前向きな挑戦にエネルギーを注ぎ、社会貢献に繋がる活動(CSV:Creating Shared Value、共通価値創造)を重視しています。前述しましたが、2024年の能登半島地震の教訓から、地域分散型の再生可能エネルギー活用を強く提言し、災害時にも緊急時に補助的な電気が届く様なインフラ構築を目指しています。 EVの普及に伴って、補助的な充電拠点にも活用できる可能性があります。広範囲にある発電拠点を使って地域住民が充電できるインフラを整備すれば、地方創生に寄与できると考えます。世界に誇るレジリエントなインフラになると考えます。こうした考えを実現すべく行動しているのも当社の社員の強みです。
――ユニファイド・サービスの強みは、宇陀さんのこれまでの経験から育まれたもののように感じます。
確かに、私の個人的な哲学が当社の文化に反映されていると感じます。本質的な価値を提供し、社会貢献すること、さらには失敗を恐れず挑戦すること。これらの私の信念は、孫さんやマークベニオフ氏など創業者を見て学んだのかも知れません。顧客に対して新たな価値を想像する原動力になっていると思います。

クラウドやAIを武器に持続可能な社会づくりを支援
――ユニファイド・サービスはどんな未来を見据えていますか。今後のプランや目標があれば教えてください。
当社は「より良い未来に、最適な電力の流通を」というビジョンを掲げ、最先端のクラウド技術で持続可能な社会の実現を目指します。再生可能エネルギーの地産地消型の普及基盤を構築し、AIとクラウドベースの業界標準プラットフォームを通じて電力エネルギーの流通を最適化。クリーンなエネルギーをより身近に、安定的に利用できる社会づくりを支援します。こうした取り組みはSDGs達成に貢献し、産業全体のイノベーションを必ず促進すると考えます。当社はその一助を担えれば幸いです。
なお、日本はカーボンニュートラル達成のため、再生可能エネルギーの普及が急務です。しかし再生可能エネルギーは全発電量の2割程度に留まっているのが現状です。この状況を改善し加速させるのが、当社の「インダストリークラウド」であるべきだと考えます。当社のクラウド技術とAIを徹底的に活用し、電力小売業界に変革をもたらしたいと思います。
――電力エネルギー分野以外への事業展開や新たなソリューション開発の計画はありますか。
現在の電力エネルギー分野での知見を活かし、一般企業へのビジネス拡大も積極的に図ります。当社の売上は現在22億円ですが、3~4年後には市場を拡大して70億円規模を目指しています。「AI Ready Web」や「AI Powered CRM」といったソリューションが幅広い産業のデジタル変革に貢献できるからこそ十分可能であると確信しています。特に、データセンターや半導体工場、製造業の誘致には電力と水の確保が不可欠であり、これらの分野に最適なエネルギー供給の仕組みを提供することで、産業発展に寄与していきます。
――今後はどのような人材とともにビジョンの実現を目指しますか。
『The Power of Intelilgence』この会社のキーワードは、社員全員参加で考えて投票して決められた会社のキーワードです。
ユニファイド・サービスは持続可能な社会づくりに貢献する企業です。私たちの仕事は単なる業務ではなく、新しい市場を開拓し、社会に貢献出来る会社を目指しています。こうした挑戦に立ち向かえる仲間を求めています。失敗を恐れず挑戦できる人、組織にとらわれることなく価値を想像できる人。こうした会社の方針に共感できる方を歓迎します。多様な環境の中で、将来の株式上場に向けて一緒に未来を創り、自身の仕事が社会貢献に直結することを実感できる、そんな仲間との出会いに期待したいですね。
ユニファイド・サービス株式会社
https://unisrv.jp






















