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NTT西日本など、農産物流通DXで流通コストやフードロスを減らし地球環境問題に貢献する共同実験

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神明ホールディングス、東果大阪、NTT、NTT西日本、NTTアグリテクノロジーの各社は2021年11月5日、地球環境問題の解決に向けた共同実験の取り組みを開始したことを発表しました。同取り組みでは、サイバー空間上に仮想市場を構築します。そして、NTTが提唱する光ベースの新しいネットワーク「IOWN(アイオン)」構想を用いて未来予測を行います。農産物が市場に運び込まれる前に取引を行うことで、農産物流通のDX化が可能になります。その結果、流通コストやフードロス、温室効果ガス削減などが実現し、地球環境問題の抑制に貢献することを目指します。

 農産物流通は、卸売市場を通過する「市場流通」と、生産者などが購入者と直接取引を行う「市場外流通」に分類されます。市場流通は、日本の農産物流通において重要な役割を果たしています。しかし一方で、関係者たちが相互に情報を共有できていないことによる、さまざまな課題があるといいます。  例えば生産者は、農産物をまず都市部の大市場に輸送します。農産物が集まりすぎると価格は低下し、余った農産物は、周辺の市場へ転送されます。そこでは、「追加の輸送コストがかかる」「鮮度が低下」といった状況が起こり得ます。  また、「個人宅配の激増」「働き方改革」「ホワイト物流(商品を生産者から消費者へ運ぶ人たちの労働環境を改善すること)」などの影響によるドライバー不足の問題があります。そのため、配送自体が難しくなる状況も起こっています。そして、非効率な輸送による地球環境への影響、さらに、新型コロナウイルスの感染拡大が状況の悪化に拍車をかけています。  以上のような背景により、農産物流通での変革の必要性が高まっています。情報を軸にした「極力、農産物(モノ)を動かさない」、新しい形の物流の仕組みが必要ということです。  今回の、農産物流通DXの取り組みは、以下(1)~(3)の3つの項目で構成されます。 (1)仮想世界(サイバー空間)
 サイバー空間上に「仮想市場」を構築します。現実の物理空間のデータをそのままそっくりデジタル空間で環境再現する「デジタルツイン」技術を利用します。デジタルツインコンピューティングを用いた予測技術により、仮想相対取引、および仮想競りを行います。  「仮想相対取引」では、以下のような情報が活用されます。 ・卸売市場に集まる取引データ
・気象情報などによる一般的な生産予測
・突発的なイベント
・市場間の価格変動
・コロナ禍における消費動向の変化 など  これら複雑に絡み合った要素から、特徴をとらえます。そして、少ない入力情報からでも瞬時にクラスタリングする未来予測を活用し、仮想空間上で売り手と買い手を結び付けます。その結果、実際の取引希望日の数日から1週間程度前に売買を成立させることが可能です。  また「仮想競り」では、農産物の価値を決めるのに必要な品質の把握のために、以下のような情報が活用されます。 ・色や形・艶
・糖度・酸度
・リコピン・GABA  これらの機能性成分をできるだけ正確に測定・数値化します。バイヤーが現地にその都度訪問して仕入れることなく、遠隔地から買い手が農産物の良し悪しを判断できるようにします。そして、高付加価値商品の取引を行います。 (2)現実世界(リアル空間)
 ライフスタイルの変化により、農産物の加工(カット・包装など)のニーズが急増しているといいます。それを一元的に行う加工工場を、市場近隣に整備します。それとともに、デジタルツインコンピューティングの予測情報によって事前に労働者を確保するなど、労働面での効率化を図ります(物流拠点整備)。 (3)フードバリューチェーンエクスチェンジ
 リアル空間で集めた情報を、サイバー空間にある仮想市場に渡します。そしてそこで行われた予測や解析の結果を、再びリアル空間にフィードバックします。そして上記の(1)と(2)を融合させます。  例えば、生産者は、需要に応じた農産物の生産(マーケットイン型農業)を行うことができます。それにより、収益安定化を図りつつ物流コストを低減させることが可能です。  また、卸売事業者は、計画的な人員配置や、他業務への人員の有効活用を行うことができます。それにより、小売・消費者は、生産情報をもとに販売計画を立てて安定した収入を得ることを期待できます。また、鮮度の高い農産物を手に入れるなど、フードバリューチェーンに関わる人々が恩恵を受けられる仕組みを実現可能です。  これらの取り組みに合わせて、市場連動型の食材宅配サービスや、NTTドコモのdポイントサービスを活用します。そして、自宅での食事の需要が高まる中、消費者への新たな価値提供を検討します。
図1:農産物流通DXの全体概要

図1:農産物流通DXの全体概要

 今回の実証実験では、生産者、卸・仲卸、小売など、フードバリューチェーンに関わるプレーヤーが参画します。そして、農産物流通DXに向けて取り組みます。具体的な取り組みとしては、以下の内容について検証および評価します。 (1)仮想世界(サイバー空間)
・「未来予測技術」の検証:実際の農産物流通量と予測流通量の比較、分析・検証、予測精度向上に向けた改善 (2)現実世界(リアル空間)
・「加工人員手配」効率化:予測技術の活用による、市場内の加工人員の削減率
・「配車」効率化:同技術活用による、トラック積載率向上と台数削減率 (3)フードバリューチェーンエクスチェンジ
・「品質評価技術」の検証:おいしさ要素(甘味、塩味、酸味など)や機能性の測定、測定結果のサイバー空間上への伝達、仮想競りへの活用可否の評価
図2:農産物流通DXでの予測技術の概要

図2:農産物流通DXでの予測技術の概要

 農産物流通DXは、以上のようにフードバリューチェーン全体の最適化を目指すものです。それにより、温室効果ガス削減や、廃棄物の削減など、地球環境問題の解決に貢献可能です。  温室効果ガス削減については、農産物流通DXサービス商用化を2024年頃に開始します。また、以下のような他の施策も組み合わせます。 ・輸送トラックの積載率向上
・流通ルート最適化
・廃棄物の再利用により従来焼却で発生していた温室効果ガスの削減
・輸送トラックの電動化
・再生可能エネルギーの活用  それにより、日本の2050年のカーボンニュートラルの実現に貢献するために、全体の輸送量の約35%の削減などを目指します。  廃棄物の削減については、本来廃棄される余った農産物や規格外品を需要・ニーズを持つ消費者に対してマッチングするようにします。それとともに、市場や加工工場で余った食品残渣を回収して堆肥をつくります。それを農家に提供して、安心安全な野菜づくりを支援するNTT西日本の地域食品資源循環ソリューションも活用して堆肥化します。その結果、農産物の再生産につなげます。  今回の共同実験での各社の役割は、以下の表の通りです。
図3:農産物流通DX参画企業の役割分担

図3:農産物流通DX参画企業の役割分担

 今後は、神明HD、東果大阪、NTTグループが連携して取り組みを深化させていきます。それとともに、連携パートナーを拡大し、全国およびグローバルにも展開していきます。そして、人類の食料問題やフードセキュリティ確保、地球環境問題、生物多様性など、SDGs(「持続可能な開発目標」)も視野に入れた社会課題の解決に貢献することを目指します。

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