高齢化が進展する日本では、高齢者医療費の増加が深刻な社会保障の課題となっています。こうした状況に対応するため、制度設計・報酬体系の見直しを通じて、医療DX(デジタルトランスフォーメーション)を制度・報酬レベルで推進する動きが活発化しています。特に、2025年10月以降に改定される予定の 医療DX推進体制整備加算(以下「DX加算」)は、薬局・医療機関におけるマイナ保険証利用率の向上や電子処方箋・電子カルテ情報共有サービスの利用状況を新たな算定要件に組み込んだ制度設計が注目されています。
DX加算は、医療機関・薬局がデジタル技術を活用して質の高い医療提供体制を整備しているかを報酬面で評価する仕組みです。制度では「マイナンバーカードを健康保険証として利用(マイナ保険証)できる体制」や「電子処方箋を受け付け・管理できる体制」などが施設基準として設定されており、2025年4月からこれらの要件がより厳格化されました。
2025年10月からは、マイナ保険証利用率の実績要件がさらに引き上げられます。例えば、薬局・医療機関が算定できる「加算1」について、2025年10月以降は利用率60%以上を目安とするなど、ハードルが上がる見込みです。このような制度設計により、医療機関・薬局側はマイナ保険証の使用促進や電子処方箋の導入といったデジタル対応を急ぐ必要があります。
高齢者医療費の抑制という観点からは、こうしたDX基盤を活用した制度運営こそが重要なカギとなります。例えば、マイナ保険証によるオンライン資格確認や薬局・医療機関間での医療情報共有が進めば、重複検査や過剰診療の抑制、来院回数の削減、在宅・遠隔医療の活用促進などが期待されます。そしてその結果として、医療提供コストの抑制、高齢者の医療利用の効率化につながる可能性があります。
制度改革の舞台裏では、自治体・医療機関・薬局が「デジタル基盤でどう業務を変えるか」「報酬評価をどう制度設計に反映させるか」という点に取り組んでおり、高齢者医療費の膨張を抑えるための制度設計として、DXが不可欠な役割を果たす構図が浮かび上がっています。
ただし、デジタル対応には課題もあります。電子処方箋や情報共有サービスの導入にはシステム整備が必要で、調剤薬局では導入率が高まっているものの、医科診療所などでは普及が遅れているという実態も報告されています。また、マイナ保険証利用率の向上には、利用者・医療機関双方の受け入れ体制と理解促進が欠かせません。制度設計だけではなく、現場の運用とシステム化をどう進めるかが今後の焦点です。
高齢者医療費の制度改革と医療DXの連携は、次期診療報酬改定や制度運営設計において重要なテーマとなっています。2025年10月以降に適用される報酬制度の変更は、デジタル基盤整備を促すための制度的な“ドライバー”であり、これを契機に医療現場・薬局・保険者が一体となったデジタル化の実践が加速しそうです。






















