市場動向

    2022.07.27

    SmartCityXプロジェクトで日本郵便、JR東日本などが事業共創成果を発表

    スクラムスタジオは2022年7月21日、米サンフランシスコでカンファレンス「SmartCityX Conference 2022」を開催したことを発表しました。「SmartCityX」プロジェクトの2期目の締めくくりとして実施し、大企業とスタートアップのグローバルな事業共創プロジェクト9件などを発表しました。

     「SmartCityX Conference 2022」は、米国カリフォルニア州サンフランシスコのチェイス・センターで開催されました。同カンファレンスは、スクラムスタジオが主催する「SmartCityX」プロジェクトの2期目の活動の締めくくりとして実施されました。

     「SmartCityX」プロジェクトは、各業界の企業パートナーが、世界中のスタートアップとともに「未来のまち」を共創するグローバルなプログラムです。概要は、以下の通りです。
    「SmartCityX」プロジェクト
    ●プロジェクト概要 各業界をリードする大企業パートナーが、世界中の最先端のスタートアップとともに「未来のまち」を共創するグローバル・オープンイノベーション・プログラムです。
    ●主催 スクラムスタジオ株式会社
    ●パートナー企業 あいおいニッセイ同和損害保険株式会社、出光興産株式会社、ウーブン・プラネット・ホールディングス株式会社(コミュニティパートナー)、西日本電信電話株式会社、日本郵便株式会社、BIPROGY株式会社、東日本旅客鉄道株式会社
    ●サポーター企業 株式会社ジェーシービー、スズキ株式会社、日本航空株式会社、日本たばこ産業株式会社、株式会社博報堂、ライオン株式会社
    ●オブザーバー自治体 福井県、三重県、渋谷区、石川県加賀市、茨城県鹿嶋市、神奈川県横浜市、大阪商工会議所
    ●リソースパートナー アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社、カタルーニャ州政府貿易投資事務所、CIC Japan合同会社、日本貿易振興機構(ジェトロ)
    ●開催期間(1年目プログラム) 2021年11月から2022年7月まで
    ●スケジュール スタートアップ募集期間:2021/11/2 ~ 2021/12/30
    スタートアップ選考期間:2022/1月 ~ 2022/2月
    メンタリング・事業開発期間:2022/3月 ~ 2022/6月
    デモデイ(成果発表イベント):2022/7月
    ●本プログラムで募集するスタートアップの主要6領域 ・コンシューマープロダクト&サービス
    ・モビリティ
    ・スマートビルディング
    ・サステナビリティ
    ・インフラストラクチャ
    ・ソーシャルイノベーション
     SmartCityXでは、さまざまな事業共創プロジェクトをはじめ、以下のような各領域の各分野において、企業・組織の枠を超えた多種多様な協業が生まれています。
    図1:「SmartCityXプロジェクトから生まれた新...

    図1:「SmartCityXプロジェクトから生まれた新たな生活サービス」

     プログラム1期目のワークショップでは、参加企業によって、以下3つのPrinciples(原則)が定義されました。

    1. カラフル:多様性を前提に、それぞれが好きなものを自由に選択できる
    2. ライフアップデート:デジタル化/スマート化を通じ、街が人に合わせて変化していく
    3. オーナーシップ:住民が自分の住む街に愛着を持ち、主体的に運営に関わる

     2期目のプログラムでは、さらに踏み込んだ検討が進められました。コロナによる社会・生活者の変容を受け、今後重点的に取り組んでいくテーマに関してワークショップで議論が行われました。

     その結果、次の5つの領域が「中長期テーマ」として策定されました。これらは、その後のプログラムの指針とされました。

    1. 住みたい場所で多様な選択のある暮らし
    2. 地域の特徴に合ったサービス・アプリケーション
    3. サステナブルなインフラに支えられた便利・安心な日常
    4. 都市と地域、世代やコミュニティのつながり
    5. リアルとデジタルの結節点
    図2:「SmartCityXで取り組む中長期テーマ」

    図2:「SmartCityXで取り組む中長期テーマ」

     こうして、プログラム全体で大切にする価値観や「中長期テーマ」を定義した上で事業開発を進めました。その結果、各テーマに沿った形で多くの共創プロジェクトが生まれたとのことです。

     以下に、今回、先行発表された9件の事業共創プロジェクトの詳細を紹介します。

    ●中長期テーマ①:住みたい場所で多様な選択のある暮らし
    (1)グローバルな地域ファンとの新たなつながり創出
     ⽇本航空と博報堂は、⼈⼝減少という社会課題に直⾯する地⽅・地域を活性化すべく、「体験型NFT」を活⽤します。主に訪⽇観光客を対象に、⽇本の地⽅・地域ならではのモノやコトのNFT(=体験型NFT)を展開します。
    プロジェクト 参加企業・団体 概要
    グローバルな地域ファンとの新たなつながり創出
    〜地域資源の体験型NFTで実現するインバウンドの関係⼈⼝化〜

    日本航空株式会社、株式会社博報堂 ・⽇本の地⽅・地域ならではのモノやコトをNFT化した「体験型NFT」をインバウンド向けに展開することで、新たな関係⼈⼝の創出を⽬指します。
    ・海外⽣活者は当NFTを持つことで、居住地を変えずに「デジタル住⺠」となり、地域を訪問した際に特別な体験やサービスを受けることができます。
    ・また地域の住⺠とのリアル、デジタルの両コミュニティにも参加することでその地域と新たな関係性を構築し、持続可能な関係⼈⼝となります。
    ・今後、実証実験を実施すべく、三重県をはじめとする地⽅⾃治体と協議を重ねていく予定です。
    ・⽇本航空が既に有する広範な地域ネットワークならびに顧客とのタッチポイントと、博報堂が持つ⽣活者中⼼のサービス開発ノウハウの掛け合わせにより、⽇本の持つ豊かな地域資源を活⽤した地⽅創⽣に挑みます。
    ●中長期テーマ②:地域の特徴に合ったサービス・アプリケーション
    (2)郵便ポストのスマート化構想
     今期から新たにパートナー企業として参画した日本郵便は、Sol Chip(イスラエル)とともに、郵便ポストのスマート化構想を進めていきます。
    プロジェクト 参加企業・団体 概要
    郵便ポストのスマート化構想
    〜地域インフラの新たな価値創出〜
    日本郵便株式会社、Sol Chip, Ltd. ・太陽光により自己給電するSol ChipのIoTソーラーバッテリーを日本各地の郵便ポストに実装することにより、さまざまなセンサーを搭載した郵便ポストのスマート化を目指します。
    ・センサーを通じて、遠隔で郵便物の投函状況を可視化することで、より効率的な取集業務を実現するほか、気象情報などの環境データの取得、子どもや高齢者のみまもりに活用する仕組みを検討していきます。
    ●中長期テーマ③:サステナブルなインフラに支えられた便利・安心な日常
    (3)デジタル地図の構築
     また、日本郵便は、Innoviz Technologies(イスラエル)とともに、デジタル地図の構築に向けた検討に着手します。Innoviz Technologiesが開発するLiDARセンサーを日本郵便の配達車両に搭載します。それにより、配達経路における道路や建物の変化に関する情報を高鮮度に取得することが可能になります。

     これは、自動運転や無人配送など次世代サービスの基盤となります。そして、社会での有効活用が期待できるデジタル地図の構築を目指すなど、地域課題の解決と新たなビジネスの創造を模索します。
    プロジェクト 参加企業・団体 概要
    地域の郵便ネットワークを活用した、次世代サービスの基盤となるデジタル地図の構築 日本郵便株式会社、Innoviz Technologies Ltd ・Innoviz Technologiesが開発する高精度なLiDARセンサーを日本郵便が有する配達車両に搭載します。
    ・配達経路における道路や建物の変化などの情報を高鮮度に取得して、自動運転や無人配送など次世代の住民向けサービスの基盤となるデジタル地図の構築を目指します。
    ・そのほか、道路の損傷状況や空き家対策などの地域課題解決に加え、新たなビジネスの創造を目指します。
    ・Innoviz Technologiesのセンサーは天候を問わず緻密な3D点群データを生成できる点が特徴です。
    ・両社は2022年6月16日に田園調布郵便局にて実証実験を実施するなど、新たなデータの取得・活用の検証を開始しています。
    図3:「地域の郵便ネットワークを活用した、次世代サービ...

    図3:「地域の郵便ネットワークを活用した、次世代サービスの基盤となるデジタル地図の構築」

    (4)鉄道駅ホームでの事故防止
     パートナー企業の東日本旅客鉄道は、3D LiDARとカメラのセンサフュージョンソリューションを提供するOyla(アメリカ)と鉄道駅ホームの安全性向上に取り組んでいます。

     悪条件下でも高精度で対象物を検知可能な同社のソリューションを用いて実証実験を行うなど、昼夜を問わず生活者が駅ホームをより安全に利用できる社会を目指しています。
    プロジェクト 参加企業・団体 概要
    鉄道駅ホームでの事故防止
    〜センサフュージョンを活用した「究極の安全」実現〜
    東日本旅客鉄道株式会社、Oyla Inc ・東日本旅客鉄道は、3D LiDARとカメラのセンサフュージョンソリューションを提供するOylaとともに、鉄道駅ホームの安全性向上に取り組んでいます。
    ・3D空間において人や物体の位置を特定するOylaのソリューションを活用して、利用者が安心して駅ホームを利用できる仕組みを目指しています。
    ・悪条件のなかでも対象物を高精度で特定できるセンサフュージョン技術により、昼夜を問わず駅ホームの危険区域への侵入・線路上への転落を監視し、警告を発することをねらいます。
    ・2021年9月〜2022年2月にはシリコンバレーにて実証実験を行うなど、継続的に技術検証が行われています。
    (5)地域内の児童向けの交通事故防止通知スキーム
    プロジェクト 参加企業・団体 概要
    地域内の児童向けの交通事故防止通知スキーム あいおいニッセイ同和損害保険株式会社、日本郵便株式会社、三重県 ・IoTデバイスで車両と歩行者の位置情報を把握し、事故の危険を感知・車両と歩行者双方に危険アラートを通知することで、自動車事故を未然に防ぐスキームを構築します。
    ・自動車の位置情報はあいおいニッセイ同和損害保険の有するテレマティクスタグから取得します。
    ・歩行者側の位置情報はスマートフォンや見守りタグなどのIoT機器から取得します。
    ・本仕組みの実現に向けて、日本郵便が保有する事故防止ノウハウや郵便局の配達員の知見を活用しながら、児童の交通事故防止を目的に、三重県内での実証実験を計画していきます。
    ・将来的には本仕組みを活用し、身の回りのあらゆるリスク(事故、防災、犯罪等)を回避する世界を目指します。
    図4:「地域内の児童向けの交通事故防止通知スキーム」

    図4:「地域内の児童向けの交通事故防止通知スキーム」

    (6)災害発生後に、空いている避難所へのスムーズな避難を実現
    プロジェクト 参加企業・団体 概要
    災害発生後に、空いている避難所へのスムーズな避難を実現 あいおいニッセイ同和損害保険株式会社、株式会社バカン、株式会社ビーブリッジ、株式会社INFORICH ・あいおいニッセイ同和損害保険が有するリアルタイム被害予測サイト「cmap(シーマップ、https://cmap.dev/ 
    )」を起点として、自然災害発生時に生活者のスムーズな避難と避難生活を実現するサービスを提案します。
    ・生活者は、AIとIoTを活用してあらゆる空き情報を配信するバカンのサービスを利用して避難所の混雑情報を把握した後で、ビーブリッジのARナビの機能を用いて空いている避難所に迷わずにたどり着くことができます。
    ・2022年度内に、ビーブリッジのARナビ機能とcmapの連携による生活者目線の安心・安全な防災サービス開発を目指します。
    ・また、避難後には、INFORICHとも協力し、避難所へモバイルバッテリーをお届けし、避難者の快適な生活を支援し、総合的な防災支援活動にも貢献していきます。
    (7)AIを活用した地域の道路インフラ点検
    プロジェクト 参加企業・団体 概要
    AIを活用した地域の道路インフラ点検 出光興産株式会社、鹿嶋市 ・出光興産は、道路保全のソリューションを開発するスタートアップらと協働して、地域自治体の道路維持管理の課題解決への貢献を目指します。
    ・地域を巡回する車両に取り付けたスマートフォンで撮影した画像をAIで分析し、道路の損傷が検出された場合に自治体へ報告します。
    ・人口減少に伴い、今後、人口あたりのインフラ維持コストが上昇していくなか、効率的な道路維持管理の実現は、安心・安全なインフラの維持に必要不可欠です。
    ・本取り組みは、出光興産の「ビジネスデザイン塾」において鹿嶋市の協力のもと案件形成されました。
    ・同市を走る公用車等の車両にセンサーを搭載して、2022年度中に実証実験を計画しています。
    ●中長期テーマ④:都市と地域、世代やコミュニティのつながり
    (8)遊休地における屋台店舗開業者への決済サービス支援
    プロジェクト 参加企業・団体 概要
    遊休地における屋台店舗開業者への決済サービス支援 株式会社ジェーシービー、株式会社Replace、tance株式会社 ・Replaceが提供する「屋台開業プラットフォーム」において、屋台店舗へのキャッシュレス決済端末の導入に加え、屋台運営に係る業務の効率化、集客強化、DX化など非決済領域も支援する座組を検討します。
    ・JCBの関連会社であるtance株式会社が提供するサービスプラットフォームを通じ、Replaceの「屋台開業プラットフォーム」利用者が、開業時に決済サービスや非決済サービスを利用できることを目指します。
    ・今後、この座組を具体化し、小売店舗開業のハードルを下げることで、遊休地の活用促進やその地域の活性化を推進していきたいと考えています。
    ●中長期テーマ⑤:リアルとデジタルの結節点
    (9)地域エコシステム「スマートよろずや」~SSネットワークを活用した予防医療拠点~
    プロジェクト 参加企業・団体 概要
    地域エコシステム「スマートよろずや」
    ~SSネットワークを活用した予防医療拠点~
    出光興産株式会社、スマートスキャン ・出光興産は2021年5月発表の「中期経営計画の見直し」において、全国約6,200か所(発表時点)のapollostationネットワークを、モビリティとコミュニティを軸としたさまざまなサービス提供を通じて地域課題の解決を目指す「スマートよろずや」化する構想を掲げました。
    ・その第一弾として、病院やクリニックのDX推進をサポートするスマートスキャンと2022年2月7日に資本業務提携を発表しました。
    ・MRI搭載車両にて、オンラインで予約・問診から結果受領までを完結する「スマート脳ドック」サービスを提供するこの取り組みは、三重県東員町(2021年6月~7月)、静岡県島田市(21年10月~12月)での実証実験、山口県山陽小野田市(2022年4月~5月)での事業探索で地域の生活者から好評を得て、現在は広島空港(2022年7月1日~20日)で展開されています。
     SmartCityXではこれまで、産業や技術の視点だけではなく、生活者目線で価値の高いサービスやアプリケーションの共創に取り組んできました。

     特に2期目のプログラムでは、各業界を代表する企業と世界中のスタートアップが協働してイノベーション創出を行いました。それとともに、デザイン思考を8週間で集中的に学ぶモジュールも設けられました。そのように、新規事業開発の担い手となる大企業側の人材育成にも注力してきました。

     今秋頃に開始を予定している3期目のプログラムでは、SmartCityXで重点的に取り組むテーマ領域を定める予定です。例えば、以下のような領域です。

    ・メタバース
    ・サーキュラーエコノミー
    ・デジタルとリアルの結節点
    ・ツーリズム など

     そしてテーマ領域ごとにより、本格的な事業開発を推進していきます。併せて、アジアなどグローバルな展開や、国内の地域・自治体との連携を図り、生活者目線でリアルな「街」へのサービス実装を目指します。

     グローバルな事業共創を多様な領域で一層推進・深化していくため、SmartCityXでは、3期目のプログラム開始に向けて、新たな参画パートナー企業を追加募集していきます。

    関連リンク
    スクラムスタジオ株式会社
    「SmartCityX」
    Innoviz Technologies Ltd
    Sol Chip, Ltd.
    Oyla Inc
    スマートスキャン株式会社
    株式会社ビーブリッジ
    株式会社INFORICH
    株式会社バカン
    株式会社Replace

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