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DXセミナー

2022.12.06

米国視察ツアーから読み解く小売最前線、ゴール見据えた堅実な施策が目立つ

日本オムニチャネル協会は2022年11月11日、DXマガジンと共催セミナーを開催しました。今回のテーマは「日本オムニチャネル協会米国視察報告~コロナ禍にも進化を続ける米国小売~」。協会が2022年10月に実施した米国視察ツアーの参加者が、米国で実際に見てきた小売店やサービスの最新動向を紹介しました。

当日のセミナーの様子を動画で公開しています。ぜひご覧ください。

店舗技術のOEM提供を目指すアマゾン

 日本オムニチャネル協会は2022年10月7日から10月13日まで、米国の小売店を巡る視察ツアーを実施。ロサンゼルスやシアトルを中心に約30カ所の小売店を視察しました。今回のセミナーでは報告会と称し、ツアー参加者が見て感じた小売業界事情を紹介しました。セミナーには日本オムニチャネル協会会長の鈴木康弘氏、同協会専務理事の林雅也氏、同協会理事の逸見光次郎氏が登壇。ツアー中に撮影した写真を使いながら、米国で展開する最新店舗の取り組みなどを解説しました。

 最初に紹介したのが、シアトルに1号店を構える「Amazon Go」です。入店時に本人認証することで、レジを通さずに商品を購入、決済可能なリアル店舗です。2016年にアマゾンの従業員向けに実験店舗をスタートし、2018年から一般向けに店舗を開放しています。なお、入店時にはシステムに手のひら、もしくはスマートフォンをかざして本人認証します。
図1:Amazon Goの様子

図1:Amazon Goの様子

 ツアーに参加した鈴木氏は「Amazon Go」によるアマゾンの戦略を次のように考察します。「Amazon Goを一般公開したとき、日本では『アマゾンがリアル店舗を多数出店するのでは』という憶測が広がった。しかし、現時点で27店舗にとどまる。現在はAmazon Goの仕組み『Just Walk Out』をOEMとして展開する。例えばスターバックスは『Starbuck Pickup with Amazon Go』という実験店舗を展開する。無人店舗を支えるシステムを外販し、米国、ひいては世界中の小売りのインフラになることを目指しているのではないか」(鈴木氏)と分析します。

 「Amazon Fresh」と呼ぶ巨大スーパーマーケットも紹介しました。「屋内の上部には多数のカメラを設置する。実際に数えると約3000個はある。こうしたカメラを使い、来店者がどの商品を手に取ったのかを把握し、レジを通さずに商品を購入・決済できるようにしている」(鈴木氏)と言います。2020年に展開し始めた当初は、「Dash Cart」と呼ぶセンサー機能を備えたショッピングカートを使って、購入商品を判別していました。しかし、「Dash Cartはバッテリーを内蔵するため2時間程度しか持たない。重量も重いし、1台あたり200万円くらいかかると言われる。それに比べ、カメラは低コスト化が進み、1台数千円程度ではないか。3000台のカメラを設置してもDash Cartを整備するより安価に済む。『Amazon Go』同様、今後はこのカメラを活用した仕組みをスーパーマーケットにOEMで提供していくのではと推察する」(鈴木氏)と述べます。
図2:店内上部に多数のカメラを設置する「Amazon ...

図2:店内上部に多数のカメラを設置する「Amazon Fresh」

 日本ではまだなじみのない「Amazon Style」と呼ぶサービスを提供するアパレル店舗も紹介しました。「Amazon Style」では、試着したい衣服などをスマートフォンや店舗で事前に選び、試着する日時を予約します。店内には約20カ所の試着室を設け、予約時刻になると試着室に入れるようになります。試着室には試着希望の衣類がクローゼットに用意。実際に試着した上で購入するかどうかを決められるようになっています。なお、クローゼットには試着を希望した衣類のほか、コーディネータが用意した衣類も合わせて収められています。衣類の色やサイズが違う場合、試着室内に設置するディスプレイを使って別の衣類をオーダーすることも可能です。「Amazon Styleはまだ始めたばかりで、現時点では2店舗にとどまる。今後、多店舗化すれば倉庫を整備して潤沢な在庫を抱えられるようになる。例えば前日に試着を予約し、翌日には試着するといったことが可能になる。店舗も売れ筋商品を常に展示できるようになる。こうした仕組みをいずれば、専門店や百貨店にOEMとして提供することを視野に入れているのではないか」(鈴木氏)と予測します。
図3:テクノロジを使って試着の利便性を高める「Amaz...

図3:テクノロジを使って試着の利便性を高める「Amazon Style」

アナログの良さや強みを打ち出す店舗も

 アマゾンが打ち出すデジタル化と一線を画す戦略を練る小売店も紹介しました。それが、ドイツに基盤を構えるストアチェーン「ALDI」と、米国のストアチェーン「TRADER JOE'S」です。両店舗を視察した際、「店内にデジタル機器が一切見当たらない」(鈴木氏)ほど、アナログな店内だったと言います。
図4:「ALDI」と「TRADER JOE'S」はデジ...

図4:「ALDI」と「TRADER JOE'S」はデジタル以外の強みを武器にする

 例えば「ALDI」の場合、商品を段ボールに入れたまま陳列することで、従業員のオペレーションを簡略化しています。一方でレジでの商品読み取りは速かったと言います。「商品の全面にバーコードを貼付し、バーコードリーダーで商品を容易に読み込めるようにしている。レジスタッフが商品バーコードを探す手間を省くことで、レジスピードを引き上げている」(鈴木氏)と指摘します。

 「TRADER JOE'S」の場合、楽しさを全面に打ち出した店舗づくりが特徴です。商品を陳列するレイアウトを工夫して来店者を飽きさせないようにするほか、「レジスタッフが買い物客と気軽に会話していることが多かった。実際にレジに並ぶと、『どこから来たのか』と話しかけられた。そんなフレンドリーな接客を魅力にする」(鈴木氏)と言います。ただし一方で、発注業務などを担う本部のデジタル化は「進んでいる」(鈴木氏)と指摘します。バックヤード業務を徹底的にデジタル化しつつ、「顧客接点はアナログな手法を重視する。顧客との会話を大切にし、関係を深化させようとしている」(鈴木氏)と考察します。

 鈴木氏は店舗の視察を通じ、「米国の小売事業者は、未来はどうなりたいのかを明確に定めていると感じる。現在のビジネスを把握しつつ、未来のマーケットがどう変わるのかを見極めている。その上で自社が目指すべきゴールを決めている。現状と未来のギャップをどう埋めるか。その施策としてDXが存在する」(鈴木氏)と言います。日本企業の場合、「現在のビジネスをデジタル化することをDXと呼ぶケースが多い。未来のあるべき姿を描けずにいるのが、米国の小売事業者との大きな違いだ」(鈴木氏)と分析します。さらに、「日本企業の多くが海外の最新事例に目が行きがちだ。しかし例えば、アマゾンとウォルマートでは、同じ小売業でも戦略は大きく異なる。これら事業者のデジタル施策を同様に扱い、真似て導入するだけではDXは成功しない」(鈴木氏)と指摘します。自社の未来の姿をきちんと描くことの大切さを指摘しました。

物流中心に機能強化進むアプリの動向、小型店ならではの強みを活かす店舗も

 セミナー後半は、登壇した3人による対談を実施。各自が視察ツアーを終えた感想などを述べました。
写真:日本オムニチャネル協会会長の鈴木康弘氏(写真右)...

写真:日本オムニチャネル協会会長の鈴木康弘氏(写真右)、同協会専務理事の林雅也氏(写真左)、同協会理事の逸見光次郎氏(写真中央)

 林氏は、米国のアプリ事情に言及します。「小売業のアプリだけでもさまざまな機能を備え、機能強化も進む。とりわけロジスティクス向けの機能が拡充していると感じた。例えば、商品受け取りの選択肢が、通常配送、店舗から配送、店舗での受け取りなどの選択肢が豊富だ。さらに、配送の進捗状況、キャンセルや返品時の機能も拡充し、スムーズに進められる」(林氏)と分析します。会員向けのプログラムについても、「きめ細やかな管理機能を備えていると感じた。日本の小売事業者のアプリの方が進んでいると思っていたが、必ずしもそんなことはない。コロナを機にプログラム機能の強化が進んだと推察する。利益率を踏まえ、何ポイントたまると特典を付与する、商品に応じたポイント還元率を用意するなど、緻密な計算に基づき管理しているようだ。多くの小売事業者がこうした会員向けのプログラム機能の拡充に乗り出している」(林氏)と言います。そのほか、店内と店外でアプリの表示内容を切り替えたり、広い店内で欲しい商品がどこにあるのかを案内したりするアプリも目を引いたと林氏は述べました。

 逸見氏は前述の「TRADER JOE'S」の視察を振り返ります。「TRADER JOE'Sでは現場主義の考え方が根付く。経営層や本部が施策を検討し、店舗に施策実施を命じるわけでは必ずしもない。店舗スタッフがどうすべきかを考え、その考えに基づき店内やオペレーションを改善している。こうした店舗主導の取り組みがTRADER JOE'Sのブランドを築いている」(逸見氏)と分析します。なお、同店には顧客用の会員カードや顧客IDはないと言います。「商品の売れ筋などは当然、システム化して管理・把握するが、顧客接点はアナログで、いかによい商品をきちんとそろえられるか、さらには店舗スタッフの親しみやすさや話しやすさを重視する。接客のための教育訓練は毎年実施しているといい、どうすれば顧客が喜ぶのかを常に探っている。店舗スタッフの姿勢が同店のコアバリューを支えている」(逸見氏)と、小型店ならではの強みを考察しました。
日本オムニチャネル協会
https://www.omniassociation.com/
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