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風土改革の決め手は「DEI」、パナソニックが進めるビジネストランスフォーメーションの中身とは?

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DXマガジンは2022年3月16日、定例のDX実践セミナーを開催しました。パナソニック株式会社コネクティッドソリューションズ社で常務 CMO DEI推進担当役員などを兼務する山口有希子氏がゲストとして登壇。DXマガジン総編集長の鈴木康弘と「サステナブルな未来に向けた企業風土改革」というテーマで対談しました。企業の古い体制や風土をどう変えるのか。山口氏は自社の取り組みを交えつつ、風土改革のポイントや経営者の役割について言及しました。

当日のセミナーの様子を動画で公開しています。ぜひご覧ください。

DEIをベースにした風土改革を推進

 ゲストの山口有希子氏は、シスコ・システムズやヤフー・ジャパン、日本アイ・ビー・エムなどでBtoBマーケティング領域に従事。複数企業でマーケティング事業の管理職を歴任してきました。現在はパナソニック株式会社コネクティッドソリューションズ社(2022年4月よりパナソニック コネクト株式会社)常務 CMOとして、“新しいパナソニック”を全面に打ち出した自社の変革を主導します。自社オフィスや名刺デザイン変更によるイメージ刷新に乗り出したのを皮切りに、ライブ配信により同社社長の樋口泰行氏の露出機会を増やすなどの施策も次々手掛けます。
中でも同氏が変革の柱と位置付けるのが「DEI推進」です。DEIとはDiversity(多様性)、Equity(公平性)、Inclusion(包括性)の略で、多様な価値を持つ人を受け入れる社会や企業風土をつくる取り組みを言います。同氏はDEI推進を風土改革のベースと位置づけ、自社の新たな価値や成功モデル創出を進めます。
DEIが風土改革に必要な理由を同氏は、「企業が今後も存続する手段としてDEIは欠かせない。差別のない職場、フェアな労働環境、心理的安全性などに配慮する『人権の尊重』と、グローバル人材の獲得力、リスク管理能力、イノベーション創出などを高める『企業競争力の向上』。DEIではこれら1つひとつに目を向けなければならず、近年はグローバルでその重要性が増している。単に競争力を高めるだけでは企業は生き残れない。人権尊重と企業競争力向上の二軸で取り組む風土改革に意識を向けるべきだ」と強調します。
写真:パナソニック株式会社コネクティッドソリューション...

写真:パナソニック株式会社コネクティッドソリューションズ社 常務 CMO DEI推進担当役員 山口有希子氏

 こうした取り組みで成し得る変革を、同社は「ビジネストランスフォーメーション」と呼びます。さらに同社は、ビジネストランスフォーメーションを「風土改革」「ビジネス改革」「事業立地改革」に分割し、それぞれの改革を具体的な目標や施策のもとで進めます。
 例えば「風土改革」の場合、これまでの成功体験や価値観を見直し、新たな成功体験や価値観を社員で共有することを目指します。具体的には、「プロダクトアウトの発想」という過去の価値観を「顧客起点の発想」に、「内部リソースで処理する」という過去の価値観を「外の知見を取り入れる」に、「長時間労働が美徳」という過去の価値観を「成果を出すことが大事」などといった新しい価値観に置き換えます。山口氏は、「過去の成功や価値観に縛られない多様な人材が集まることに主眼を置く。こうした人たちが新たな価値観に基づき、能力を最大化できるようにする。会社はそのための体制づくりやサポートを進めるべきだ」と風土改革のポイントを指摘します。
なお、顧客に新たな価値を提供する「ビジネス改革」では、従来の成功モデルを新たな成功モデルへと見直します。ITツールの提供や単品提案などの成功モデルから、パートナーやコンサルティング、インテグレーションなど、顧客にとって役立つ提案をする成功モデルへシフトします。「ソフトウエアやハードウエアなどを提供する過去の成功モデルは、製品や技術起点の提案に過ぎない。しかし今後は顧客起点の提案が求められる。そのためには顧客とともに課題解決を目指すコンサルティングなどにこそ価値があり、顧客との『共創』を前提としたビジネスモデルに舵を切ることが必要と判断した」(山口氏)と、ビジネスの具体的な方針にも言及します。
 「事業立地改革」では、自社の事業ポートフォリオの選択と集中を進めます。不採算部門を中心に事業の打ち切りや売却、工場閉鎖などを進める一方、買収などにより強化すべき事業の製品・サービス群拡充も図ります。一例となるのが2021年に買収したBlue Yonderです。Blue Yonderは米国のSCM(サプライチェーンマネジメント)ソフトウエア会社で、グローバルで3000社の顧客を抱える世界最大のSCMベンダーです。「当社はインダストリアルエンジニアリングやエッジデバイス、IoTなどの製品、技術を通じ、モノを『造る』『運ぶ』『売る』といったサプライチェーンの現場(PHYSICAL)を可視化できる。Blue YonderのSCMソフトウエアと連携すれば、デジタル(CYBER)を通じて現場の情報を収集、蓄積、分析、活用できるようになる。現場の状況をより緻密に把握し、プロセスにイノベーションを創出させるのがBlue Yonder買収による事業強化の狙いである」(山口氏)と、Blue Yonderを使ったプラットフォーム構築を事業の強みに打ち出します。
DEI推進による風土改革を進めることで、従業員の意識も変わり始めていると山口氏は手ごたえを感じます。同社が実施した従業員の意識調査では、「全ての人が公平に扱われているか」という質問に対し、2021年時の調査では78%が「扱われている」と回答しています。2019年実施時の72%から6ポイント増えています。「一個人として尊重されているか」という質問も、2019年実施時の71%から2021年実施時は78%まで上昇しています。男性社員による育児休暇の取得率も2020年度は96.6%(平均取得日数は17.6日)に達するなど、従業員の働き方が大きく変わっていることを裏付けています。

現場の理解を深め、全社一丸による変革創出を

 では、山口氏は変革を主導する立場として、日本企業固有の特殊性やジレンマを感じることはあるのでしょうか。山口氏は、「グローバル企業に目を向けると、経営者のトップダウンで進み出すことが珍しくない。変革を進める際にも当てはまる。一方、日本企業の場合、現場が強いという特殊性がある。経営者によるトップダウンで物事を進めようとしても、現場が腹落ちしなければ動かない。現場が納得するルールづくりなどにも取り組まなければ変革も進まない。経営者にとって現場の従業員を腹落ちさせる取り組みはパワーがいるが、このハードルを越えさえすれば全社一丸となった変革を加速させられる」と、現場の理解に取り組むことの重要性を指摘します。
一方、経営者の姿勢にも言及します。「現場が強いとはいえ、経営者は変革することの『本気度』を示し続けなければならない。その姿勢、重要性を認識せずに変革は成し得ない。従業員に対して変革の必要性を発信し続けてほしい」(山口氏)と続けます。さらに、「日本企業の従業員は優秀だし、自社への思いも強い。経営者が変革に向けた正しい道筋を従業員に示しさえすれば、従業員も走り出すはず。強いリーダーシップが必要なのは当然だが、経営者は全社による総合的な変革を『作り出す』という視点も持ち合わせてほしい」(山口氏)とまとめました。
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