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経営改革を後押しする全体最適思考、仕事が滞留しがちな“希少リソース”を見極めよ

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DXマガジンは2023年11月1日、定例セミナーを開催しました。今回のテーマは「全体最適で経営を改革する~誰でも身につけられる全体最適思考~」です。全世界で人気のビジネス書「ザ・ゴール」。その著者であるエリヤフ・ゴールドラット氏が提唱するTOC(Theory of Constraints、制約理論)に基づく全体最適の考え方と取り組み方を紹介しました。

当日のセミナーの様子を動画で公開しています。ぜひご覧ください。

製造業や小売、流通業などに関わる企業が構築するサプライチェーン。その1つひとつの工程を見ると、作業が滞る“ボトルネック”と呼ぶ工程を目にすることが少なくありません。サプライチェーンを構築する事業者の多くが、この遅延や滞留をどう解消すべきかに頭を悩ませています。さらに、工程ごとの効率性や生産性ばかりに目を向け、部分最適に陥るケースも珍しくありません。

こうした課題を解消する手段の1つが「TOC(Theory of Constraints、制約理論)」です。多くのビジネスマンが必読する「ザ・ゴール」の著者、エリヤフ・ゴールドラット博士が提唱するこの理論。TOCを実践し、サプライチェーンの全体最適化を目指す企業は少なくありません。もっとも、このTOCはサプライチェーンのボトルネック解消の手段として使われるだけにとどまりません。経営の合理化や間接業務を効率化する手段としても使われています。

では、ボトルネックを解消し、全体最適にシフトするにはTOCをどう理解し、どう活用すればよいのか。今回のセミナーでは、ゲストとしてゴールドラットジャパン 代表取締役の岸良裕司氏とアドミニストレーション マネージャーの安田悦子氏が登壇。TOCを分かりやすく解説するとともに、全体最適を目指すときに必要な視点と考え方に言及しました。

仕事が滞留する「制約」の解消がカギ

セミナー前半は安田氏が講演。「総務・人事が全体最適の経営改革でヒーローになる理由とは?~TOCにおけるアドミンの役割~」と題し、TOCの考え方や具体的な取り組みなどを解説しました。

そもそもTOCとは「Theory of Constraints」の略で、日本語では「制約理論」と訳します。全体最適を実現するため理論で、制約に集中してマネジメントすることで制約を解消しようとする考え方となります。

例えば、組織には必ず組織同士の「つながり」や組織ごとに「ばらつき」があります。業務や業績が順調な組織があれば、遅延が発生したり業績が振るわなかったりする組織もあります。TOCはこうした組織ごとの「ばらつき」を解消することに主眼を置きます。作業や業務が滞りがちな組織の「制約」を解消し、組織全体のパフォーマンスを高めることを目指します。

安田氏はTOCが求められる背景について、「企業は将来にわたってお金を儲け続けるのが役割だ。そのためには企業に関わるすべてのステークホルダーに対し、価値を引き上げ続けなければならない。最大のパフォーマンスを発揮し続けなければならない。そこで、業務に支障が出ないよう組織の制約を助ける体制に目を向けることが重要になる。こうした制約を解消する一助となるのがTOCである」(安田氏)と説明します。

では、TOCの考え方を使って組織のパフォーマンスを最大化するには、どんなアプローチが必要か。安田氏は5つのステップを提示し、各ステップで何をすべきかにも触れました。

図1:組織に最大のパフォーマンスをもたらす「5つの集中ステップ」(出典:ゴールドラットジャパン)

最初のステップでは、制約となっている組織や業務を洗い出します。安田氏は、「まずは、仕事が滞留している人や組織を特定する。仕事が山積みになっている人や、メールの返信がなかなか返ってこない人は疑わしい」と指摘します。こうした滞留は一般的に「ボトルネック」と呼ばれるが、安田氏は「ほかの人にはできない専門的な業務に携われる人の仕事が滞留しがちだ。その意味で、仕事が滞留している人は『希少リソース』と呼べる。TOCでは、希少リソースの滞留をどう解消するかに目を向けることを重視する」と説明します。

写真:ゴールドラットジャパン アドミニストレーション マネージャーの安田悦子氏

次のステップでは、希少リソースがその人しかできない仕事に集中できるように助けます。「希少リソースと呼ぶ人は、優秀な人であることが少なくない。そのため、いろいろな仕事が集中しがちだ。つまり、その人がしなくても済む仕事を抱えていることがある。こうした仕事を周囲が引き取ることで、希少リソースが自分の仕事に集中できるようになる」(安田氏)と、希少リソースが集中して自分の仕事に取り組める環境を整備すべきと訴えます。

ステップ3では、希少リソースに合わせて仕事の投入をコントロールします。「希少リソースの仕事が滞留しないよう、作業量を調整することが大切だ。質の高い仕事をできるよう、ゆとりを持った予定を組んだり、全体の仕事を過剰にせず、スムーズに流れるよう配慮したりするようにすべきである。集中やゆとりを汲み取った環境を用意するのがポイントだ」(安田氏)と続け、滞留しにくい環境を整備することの必要性を訴求します。

次のステップ4では、制約の能力を高めることに取り組みます。「希少リソースの仕事をできる人を増やす取り組みも必要だ。希少リソースしかできない仕事を、他の人もできるようにする。こうしたサポート体制を整備、拡充することで、制約が起きにくい環境にする」(安田氏)と言及します。さらに、「そのためには人材育成がカギを握る。希少リソースの作業をサポート、もしくは引き継げる人材をいかに育てるか。制約を解消するためには欠かせない取り組みである」(安田氏)と続けます。

最後は、最初のステップに戻って仕事の滞留を再び探すようにします。「状況は刻々と変化する。滞留を解消しても、別の仕事で滞留が発生しかねない。全体の流れを再度確認し、仕事の滞留がないかを探す取り組みが必要だ」(安田氏)と指摘します。さらに、「以前のやり方やルールにとらわれないことが大切だ。惰性で仕事をせず、常に新たな制約、希少リソースを探すようにすべきである」(安田氏)と述べました。

安田氏は講演の最後、ゴールに向かって突き進むことの大切さを訴えました。「自分の限界だと思っていた状況を打破すれば、成長し続けられる。そのためには仮説を立て、結果を論理的に予測する考え方を養ってほしい。理由を考えて検証できるようになれば、成功する確率を高められる。もしうまくいかなかった場合、他人や自分のせいにすべきではない。大切なのは、間違った前提であるかどうかだ。そこに目を向け、次はどうすればゴールに近づけるのかを失敗から学んでほしい。ゴールに向かって考え、行動し続けることが何より大切である」(安田氏)と述べました。

なおセミナー後半は、安田氏に加えてゴールドラットジャパン 代表取締役の岸良裕司氏も登壇。モデレーターの鈴木康弘氏を交えて対談を実施しました。「TOCは誰でも身に付けられるのか」といったテーマで、TOCの考え方について踏み込んだ議論を展開しました。

写真:ゴールドラットジャパン 代表取締役の岸良裕司氏

さらに、サプライチェーンを全体最適化するときのTOCの考え方にも言及。在庫を可視化するツール「onebeat」の使い方を交え、利益を生み出すサプライチェーンを構築する方法も解説しました。

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