DXマガジンは2023年6月7日、定例のセミナーを開催しました。今回のテーマは「eスポーツが日本を救う~eスポーツから学ぶ、これからのビジネス~」。eスポーツに精通するFennel 代表取締役会長の遠藤将也氏をゲストに招き、eスポーツを取り巻く現状やビジネスとの接点について解説しました。
成長するeスポーツ市場、企業の積極的な支援や活用も進む
そこで今回のセミナーでは、eスポーツとビジネスの関係にフォーカス。ゲストとしてeスポーツ事業を展開するFennel 代表取締役会長の遠藤将也氏を招き、eスポーツ市場が盛り上がる背景などを紹介しました。
遠藤氏はeスポーツの現状について、「eスポーツの競技人口は世界で1億3000万人。これはメジャースポーツに匹敵する。バスケットボールの4億3500万人、サッカーの2億3000万人と十分並ぶレベルだ。野球の3500万人を大きく上回る」と説明。観戦者数にいたっては、2023年には6億4600万人まで増えていると、調査結果を引き合いに市場規模を説明しました。
eスポーツが盛り上がりを見せる背景にも触れます。「国際オリンピック委員会(IOC)が五輪でeスポーツ採用に向けて検討する中、国内でも対応が加速している。政府も現在、『eスポーツ』強化に向けた支援を打ち出している」と強調。すでにeスポーツに投資する大手企業が登場するなど、eスポーツ市場が企業を含めて盛り上がっている状況を解説しました。
もっとも、五輪でeスポーツが採用された場合、どのゲームで競技するのかが問題なると指摘します。「ゲームタイトルはゲーム制作会社に当然依存する。特定のゲームを競技にすれば、その会社のプロモーションになりかねない。利権などの面で、クリアにすべき課題も多い」(遠藤氏)と、eスポーツならではの課題に言及します。
ゲームが上手な人は仕事もできる!
最初のテーマは「eスポーツの将来はどうなる?」。この問いに対し遠藤氏は、「eスポーツは今後、トレンドを発信する役割を担う。それだけ消費者の中心に位置づく存在になる。子供たちがeスポーツに注目するのはもちろん、eスポーツはWeb3やメタバースといった新たなテクノロジとの相性も良い。こうした特性が、新たなトレンドを発信する素養となっている」と考察します。企業を交え、新たしい取り組みがeスポーツ発で動き始める可能性は高いと言います。
世界から日本のeスポーツ市場はどう見られているのか。こうした鈴木氏からの質問に対し、遠藤氏は「日本はまさに今、来ているという状況だ。日本と言えば、『ゲームはお家芸』と受け止められがちである。しかし、eスポーツに限るとお家芸とは必ずしも言えない。eスポーツで競技するゲームは、PC用ゲームタイトルがほとんどだからだ。つまり、マウスやキーボードで操作するゲームが大半である。こうしたPC用ゲームの人気は、国内では一部のユーザーに限られているのが現状だ。日本は家庭用ゲーム機が浸透し、専用コントローラを使って楽しむ人が大半である。しかし、コロナを機にPC用ゲームを始める人が増えた。その結果、世界と戦えるeスポーツ専用チームが国内でも出始めている」(遠藤氏)と分析します。
eスポーツビジネスで既存ビジネスの参考になる点を聞かれた遠藤氏は、個人的な考察と前置きしつつ、「ゲームが上手な人と仕事のできる人は二アリイコールである」とユニークな視点を打ち出します。遠藤氏は、「経営者の中に麻雀が強い人が多いのと同義である。つまり、攻めなければいけないとき、徹底して守らなければいけないときといった攻守をメリハリよく切り替えられるのは、ゲームもビジネスも同じではないか。どうすれば効率的に攻められるか。どんな守り方で乗り切るべきか。こうした考え方はゲームにも当てはまる」と指摘します。遠藤氏は実際、自社の従業員に対し、「ゲームと同じように仕事をしろ」と伝えているそうです。リスクを取らなければ営業案件を獲得できないなど、ゲームの考え方で、戦略的にビジネスに向き合うことが大切だと述べました。
さらに、ゲームを楽しんでいるときの積極性をビジネスでも出すべきだと続けます。遠藤氏は、「ゲームでは積極的なのに、仕事になると消極的になる人は少なくない。こんな人こそ、ゲームの面白さを普段の仕事の中に見つけてほしい。その結果、仕事が楽しくなるし、必ず成果にもつながるようになる」と、eスポーツの魅力を仕事にも活かすべきとまとめました。
なお、セミナー開催後、会場となったデジタルシフトウェーブのオフィスで、オンラインゲームの体験会を実施。セミナーにオフラインで参加した人を中心に、シューティングゲームを実際に体感しました。