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セミナー

欧州企業の行動や姿勢を見習え、労働生産性ランキング下位の日本が目指すべき働き方とは

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DXマガジンは2022年11月17日、定例のDX実践セミナーを開催しました。今回のテーマは「揺れる欧州のDX事情~欧州マーケットプレイスの潮流を探る~」です。フランスに本社を構えるMiraklの代表取締役社長 佐藤恭平氏がゲストとして登壇し、日本ではあまり知られていない欧州市場の動き、欧州企業の働き方などを紹介しました。

当日のセミナーの様子を動画で公開しています。ぜひご覧ください。

欧州企業を取り巻く現状とは

 セミナー前半は佐藤氏が欧州事情を解説。欧州企業の特徴や企業を取り巻く法制度などに言及しました。  米企業や独企業などでの勤務経験を持つ佐藤氏は欧州企業について、「デジタルやテクノロジといった最新の動きを取り入れる柔軟性を備える。他社の強みを達観し、必要に応じて取り入れる姿勢もある。その一方、自社の軸がまったくブレないのが特徴だ。これまで培ってきた文化や理念、ビジョンを貫き通す企業が目立つ。こうした姿勢が企業の揺るがないイメージやブランドを構築する素地となっている」(佐藤氏)と分析します。日本では米企業に関するニュースをよく聞くものの、「欧州、とりわけフランスやドイツは日本の風習や文化に近しいものがある。米企業の取り組みを見習うより、欧州企業の取り組みが参考になることは大いにある」(佐藤氏)と、欧州企業の動向に目を向けるべきと訴えます。
写真:Mirakl 代表取締役社長 佐藤恭平氏(写真左...

写真:Mirakl 代表取締役社長 佐藤恭平氏(写真左)と、デジタルシフトウェーブ 代表取締役社長 鈴木康弘氏(写真右)

 米国の自由主義と違い、事業を制限する禁止法や規制法が多いのも欧州市場の特徴だと佐藤氏は続けます。例えば、2050年までに温室効果ガスの排出量実質ゼロを目指す「欧州グリーンディール」。この成長戦略に基づき、各業界では再生可能エネルギーの普及や循環型社会の確立に向けた議論を活発化させています。
アパレル業界に限ると、大量生産・大量消費・大量廃棄といった従来のビジネスモデルを是正する動きがすでに起きています。フランスは2022年1月、売れ残った新品の衣服などを焼却したり埋め立てたりするのを禁ずる「衣類廃棄禁止令」を施行。多くのアパレル企業が、欠品と機会損失をなくすために大量在庫を抱えるといった施策に取り組めなくなったのです。「日本のアパレル企業の場合、生産した新商品の約半数を廃棄しているのではないか。フランスではこうしたビジネスモデルはもはや通用しない。廃棄せずにブランド価値を維持する方針に舵を切っている。環境への意識が世界規模で高まる中、フランスのこうした動きは日本にもいずれ波及する。日本企業は他人事ととらえず、今から次の一手を模索してほしい」(佐藤氏)と強調します。
アパレル企業の中には、在庫を廃棄させないための仕組みを構築し、新たなビジネスモデルを打ち出すケースもあると言います。その1社が、H&MグループのAFOUNDです。流通在庫はもとより、店頭在庫として店内に滞留する衣服などを再流通させる仕組みにECを活用します。AFOUNDで取り扱う衣服などに新商品は一切なく、100%持続可能なブランドだけを取り使う点が最大の売りです。H&Mグループのブランドのみならず、他社の100%持続可能なブランドを扱うのも特徴です。「自社ブランドだけではなく他社ブランドの商品も販売することで、幅広い商品を利用者に訴求できる。環境への配慮を全面に打ち出すことで、環境志向の消費者にも支持されやすい。こうした仕組みを構築するのに、当社のマーケットプレイスソリューションが使われている。Amazonや楽天のようなマーケットプレイスを自社主導で構築できるのがメリットだ。各店舗の在庫をECに容易に集約し、再流通させられる利点は、アパレル業界の課題に大いに寄与できる」(佐藤氏)と指摘します。なお、Miraklのマーケットプレイスソリューションはフランスの小売大手カルフールも導入しています。カルフールでは、小規模かつローカルの小売事業者100社以上をカルフールのECに出店させています。地域振興を図る目的で、Miraklのマーケットプレイスソリューションを活用しています。
図2:Miraklのマーケットプレイスソリューションを...

図2:Miraklのマーケットプレイスソリューションを利用する企業は300社を超える。カルフールやベスト・バイ、メイシーズなどの大手企業が自社ECにMiraklのマーケットプレイスソリューションを活用する

生産性が低い日本企業の打開策は

 セミナー後半は、佐藤氏と鈴木氏による対談を実施。「欧州から学ぶDX」というテーマで欧州企業の考え方や日本企業の課題について議論しました。
対談では、両氏が日本企業の生産性が低い理由を考察します。日本生産性本部が2021年12月に発表した「労働生産性の国際比較2021」によると、OECD加盟諸国(38カ国)の時間当たり労働生産性ランキングでは日本が23位(49.5米ドル)。1位はアイルランド(121.8米ドル)、38カ国平均は59.4米ドルで、日本の生産性はOECD加盟諸国の平均以下という結果でした。
日本生産性本部「労働生産性の国際比較2021」 (14523)

図:2020年のOECD加盟諸国の時間当たり労働生産性
 こうした状況を踏まえ、鈴木氏は日本の生産性が低い理由について、「サービスの利益率が低い。日米の小売業を比較しても、粗利は約10%もの差がある。安く売りすぎるのも問題だ」と指摘します。さらに「労働時間が長く、集中して仕事ができていない」「意思決定のスピードが遅く、待ち時間が多い」「自社や自部門の独自性にこだわり過ぎている」も理由だと述べます。
独自性にこだわり過ぎるといった点に佐藤氏も同意します。「例えば日本企業がERPを導入する場合、多くの企業がカスタマイズする。つまり独自色を打ち出そうとする。私は以前、ERPベンダーで開発を担当していたが、そのとき多かったのは独自のレポートを出力したいというニーズだった。標準レポートにはないデータ項目を次々追加していたが、追加したデータが意思決定に本当に使われているのかに懐疑的だった。日本企業の多くが、何に独自性を打ち出すべきかを見極められずにいる」(佐藤氏)と指摘します。
さらに佐藤氏は米国企業と欧州企業の働き方の違いにも触れます。「米企業で働く人は、夕方5時になると帰宅する人が多い。しかし、帰宅して家族と夕食後、自宅で仕事する人は意外と多い。これに対し欧州企業の場合、限られた勤務時間内にどれだけアウトプットを出せるかに注力する。週40時間という勤務時間で、これだけの成果、目標を達成させるという働き方だ。それだけ仕事の質が高い」(佐藤氏)と分析します。さらに、「日本で普及しつつある1on1ミーティングは欧州企業ではすでに根付いている。上司が部下の仕事の仕方を管理し、仕事の質を高められるようにしている。働き方の質という点で欧州企業の取り組みは見習うべき点が多い」(佐藤氏)と続けます。
鈴木氏も、日本企業の変わりつつある働き方に問題提起します。「長時間残業を見直し、勤務時間を短くする傾向が目立つ。しかし、これまでと同じ働き方のまま勤務時間を短くするのは生産性低下を招くだけだ。従業員の働き方、個々の仕事の向き合い方を根本から変える必要がある。ITを駆使して業務効率を改善するのも一案だが、既存業務を変えるほどの改革に乗り出すこともいよいよ必要ではないか。こうした取り組みこそDXで、DXなしに生産性向上はあり得ない。欧州企業が直面する環境問題対策も、日本企業はDXなしに乗り切れない」(鈴木氏)と強調しました。
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