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2022.04.08

新たな消費行動やデジタル化から目を背けるな、小売事業者は今こそDXに舵を切れ

「小売DX」とは何か。新型コロナウイルス感染症のまん延を機に、多くの小売事業者がDXを加速させるものの、その取り組みはさまざまです。ECを展開したり店員にタブレット端末を携行させたり…。小売事業者は今後、DXに取り組みにあたってどんなゴールを見据えるべきなのでしょうか。ここではDXの前提として、日本の小売業がどう歩んできたのか。その歴史を改めて振り返ります。なお、本連載は日経BP「小売DX大全」の内容をもとに編集しております。

 1900年以降の小売業を振り返ると、三越が1904年に「デパートメントストア宣言」を発し、誕生したのが百貨店です。一方、1953年には紀ノ国屋がセルフサービス方式のスーパーマーケットを開店。これが現在の「食品スーパー」業態の先駆けとなっています。

 そんな中、1950年代後半から1960年代にかけて起こったのが「流通革命」です。流通業界に新たな動きが次々と起き始めます。こうした動きをいち早く取り込み、食品スーパーを新たな業態へとシフトさせていったのが、ダイエーの中内功氏、イトーヨーカ堂の伊藤雅敏氏、イオングループ名誉会長の岡田卓也氏などです。食料品や日用品、衣類、家具などを扱う日本独自の「総合スーパー」(GMS:General merchandise store)が生み出されていくことになります。

 こうしたGMSが台頭したことで打撃を被ったのが地域の商店街です。そこで当時の通商産業省は1974年、出店する周辺の中小小売事業者を保護する大規模小売店舗法を施行し、GMSの都市部への出店に足かせをはめることにしたのです。GMSはその結果、より“統合色”を強く打ち出すようになります。

 最たる例が、イトーヨーカ堂が1974年に始めたコンビニエンスストア、「セブン-イレブン」です。1980年代になるとコンビニエンスストアの勢いはさらに増し、フランチャイズチェーン方式による小型店を大規模に出店するコンビニエンスストアも登場し出します。

 一方で、専門性を打ち出す小売店も次々登場します。特徴は豊富な品揃えと低価格化を訴求する点。大型の家電量販店を筆頭に幅広い生活用品を揃えたホームセンター、さらにはドラッグストア、カジュアル衣料店なども出店を加速させます。これらの専門小売店と食品スーパーを集約するショッピングセンターも誕生、成長し始めます。

 これらの変遷を見る上で着目すべきは、とりわけ1960年代以降の「高度経済成長」です。当時は経済成長とともに人口も増加し始めます。いわゆる大量生産・大量消費の時代です。モノを大量に作って売るには、多くの販売拠点も必要でした。そこで効率的な店舗網を構築、運営する手段としてチェーンストア経営が脚光を浴び、接客販売や陳列販売などの手法が小売ビジネスのモデルとして定着していくことになります。

 しかしチェーンストアモデルは「大量販売・大量消費」時代を前提としたもの。1980年代後半のバブル経済崩壊、2008年以降の人口減少などによる経済停滞が、小売事業者の事業モデル変換を求める契機となります。

 さらに、小売事業者にとって大きな変化が、1990年代後半から普及したインターネットです。当初は接続スピードが遅かったものの、徐々に加速し、現在は有線に限らず無線環境でも高速通信が可能になりました。スマートフォンの台頭も小売事業者の事業モデル転換に大きく影響します。外出先などからでもECを通じて商品を購入したり、サービスを申し込んだりといったことが当たり前になったのです。

 小売事業者に関わらず、多くの企業がこの波をとらえ、事業のデジタル対応を加速させています。一方、小売事業者はどうでしょうか。店舗に目を向けると、PCは店内に一台、販売員にタブレットを配布しないケースも少なくありません。経済や人口減少といった社会の動き、インターネットやスマートフォンなどの最新技術動向を、小売事業者は必ずしもつかみきれずにいるのではないでしょうか。これまでの事業モデルを踏襲し、社会の動きや新たなニーズを取り入れた事業モデルを創出できずにいるのです。

 では、どうすべきか。その答えの1つが「オムニチャネル」であり「DX」です。ITやデジタルを駆使し、新たな事業モデルを模索することが成功を呼び込みます。「すでに手遅れでは」と悲観すべきではありません。多くの小売事業者がデジタル化に舵を切る現状を、むしろチャンスと捉えるべきです。まずは社会や消費者の動きをキャッチアップし、現状の課題を把握することから取り組んでみてはいかがでしょうか。その課題をデジタルでどう解決するのか。面倒でもそこから目を背けず、新たな一歩を踏み出してください。小売業はDXを「巨大な機会」と捉えるべきでしょう。
本連載は、日経BP刊行の「小売DX大全」の内容を一部編集したものです。
日経BP「小売DX大全」

筆者プロフィール
逸見光次郎
株式会社CaTラボ 代表取締役。1970年生まれ。1994年に三省堂書店入社。 神田本店、成田空港店、相模大野店、八王子店勤務。1999年ソフトバンク入社。イーショッピングブックス立ち上げ(現:セブンネットショッピング)。2006年アマゾンジャパン入社。ブックス マーチャンダイザー。2007年イオン入社。ネットスーパー事業立ち上げ後、デジタルビジネス事業戦略担当。2011年キタムラ入社。執行役員EC事業部長、のち経営企画室オムニチャネル(人間力EC)推進担当。17年オムニチャネルコンサルタントとして独立。2019年4月より現職。現在はプリズマティクスアドバイザー、デジタルシフトウェーブスペシャリストパートナー、流通問題研究協会 特別研究員、EVOCデータ・マーケティング取締役、防音専門ピアリビング取締役、日本オムニチャネル協会理事、資さんうどんDXアドバイザー兼務。
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