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連載

実践!紙からデジタルにシフトして実感したこと 原価削減!コスト編

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 前回、前々回と雑誌の紙からデジタルにシフトして実感した広告面、編集面の効率化について連載をしてきました。主にコンテンツのデジタルシフトの実践を書いてきましたが、今回はよりリアルに実感できるデジタルシフトでの製造原価を下げることを主題にお話をいたします。

 雑誌の制作現場サイドのデジタル化はこの10年で日進月歩で進んでコスト削減を計ってきました。原価削減とは、お金、時間、品質の3要素をバランス良く考えなければいけません。お金を削減した結果、時間がかかりすぎたり、品質を落としてしまったら、元も子もありません。お金を削減し、時間も短縮できて、品質を上げるには制作現場のデジタルシフトに他なりません。では実際に順番にリストアップしていきます。

①レイアウトデザイン、入稿面

 これはもうどこの出版社でも今や一般化しています。昔は設計図みたいに紙にデザインしていましたが、今はMacでソフトを使って画面上でレイアウトデザインしています。これによって直しが簡単になり時間も短縮。レイアウトデザイン自体を画面上でフレキシブルに直せるので、編集部の意向に沿った仕上がりが実現しやすいのも◎。また紙でなくオンラインでレイアウトデザインするので、デザイナー→編集部→印刷会社の流れにバイク便を使っていたのが、パソコンで送信で済むので、バイク便コスト削減。当然、ライターからの原稿やカメラマンの写真をレイアウトに入れ込み印刷所の入稿までオンライン上で処理。さらに印刷所からの校正作業もオンライン。肌感覚的に月刊誌的な作業量でバイク便などのコスト含めて、月に30万円前後の削減。もちろん時間的にも3分の1程度に。
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②カメラマンの写真のデジタル化

 前はフィルムで撮っていましたが、今はフィルムでなく、デジタルに変わりました。これも一般的になりました。撮影中にいちいちポラロイドを撮って確認する必要なく、その場でパソコン画面で随時写真を確認でき、光加減や細かい修正がデジタルでリタッチできるので撮影時間も大幅削減。当然、時計や洋服のディテールも細かく表現できるので、クオリティはアップ。一番コストのかかるスタジオ代やロケバス代は3分の1に。またフィルム代、現像費などの写真雑費がなくなり、肌感覚的に月刊ファッション誌的な作業量で100万〜200万円程度の削減。
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 以上、2つは出版業界では平成の初期から早くにデジタル化されてきました。  以下、2つはコロナ禍の時代に気づいたコスト削減です。

③外部スタッフ、クライアントとの打合せのリモート化

 コロナ禍で対面の打合せでなく、zoomやGoogle meetでのテレカンが中心になりました。わざわざ直接会わなくても十分仕事ができる意識に変わりました。それによって打合せ場所までの移動時間が削減されました。またタクシー代や電車代などの交通費の削減、打合せカフェや打合せ会食、接待会食などの経費削減につながりました。漫画家接待、クライアント接待の多い大手出版社では年間に億単位の経費削減につながるようです。
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④編集部、広告部のテレワーク化

 昔から編集者は会社にいてはいけない!常に外に出てネタを探すことが第一義とされてきました。ですので、このコロナ禍でテレワーク中心になっても、さほど環境の変化はありません。今やデジタル環境が良ければ、どこでもいつでもカメラマン、ライター、デザイナーのやり取りや印刷所への入稿、編集長チェックを含めて編集作業全てを出社しなくてもオンライン上で完結します。編集会議もzoomやGoogle meetのテレカンであれば、編集企画上記もペーパレスになりコピー代も削減。案外経費がかかるのが外部スタッフとの打合せお茶代や打合せ会食代。あとは締め切り前の深夜残業代や深夜帰宅のためのタクシー代。肌感覚的に月刊誌の作業量で20万〜50万円の削減。締め切り前の徹夜作業〜朝に帰宅がなくなり、出社〜帰宅の移動時間も削減され、時間面、健康面でも改善。

 広告部的には、広告を取るためにはクライアントや広告会社への接待が必要!という悪き慣習がありましたが、今やクライアント側も広告会社側も対面接待をしない、受けないが主流です。弊社でも広告部長が毎月接待予算を取っていましたが、今やコロナ禍のテレカン時代に撤廃しました。月に少なくても数十万円、大きな出版社では何百万円の削減になります。
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 以上2つがアフターコロナの新しいデジタルシフトによる削減ですが、旧態依然たる体質な雑誌業界において、弊社も含めて上記③〜④を非常に嫌がる現場社員がまだまだ多いようです。ニューノーマルな時代に斜陽産業である出版社にデジタルシフトはあらゆる部分て待ったなしです。構造改革にはいつでも抵抗勢力は付き物ですが、改革なくしてデジタルシフトはならず!です。この③④だけでも年間数千万円のコスト削減になります。このコロナ禍で③④を削減する大義名分ができました。月刊雑誌で年間2000万〜3000万円程度の赤字なら解消されます。これは雑誌業界でなくても、いろいろな業界にも当てはまるところがあるかと思います。  今回は①〜④の大まかにデジタルシフトによるコスト削減の概要だけをお話しましたが、次の機会により細かくコスト削減の実践についてお話をいたします。
大久保清彦(Kiyohiko Okubo)

雑誌LEON、OCEANSなどを企画創刊し創刊副編集長、創刊編集長を経て、セブン&アイ出版常務執行役員の後、独立。 現在は家族の幸せやSDGsなどをコンセプトに掲げるMADUROなどの雑誌とオンラインを率いるRRデジタルメディア代表取締役としてご活動中。 SNSやデジタルメディアを活用し、「地域、企業、組織の編集力」を高め、「伝える力」をつけるためのソリューションを追求中。
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