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コラム

DXマガジン総編集長が2022年を読む~2022年は「データ経営」に期待、仕事を“振らず”自分で“こなせる”人材育成も重要に~

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DX(デジタルトランスフォーメーション)が一気に加速した2021年。2022年も多くの企業がDXを推進し、日本のデジタル化はさらに前進するでしょう。では、企業が2022年も引き続きDXを加速させるためには何が必要か。ここでは「データ活用」と「人材育成」にフォーカスし、企業がDXを成功へ導くためのポイントを考察します。

“仮説・実施・検証”にデータを活用せよ

 2021年は新型コロナウイルス感染症の影響などにより、DX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性を強く意識させられた1年でした。とりわけ多くの企業が「データ」と向き合い、書類のデジタル化やデータ収集環境の整備を進めました。  しかし、DXの本質はトランスフォーメーション、つまり「変革」です。デジタルは手段に過ぎません。  DXに取り組み出した企業の経営者に話を聞くと、「データを活用するための分析プラットフォームを構築した」「BIツールを導入してデータを可視化した」などの声をよく聞きます。ただし、これらの取り組みは必ずしもDXではありません。DXで大事なのは、その後です。データを活用するための環境を整備し、会社をどう変革させるのか。変革するための道を模索し、実践することに目を向けるべきです。データを収集・分析・可視化するだけでは、会社の変革は成し得ません。  「データさえ見続ければ未来が分かる」という声も少なくありません。しかし、データは過去の結果を示しているに過ぎず、データで未来が見えるわけではありません。データを使う目的も分からず可視化するケースは多く、「資料づくりにデータを活用している」なんて声も今なお聞きます。  では、DXを進めるにはデータとどう向き合うべきか。大事なのは「仮説・実施・検証」です。自分で考えた仮説が正しいのか、間違えているのかを検証する手段としてデータを活用すべきです。そもそも自社で仮説すら立てられない企業が多い。仮説を立てずにデータだけ眺めている企業も多い。これではデータを活用したとは言えません。
 DX推進のための施策やプロジェクトはすべて成功するわけではありません。そこには多くの失敗があります。どの施策・プロジェクトが成功し、何が失敗要因だったのか。こうした分析をデータに基づき検証する体制づくりこそ目を向けなければなりません。  現場がデータを使いこなせるようにすることも必要です。企業の中には、DX推進部や経営企画部が仮説立案や検証を一括するケースがあります。データに精通するデータサイエンティストが担当することもあります。しかし、施策の成否は現場が検証しなければ分かりません。営業やマーケティング、製造、開発などの事業部ごとに「仮説・実施・検証」のPDCAを回せる体制を構築すべきです。そのためには現場がデータにアクセスできる環境づくりが必要です。「仮説を検証するのに必要なデータを参照できない」「社内外にデータが散在し、仮説を検証できない」などの課題を解消することもデータ活用には大切です。状況に応じて必要なデータにアクセスできる柔軟性を備えたシステム構築も、「仮説・実施・検証」をする上で求められる要素の1つと言えるでしょう。  2022年は「データ経営」が本格化することを期待します。「仮説・実施・検証」の必要性は現場にとどまりません。自社の進むべき道を決める経営者にも当然求められます。  すでに社内のデータをBIツールで可視化し、意思決定などに役立てる経営者はいるでしょう。しかしDXが進めば業種や業界の垣根は取り払われ、「共創」による事業創出が当たり前になります。こうした状況では、社内の限られたデータを使って検証するだけでは経営判断を見誤りかねません。そこで、他の業種・業界で使われている社外データも参考にします。社内データを使うのはもとより、さまざまな業種・業界の社外データを集められるようにする環境も構築すべきです。例えば、官公庁などが公開するオープンデータや特定の市場動向をまとめた有償データなどを活用し、検証精度を少しでも高められる環境を模索します。データ経営では、こうした社内外のデータを多くそろえることが不可欠です。データの収集・分析環境を整備したら、次のステップとして2022年はより広範なデータ収集を目指すべきです。

なんでも自分でこなせる人材を育成せよ

 一方、DXを実践する人材に目を向けると、2022年は人材育成の重要性がさらに増すでしょう。企業は、DX人材の育成方法やキャリア形成プランを具体的な施策として打ち出すことが求められるでしょう。  ポイントは新たなスキルと知識の習得です。DXでは既存事業と無関係の新規事業を立ち上げることが想定されます。そこでは既存事業で培ったスキルや知識が必ずしも役立ちません。そこで企業は、こうした状況を踏まえた新たなキャリア形成プランを検討しなければなりません。すでに大企業の中には、文系出身者がプログラムを学ぶリスキリングを実施するケースが散見されます。これまで携わってきた業務以外の業務に対応できるマルチスキルの習得がDX推進のカギとなるでしょう。  自分で仕事をこなす力も重要です。これまでの社員の仕事を振り返ったとき、周囲のスタッフや外部人材を使って作業を“さばく”仕事中心だったというケースは少なくないのではないでしょうか。DX時代では、これまで関わってこなかった作業も自分ででき、自分でこなせるようになる人材が重宝されます。企業はDX人材を育成する際、さばく経験より自分でこなす経験を積み上げられるようにすることを意識しなければなりません。  なお、自分でなんでもこなす働き方を筆者は「バリアブルワーク」と呼びます。これに対し、周囲や外部人材を使って作業をさばく働き方を「ハンドリングワーク」と呼びます。ハンドリングワーク主体の働き方をしてきた人は一般的に、自分で何をすべきかという目的意識が軽薄になりがちです。例えば営業担当者の場合、「予算さえ追えばいい」と考えるようになってしまう。これではDXで直面する新たな課題を自らの力で乗り越えられなくなってしまいます。  これに対し、バリアブルワークに取り組んできた人は時代の変化を読み取り、必要なスキルや知識を自ら習得しようとする姿勢を持っています。これまで経験したことのない課題に対し、自らの努力で乗り越える力があります。DX人材の育成では、社員のこうした考え方や意欲を養うことが大切です。  本格的なDX時代の到来を想定し、プログラミングやAIなどのスキルを新たに取得させようとする企業が増えつつあります。確かにこれらはDX人材を育成する取り組みとして重要です。しかし一方で、今ある仕事を周囲や外部にさばかせず、自分でこなす働き方を身に着けさせてみてはいかがでしょうか。こうした経験を積むことで、社員は必要なスキルや知識を自ずと理解します。さらに一人で仕事をこなせるようになれば、関われる仕事の幅が広がるし、未経験の新規事業でも仕事を積極的にこなそうとする意欲を持つことができます。社員一人ひとりの意識を変えることも、人材育成に求められる大事な要素です。
筆者プロフィール
鈴木 康弘
株式会社デジタルシフトウェーブ 代表取締役社長
1987年富士通に入社。SEとしてシステム開発・顧客サポートに従事。96年ソフトバンクに移り、営業、新規事業企画に携わる。 99年ネット書籍販売会社、イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)を設立し、代表取締役社長就任。 2006年セブン&アイHLDGS.グループ傘下に入る。14年セブン&アイHLDGS.執行役員CIO就任。 グループオムニチャネル戦略のリーダーを務める。15年同社取締役執行役員CIO就任。 16年同社を退社し、17年デジタルシフトウェーブを設立。同社代表取締役社長に就任。 デジタルシフトを目指す企業の支援を実施している。SBIホールディングス社外役員、日本オムニチャネル協会 会長、学校法人電子学園 情報経営イノベーション専門職大学 客員教授を兼任。

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