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日本オムニチャネル協会がサウジアラビア&ドバイ/アブダビ視察ツアーを実施、参加者が語る中東の現状と期待

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日本オムニチャネル協会は2025年12月17日、DX実践セミナーを開催しました。今回のテーマは「オイルマネーとイスラムの国のビジネスを見に行く~サウジアラビア&ドバイ/アブダビ体感視察ツアー報告」。日本オムニチャネル協会が実施した海外視察ツアーの様子や、参加者が現地で感じたことなどを報告しました。

「中東?石油の国、戦争がある地域、イスラム教ってよくわからない」 。多くの方が中東と聞いて思い浮かべるのはこのような事ではないでしょうか。

原油に関してはサウジとUAEで日本の輸入量の80%を占めています。またアルミニウムに関しては輸入元ベスト5の中に両国とも入っています。 一方で両国とも飲料水の半分近くを海水からのろ過による淡水技術に頼っており、その透過膜には日本の技術が使われ、自動車や建設/産業機械なども日本から多く輸入しています。近年ではこうした貿易以外にも日本のアニメや漫画が人気で、IP(Intellectual Property:知的財産)コンテンツのビジネスも少しずつ増えてきています。

UAEは貿易、観光共にさかんですが、実はサウジアラビアは2019年に観光用のeVISA導入を発表し、巡礼者以外の観光客が訪れやすくなったばかりで、2030年の万博に向けて急ピッチで観光だけでなく、あらゆる産業が成長しています。そしてUAEのドバイに追いつけ追い越せ、と頑張っています。

今回のツアーでは、こうした現地の様子を視察。本セミナーでは、モデレーターの逸見光次郎氏を筆頭に、M&Aアドバイザーの宮崎淳平氏、パルコの安藤彩子氏、経営コンサルタントの占部伸一郎氏という、異なる専門領域を持つ3名のスピーカーが登壇し、特に小売業や外食産業、さらにはスタートアップの革新に焦点を当て、現地の商業活動を深く掘り下げました。

脱石油戦略「ビジョン2030」と加速するデジタル変革の衝撃

サウジアラビアを訪れた一行がまず圧倒されたのは、国を挙げて推進されている国家戦略「ビジョン2030」の浸透度でした。サウジアラビアは日本の5.7倍という広大な国土を持ちながら、人口は約3400万人と比較的少なく、その半数が30歳未満という圧倒的な若さを誇る「人口ボーナス」の段階にあります。かつては石油に依存していた経済構造を多角化し、DXを国家の中核に据える姿勢を示しています。宮崎氏はサウジアラビアについて、「ビジョン2030に向けた官民一体の熱量が凄まじい。どこに行ってもその話ばかりで、国民に国家戦略が根付いている」と指摘。実際に、リヤドの街中には無数のクレーンが立ち並び、大阪市と同じ規模のテーマパーク建設が予定されているなど、建設ラッシュの凄まじかったといいます。

急速な近代化の裏側で、日本の技術も重要な役割を果たしています。水資源が乏しいこの地域では、海水をろ過して飲料水を作る淡水化技術に日本の東レの膜技術が使われており、人々の生活を支えています。さらに、視察先として紹介されたDG高野の節水ノズル「バブル90」は、わずかな水で高い洗浄力を発揮する日本発の技術として現地で高く評価されているといいます。宮崎氏は「日本側の思い込みを捨てて、現地のマーケットと日本の強みが合う場所を見極めることが、投資やM&Aの観点でも極めて重要である」と考察。日本企業が活躍できる余地が十分にあることを強調しました。

写真:ゲストとして登壇したブルームキャピタル 代表取締役の宮崎淳平氏(写真左)と、コーポレイト ディレクション Managing Director Strategic Capital Advisory Directorの占部伸一郎氏

その他、銀行口座を持てない外国人労働者のためのデジタル給与管理サービスも紹介。ドバイの人口の約9割を占める移民が安全かつ簡単に本国へ送金したいというニーズも含め、セミナーではサウジアラビアの金融領域のDX事情も解説しました。

シンガポール化するドバイとオムニチャネルの最前線

一方、UAEのドバイは、サウジアラビアが追いかける先駆的な存在として、既に高度な経済発展を遂げています。ドバイの現状について占部氏は、「インドやアフリカまでをカバーするグローバル・サウスのハブとなっている。その戦略はシンガポールに酷似している」と分析。外資を優遇し、世界中から富裕層を惹きつけているといいます。その一方、物流や交通のハブとしての地位を確立し、ドバイ空港の国際線旅客数は10年連続で世界一を記録しているといいます。

小売ビジネスの面では、世界最大級の「ドバイ・モール」を筆頭に、圧倒的な規模とクオリティを誇っています。視察した「アパレルグループ」は、ドバイを本拠地として数多くの海外ブランドを展開するコングロマリットで、そのオムニチャネル戦略は極めて先進的だったといいます。

アパレルグループが手掛ける「6thStreet.com」の実店舗では、事前にアプリで予約した商品が自動で試着室に運ばれてくるシステムを導入。裏側のオペレーションでは、シャツ一枚一枚に丁寧にスチームを当てるなど、雑なイメージとは裏腹に日本並みの細やかなサービスが徹底されているそうです。

一方、首都アブダビは潤沢なオイルマネーを背景に、さらなる野心的な投資を続けています。アブダビは世界の石油埋蔵量の多くを保持しており、ドバイに追いつけ追い越せと、文化や観光、さらにはAI分野への投資を加速させています。アブダビ近郊には巨大なデータセンターが建設され、AI開発に必要な電力を確保するために、あえて石油やエネルギーの価値を再定義しようとする動きも見られます。

UAE内でも異なる特徴を持つ都市同士が、競争しながら中東全体の経済を牽引していることが浮き彫りになりました。

イスラム文化の深層と「新日」が拓く共創の未来

社会文化的な変容も注目に値します。特に女性の社会進出は劇的に変化しており、数年前まで運転すら禁止されていたサウジアラビアで、現在は多くの女性が働き、経済を支える一翼を担っています。セミナーでは、政府観光局の責任者が女性であったことや、アパレルショップで働く女性たちが非常にオープンに接客してくれたエピソードが披露されました。安藤氏は「イスラム教は、決して排他的なものではなく、生活の規範として人々を優しく支える平和な宗教である」と語り、現地の人々と直接対話することで得られた深い洞察を共有しました。

ゲストとして登壇したパルコ 店舗事業本部顧客政策部 部長 兼 J.フロント リテイリング 経営戦略統括部グループ経営企画部専任部長(グループ顧客戦略担当)の安藤彩子氏(写真右)と、モデレータを務めた日本オムニチャネル協会 理事の逸見光次郎氏

では、現地の日本に対する印象はどうでしょうか。その感情は非常に良好で、アニメやゲームといったIPコンテンツを通じて、サウジアラビアやUAEの人々は日本に強い憧れを抱いているといいます。安藤氏は「アラブの人々と日本人は、伝統や品質を重んじる感性において非常に近いものがある」と指摘し、日本企業が現地のパートナーと信頼関係を築くための鍵は、単なる商品の輸出ではなく、文化的な共鳴にあることを示唆しました。実際に、現地では無印良品などの日本ブランドが高く評価されており、日本の「オーセンティック(本物)」な文化への敬意がビジネスの追い風になっているといいます。

セミナーの最後には、登壇者が今後の中東市場への期待を語りました。占部氏はグローバルサウスの中継拠点としてのドバイの重要性を改めて説き、宮崎氏は10年後の劇的な変化を見届けたいという強い意欲を示しました。安藤氏は、2030年のリヤド万博に向けてさらに成長するであろうサウジアラビアを身近な存在として捉えるべきだと提言しました。複雑に絡み合う宗教、文化、そして最新テクノロジーが融合する中東市場は、まさに「未来の実験場」と言えるかもしれません。日本企業がこの潮流を捉え、中東の人々と共に新しい価値を創造していくことは、これからのグローバルビジネスにおいて極めて重要な鍵となるとセミナーでは指摘されました。

関連リンク
日本オムニチャネル協会
https://omniassociation.com/

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