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物流業界が直面する2024年問題、足元の現状を把握し、データやAIを使って活路を見い出せ

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日本オムニチャネル協会は2023年9月21日、定例セミナーを開催しました。今回のテーマは「2024年問題を斬る!共創で実現する新しい流通の未来」。物流業界にとって喫緊の課題である「2024年問題」が眼前に迫る中、企業はどんな対策を打ち出すべきか、次代の物流網をどう描くべきか。物流事業者が乗り越えるべき課題を整理するとともに、課題を解消する施策について議論しました。

当日のセミナーの様子を動画で公開しています。ぜひご覧ください。

2024年4月。日本の物流を支えるトラックドライバーの時間外労働が規制されることになります。働き方改革を背景に、ドライバーの労働時間が短くなることが見込まれています。これにより、国内の輸送能力は低下。モノが期日までに届かないなどの問題発生が懸念されています。物流業界は今、この「2024年問題」に直面しているのです。

物流や流通に携わる企業は「2024年問題」をどう乗り切るべきか。今回のセミナーでは、2024年問題を控える物流、流通事業者向けに、解決策について議論しました。

ゲストにはアイディオット 代表取締役の井上智喜氏と、TAKEz 代表の武田優人氏が登壇。物流業界の課題に精通する2人が、2024年問題を詳しく解説しました。さらにモデレータとして、日本オムニチャネル協会理事の逸見光次郎氏と、同協会でSCM部会のリーダーを務める小橋重信氏も登壇。これからの物流の在り方を4人で議論しました。

働き方を改善する法案が物流業界の人材不足問題を深刻化させる結果に

セミナー前半は、そもそも2024年問題とは何か。2024年問題の概要と、問題が生まれた背景などを整理しました。モデレータを務めた小橋重信氏は2024年問題について、「2024年問題の背景にある『働き方改革関連法案』は本来、労働者の労働時間を是正し、多様で柔軟な働き方を促進するのが目的だった。しかし今、ドライバー不足や物流会社の売上・利益減少、荷主に支払う運賃高騰などの問題に置き換わった。つまり、モノを運びにくい状況を生み出した」と2024年問題が生まれた状況を解説。残業の上限時間などを引き合いに出し、働き方改革関連法が生み出した弊害について触れました。なお総務省による統計によれば、トラック運転手の有効求人倍率は他の全職種に比べて2倍近い高い状況で、人手不足は他の職種より深刻化しているといいます。

写真:日本オムニチャネル協会 SCM部会リーダー 小橋重信氏

企業の2024年問題への対応状況にも言及します。「freeeが実施した調査によると、時間外労働の上限が規制される2024年問題について認知している企業の割合は83.7%と高い。しかし、対応状況を聞くと、未対応の割合は44%で約半数の企業が具体策を講じていない」(小橋氏)と指摘。対応する必要性を感じないという意見が多かったことに、小橋氏は危機感を持つべきと警鐘を鳴らしました。「喫緊の課題として2024年問題に向き合うべきだ。対岸の火事を決め込まず、自社に影響があるのかを見極めてほしい。他の企業とサプライチェーンを構築する企業は少なからず影響を受けるに違いない。自社が何をすべきかを洗い出してほしい」(小橋氏)と訴えます。

運送業者だけでなはく荷主を含めて課題解決に乗り出せ

では、こうした問題をどう乗り切るか。続いで登壇したTAKEz代表の武田優人氏は具体的な解決策を提案しました。

武田氏はトラックドライバーの1日の労働時間を分解し、どこを改善すべきかに言及しました。「ドライバーの労働時間が1日13時間とした場合、実際にトラックで荷物を運んでいる時間(運行時間)は8時間程度に過ぎない。残りの時間は荷物の積み込みや荷下ろし、車庫までの移動などの時間に費やされる。売上に直結する8時間の労働時間を効率化することに目を向けるべきだ」(武田氏)と指摘。さらに、「運行時間以外の労働時間をどう効率化するかは、ドライバーや配送会社だけの問題ではない。荷主を含む事業社の問題として時短などの改善策を模索しなければならない」(武田氏)と続けます。2024年問題は運送会社が解決するべき課題ではなく、荷主を含めて取り組むべきと訴えます。

写真:TAKEz 代表 武田優人氏

効率化を進めるための方策にも触れます。「ツールを導入したり、コンサルティング会社に相談したりといった方法で解決を図ろうとするのは必ずしも適切ではない。まず取り組むべきは、現状把握だ。物流の現場がどうなっているのかを知ることから始めるしかない。近道はあり得ない。足元の状況から目を背けないでほしい」(武田氏)と強調します。実際の物流網はどんな状況で、どんな点が課題になり得るのかを適切に把握することが重要だと訴求しました。セセミナーではメーカーの取り組み事例も紹介。具体的にどう現状把握し、何を検証したのかなども解説しました。

データを整理、活用し、売上や利益を最大化する方法を模索せよ

続いて登壇したアイディオット代表取締役の井上智喜氏は、物流を含む社会問題の解決手段としてデータやAIを活用する方法を紹介しました。

井上氏は、データを活用するプラットフォームを用いた物流戦略の考え方を提起します。「プラットフォームを構築し、情報資産を活用する体制を作るのが望ましい。これにより売上と利益の最大化を目指せるようになる。具体的には、輸送費や保管費、人件費をどれだけ削減すれば利益を最大化できるかを、データを使って模索する。一方、在庫や物流拠点、輸送網をどう最適化すれば売上を最大化できるかも模索する。荷主に最適化する施策を提案できるようにし、売上を引き上げられるようにすべきだ」(井上氏)と指摘します。自社による削減策と荷主への最適化策を同時に進めることで、利益と売上を最大化できるようにする取り組みに目を向けるべきと井上氏は訴えます。

写真:アイディオット 代表取締役 井上智喜氏

セミナーでは、データを活用する実例も紹介しました。例えば、複数の物流会社に委託することで情報がサイロ化しているというメーカーの場合、各社でバラバラのデータを揃えるために共通規格を導入したといいます。エリアごとの販売、在庫データ、保管・輸送コスト、さらには地理情報を収集し、クレンジングすることでデータの規格を統一。これにより各物流会社の状況を可視化し、どのエリア、物流会社の輸送コストが高いのかなどを正確に把握できるようにしました。さらに、欠品率や納期遵守率をサービスレベルとして設定。数値に基づくシミュレーションを実施できるようにし、欠品を解消するために必要な輸送頻度などを算出しました。なお、このメーカーの場合、データを整理してシミュレーションを実施したところ、輸送コストを8%削減できるといった具体的な改善目標も算出できたといいます。

井上氏はそのほかにも、安全在庫を確保する方法や、最適な配車計画や配送ルートを割り出す方法、コストや環境負荷を削減する輸送方法などを、事例を交えて紹介しました。

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