株式会社サイエンスアーツは2026年3月10日、ライブコミュニケーションプラットフォーム「Buddycom」と、京王電鉄株式会社が社内マニュアルを学習させて運用する生成AI「KEIO AI-Hub」をAPI連携し、同日から運用を開始したと発表しました。京王電鉄では、事件や事故の初動対応と情報連携を迅速化するため、2022年から全駅と全車掌にBuddycomを導入しています。今回の連携により、乗務員や指令員はBuddycom上で音声またはテキストによる質問を行うだけで、KEIO AI-Hubが社内規程やマニュアルを検索して要約し、その回答をテキストと音声で即時に受け取れます。鉄道の運行現場では、運転取扱実施基準や乗務員実務マニュアルなど膨大な規程類の理解と迅速な判断が求められます。情報探索を短時間で完了できる仕組みは、異常時の判断と対応のスピード向上に資するものです。日常業務や人財育成の高度化にも波及効果があるとしています。
京王電鉄での導入の狙い
京王電鉄は、異常時対応力の強化と情報探索の生産性向上を目的に、KEIO AI-HubとBuddycomをAPIで連携しました。これにより、現場の乗務員がBuddycomに向けて状況や疑問を話しかけると、AIが社内規程類から該当情報を抽出し、要点を要約して返答します。返答は音声とテキストの双方で受け取れるため、騒音下や移動中でも確認がしやすくなります。従前はマニュアルを個々に検索して該当箇所を特定する必要がありましたが、連携後は検索にかかる時間の大幅な短縮が見込まれます。初動が重要なインシデント時において、情報到達の遅延が縮減される効果が期待されます。サイエンスアーツは、これを「駅員・乗務員とAIが共に働くプラットフォーム」への第一歩として位置付けています。
BuddycomのAPI連携機能がもたらす拡張性
Buddycomは、外部サーバーとのテキストデータ等の送受信をAPI経由で行えるため、顧客が構築したAIに対し、Buddycomから音声で質問し、音声で回答を受け取る運用が可能です。AIカメラや記録システムとの連携にも対応し、AIカメラが検知したVIPや不審者情報を音声で即時通知したり、記録システムへBuddycomから音声で入力したりできます。これらの機能は、現場の情報伝達を途切れさせないリアルタイム性の確保に直結します。音声を起点にさまざまなシステムと接続できるため、運用現場の多様なワークフローに合わせた実装がしやすい点が特長です。今回の京王電鉄での事例は、API連携の具体的な適用例として、鉄道運行という安全性要求の高い場面での有効性を示します。規程類の即時要約と提示は、現場判断の質と速度の双方に寄与します。
異常時対応の即応化と人財育成への波及
鉄道業務では、異常時の迅速な判断と的確な行動が安全確保の要となります。BuddycomとKEIO AI-Hubの連携は、必要情報の探索時間を圧縮し、現場が迷わず次のアクションに移れる環境を整えます。回答が音声とテキストで提供されるため、現場の状況に応じて確認手段を選べます。日常業務では、規程やマニュアルへのアクセス頻度が上がることで、知識の定着と教育の効率化も期待されます。業務標準の参照が容易になることは、属人化の抑制や判断のばらつき低減にもつながります。サイエンスアーツは、この取り組みが日常のオペレーションを高精度化し、結果として異常時の耐性を高める一助になるとしています。
フィジカルAI連携基盤への進化構想
サイエンスアーツは、Buddycomを「人・AI・センサー・カメラ・設備データをリアルタイムで接続するフィジカルAI連携基盤」へ進化させる方針を示しています。現場の音声を起点にAIが状況を解析し、必要情報を提示して、設備やシステムと自律的に連携する世界観を描きます。2024年2月に発表した「よびだしベル機能」により、スタッフとお客様を結ぶ機能を拡充し、今回の事例で人とAIの接続を実装しました。今後は、音声とデータが連動することで、現場判断をAIが補完し、意思決定とアクションを連鎖的に加速させる基盤を目指します。Buddycomは単なるインカムアプリにとどまらず、リアルとデジタルを統合するプラットフォームとしての役割を強化します。これにより、異常時だけでなく日常オペレーションの最適化も包括的に支援します。
Buddycomのサービス概要と導入実績
Buddycomは、4Gや5G、Wi-Fiの通信網を用い、スマートフォンやタブレットにアプリを入れるだけで、トランシーバーのように複数人が同時コミュニケーションできるプラットフォームです。音声に加えて、テキストチャット、動画、位置情報に対応し、AIを用いたデジタルアシスタントによるコミュニケーションも行えます。導入実績は航空、鉄道、建設、福祉施設、流通など多様な業種に広がっています。サイエンスアーツは、フロントラインワーカーに未来のDXを提供することをミッションに掲げ、Buddycomの開発と販売を継続しています。2021年の上場以降、同社はノンデスクワーカー向けの音声や映像コミュニケーションツール分野で5年連続シェアNo.1を獲得したとしています。継続的な機能拡張と現場密着の開発姿勢が、導入規模の拡大を後押ししています。
鉄道現場での活用が示す展望
今回の京王電鉄での事例は、規程類とマニュアルの即時検索と要約を現場の音声コミュニケーションと統合し、実運用に投入した点に特徴があります。異常時の判断支援とコミュニケーションの一体化は、運行の安全と安定に直結します。API連携の枠組みは、AIカメラや設備とつながる応用へも拡げやすく、将来の自律的なオペレーション連携に道を開きます。駅員や乗務員がAIと共に働くプラットフォームの具体像が示されたことで、他業種への展開可能性にも関心が集まります。サイエンスアーツは引き続き、現場の音声を起点にしたリアルタイム連携で、オペレーション全体の最適化を目指す方針です。現場の生産性と安全性の両立を支える基盤として、Buddycomの役割は一層高まると考えられます。
詳しくは「株式会社サイエンスアーツ」の公式ページまで。レポート/DXマガジン編集部






















