東日本旅客鉄道株式会社は、線路メンテナンス用分析プラットフォーム「Viz-Rail」に新機能「HARIBOU」を実装しました。線路設備モニタリング装置で毎日取得する軌道変位データを活用し、最大300日分のレールのゆがみデータを自動分析してレール張り出し現象の予兆を抽出します。これにより高温期に稀に発生する大きなレールのゆがみを未然に防ぐ取り組みを強化します。開発は社内のDigital & Data イノベーションセンター「DICe」と第一線の保線技術者が推進しています。Viz-Railは第1期の急進性把握、第2期の列車動揺予測に続く第3期での拡張となります。JR東日本グループが掲げる「安全を最優先とした輸送基盤の強化」をデータで支える基盤として、予防保全の高度化を進めます。
線路メンテナンス分析基盤「Viz-Rail」の進化 第1期から第3期までの機能拡張
JR東日本は2018年度から線路設備モニタリング装置を導入し、線路の状態を示す軌道変位データを毎日取得しています。これにより、状態データに基づき劣化の兆候段階で対処するCBMへの転換が進みました。2023年からはDICeと保線技術者によるアジャイル体制で「Viz-Rail」の開発を行い、判断を支援する機能群を実装しています。第1期では直近15日分のデータから急変箇所を検知する急進性把握機能を実装しました。第2期では線路の凹凸量データから列車動揺の発生を予測する機能を実装しました。第3期のHARIBOUは最大300日分のゆがみデータを日次で自動分析し、高温時に発生しうる張り出し現象の予兆をとらえる機能です。導入線区は当社管内全体の約70パーセントに及び、データ取得と分析の継続性が運用の土台になっています。
HARIBOUの仕組みとダッシュボード 日次自動抽出と一元表示で優先度判断を定量化
従来は年4回のEast-iデータや線路条件、過去事例などに基づく基準で人手により点検箇所を抽出し、高温時に現地目視確認を行っていました。これに対しHARIBOUは、導入線区全線を対象に高温時に限らず毎日自動で直近300日分のゆがみ変動幅を判定し、予兆箇所をタイムリーに抽出します。抽出結果は変動幅の一覧や地図、地点ごとのゆがみ変動幅と時系列データを一元的に表示するダッシュボードで確認できます。保線技術者は一覧で候補を把握し、地点の詳細、現在の変動幅、300日間の変化の順に確認する判断プロセスを踏めます。これにより現地調査の優先度を漏れなく定量的に決められるようになり、無駄の少ない的確な現地調査につながります。結果として予防保全の実効性が高まり、より安全レベルの高い輸送サービスの実現に寄与します。
従来手法との比較 日次取得と自動判定で予兆把握のタイムリー性を確保
比較すると、レールのゆがみデータは従来East-iで年4回取得していたのに対し、現在は線路設備モニタリング装置で毎日取得しています。予兆箇所の抽出は、従来は基準により人が都度抽出していたのに対し、HARIBOUは全線を対象に直近300日分の変動幅を自動で判定します。抽出箇所の確認は、従来は高温時の現地目視が中心でしたが、HARIBOUでは変動幅の一覧をもとに定量的に優先度を判断し、的確な現地調査へ直結させます。ダッシュボードでの一元表示により地点別のゆがみと変動幅、300日間の推移が即座に参照でき、タイムリーな対応が可能です。ゆがみ最大値と最小値の差が大きい箇所は張り出しの予兆として抽出され、対策の必要性判断に資する情報が得られます。運用の標準化により、見落としの抑制と対応スピードの向上が期待されます。
安全最優先の基盤強化と今後の展望 データドリブン管理への道筋
JR東日本グループは「勇翔2034」で掲げる安全最優先の輸送基盤強化を目指し、検査や点検のレベルアップに取り組んでいます。Viz-Railは線路設備全般の状態判定への展開を進める主軸の一つとされています。今後は判定結果をもとにAIなどを活用し、工事計画調整からヒト・モノ・カネの最適配分までを一元的に実行するデータドリブン管理の体制構築を目指します。これにより技術者が最終判断と価値創造に専念できる業務プロセスが整います。将来的には本取り組みで培ったノウハウを他鉄道事業者にも展開し、業界全体の線路メンテナンスの高度化に貢献する方針です。2018年の線路設備モニタリング装置の本格導入や、2023年の保線管理システム「RAMos+」の開発、同年の組織改正でのDICe設置といった流れの先に、HARIBOU実装が位置付けられます。継続的な機能拡張により、予防保全の質とスピードを高める取り組みが進みます。
実務で押さえるポイント 日々の確認プロセスと季節要因の可視化を運用に組み込む
HARIBOUは毎日の自動分析により、季節変動を伴うゆがみの傾向や直近での急増を把握できます。ダッシュボードの手順に沿って一覧、地点、現在の変動幅、300日間の推移を確認することで、現地調査の優先度を客観的に判断できます。ゆがみの各指標は高低、通り、軌間、水準、平面性といった軌道変位の内容と整備基準値の枠組みで理解でき、基準との関係でリスクを評価できます。バラスト軌道とスラブ軌道など構造の違いによる変動の大小も、変動幅の比較で把握しやすくなります。East-i中心の年4回から日次モニタリングへの移行により、暑熱による張り出しの予兆を朝夕段階でとらえ、昼の発生リスクに先手を打つ運用が可能です。予兆を早期に抽出し、必要な場合の軌道修繕やバラスト散布などの対策判断に結び付けられます。データと現場の連携で、無駄を抑えた予防保全の実装が前進します。
詳しくは「東日本旅客鉄道株式会社」の公式ページまで。レポート/DXマガジン編集部






















