鹿島は、オフィスビルなどに設置される空調機をAIで最適に自動制御するシステム「K-BOX」を開発しました。特徴は小型エッジコンピュータを一般的な設備機器に外付けするだけで導入できる点にあり、建物内で情報処理を完結させることで、既設建物でも簡易かつ低コストにスマート化を実現します。クラウド型の気象情報サービスと連携でき、天候に応じた制御も可能です。自社施設の一部空調機に試適用した結果、快適性を損なわずに空調エネルギー消費を約3割削減できたとしています。鹿島は、ハードとソフトを組み合わせてライフサイクル全体で進化する建物をスマートビルの一つと位置付け、本システムの普及を通じて社会課題の解決と顧客ニーズへの貢献を目指します。
背景と狙い クラウド依存の課題をエッジで解決
スマートビルへの関心が高まる中、従来は外部クラウドを介して温湿度や電力消費などのデータを収集し設備を制御する方式が一般的でした。この方式では瞬時の分析に基づく制御や柔軟なカスタマイズが難しく、建物情報を外部に保存することによるセキュリティ上の懸念も指摘されています。特に既設建物では、クラウド接続に必要な情報通信の導入やセキュリティ対応に伴う改修がハードルでした。鹿島はデータの発生源である現場側で処理を行うエッジコンピューティング技術を採用し、外部クラウドを経由せずに最適自動制御を実現するAIシステムを構築しました。これにより、リアルタイム性と安全性を両立しつつ、導入時の改修負担を抑える狙いがあります。さらに、クラウド型の気象情報と組み合わせることで、外部環境の変化も見越した制御に対応します。
システム構成と特長 小型エッジで学習と制御を完結
本システムは小型エッジコンピュータで構成され、外気と室内の温湿度、電力消費量、設備機器の動作特性などをAIが分析し最適制御します。小型エッジは基本ユニットと拡張ユニットで構成され、空調機に外付け設置するだけで建物内で情報通信を完結できます。基本ユニットは各空調機と接続してデータ収集や加工、制御信号の伝達を担います。拡張ユニットはAIを搭載し、収集データを分析して室内温湿度の最適値を算出し、自動で制御します。今回のAIはSOINN株式会社の「人工脳SOINN」を搭載しています。AI制御では制御範囲の設定、既存制御との干渉、誤判断への対応が課題となりますが、鹿島が培ってきた設計・施工ノウハウにより最適で安全な運用を実現しています。さらに、万一の故障時には自動的に従来運転へ切り替わるフェイルセーフ機能も備え、信頼性を高めています。
導入の柔軟性 既設対応とカスタマイズ性を両立
K-BOXは新築だけでなく既設建物にも対応し、空調機などの既存汎用設備機器に小型エッジを外付けするだけで導入できます。機器本体の改造は不要で、フロアやテナント単位で制御内容のカスタマイズが可能です。オフィスや工場などの産業施設、住宅など用途を問わず幅広く活用でき、建物規模やテナントのニーズに応じて小型エッジの設置台数を任意に増減できます。情報通信が建物内で完結するためセキュリティ面の懸念を抑えつつ、気象予報などのクラウド情報を取り込み、季節や天候に応じた制御も行えます。こうした構成により、既存の運用に大きな変更を加えることなく、段階的で柔軟なスマート化を進められます。導入後もAIがデータを取り込みながら運転を最適化することで、安定した省エネルギー効果の持続が期待されます。
効果検証 快適性を維持しながら中間期28% 夏期32% 冬期33%を削減
東京都内の自社施設で一部の空調機制御に試適用し評価試験を実施しました。従来は季節ごとに管理者が設定した目標温湿度に基づいて運転していましたが、評価試験では建物利用者が快適と感じる範囲内で、外気と室内の温湿度や機器特性からエネルギー消費が最小となる温湿度の組み合わせをAIが1時間ごとに探索し制御しました。快適範囲はASHRAE 55-2017で定められた範囲を用い、快適性を損なうことなく省エネを達成しています。結果として、従来運転時の2024年実績と比較し、空調機のエネルギー消費量は中間期で28%、夏期で32%、冬期で33%の削減を確認しました。これらの数値は、リアルタイムな最適化が季節を問わず有効であることを示すものです。フェイルセーフにより万一の障害時でも従来運転に自動復帰するため、実運用でのリスク低減にも寄与します。
今後の展開 環境負荷低減とウェルネス向上を両立
鹿島は、ハードウェアとソフトウェアを最適に組み合わせてライフサイクルを通じて進化し続ける建物をスマートビルの一つと定義し、K-BOXの普及で建物のスマート化を推進します。今後は、環境負荷の低減に加え、建物利用者のウェルネスや利便性、快適性の更なる向上に資する機能やサービスの開発を進める方針です。エッジコンピューティングを核とした最適制御は、新築だけでなく既設建物にも適用しやすく、段階的な拡張にも対応できるため、幅広い施設での展開が想定されます。気象予報と連携した制御の高度化や、用途別ニーズに合わせたカスタマイズも視野に入れ、スマートビルの普及促進に取り組みます。これにより、快適性と省エネルギーの両立を図りつつ、持続可能な都市環境の実現に貢献していきます。
詳しくは「鹿島」の公式ページまで。レポート/DXマガジン編集部





















