DXマガジンは2026年8月6日、「AIエージェント時代、日本企業は何から始めるべきか。~シリコンバレーAX最新潮流から学ぶ~」をテーマにDX経営セミナーを開催しました。登壇したのは、株式会社Kiva 代表取締役社長の野尻航太氏と、シリコンバレーを拠点にAI・スタートアップの最前線を見てきた同社CFO兼CSOの中西勇登氏。モデレーターは株式会社デジタルシフトウェーブ 代表取締役社長の鈴木康弘氏が務めました。
生成AIが「AIチャット」から、自ら計画し業務を実行する「AIエージェント」へ進化する中、3人は世界で起きている変化と、日本企業がこれからどう向き合うべきかを議論しました。
AIは「答える」から「仕事をする」存在へ
まず中西氏が、シリコンバレーで起きているAI投資と企業活用の変化を紹介しました。2026年第1四半期のAI関連の資金調達総額は約3,000億ドル。資金調達全体に占めるAI銘柄の割合は80%に達し、その資金の6割がOpenAI、Anthropic、xAI、Waymoの4社に集中しているといいます。
企業のAI活用も「実験」から「成果」へ移り始めています。Fortune 500企業では29%、Global 2000企業では18.5%が、AIスタートアップとの契約からPoC、本番稼働まで進んでいると紹介されました。AIは単なる新しいITツールではなく、実際の業務や事業を変える存在になり始めています。

なぜ「AIチャット」だけでは会社は変わらないのか
続いて野尻氏は、ChatGPTなどのAIチャットを導入するだけでは、企業全体の変革にはつながりにくいと説明しました。AIチャットは、人がその都度指示する必要があり、自律的な判断や継続的な記憶、業務システムとの連携にも限界があります。
一方、AIエージェントは自律的に計画し、実行まで完了します。文脈やタスクの状態を保持し、業務システムとも連携することで、AIは個人の効率化ツールから「組織横断の業務インフラ」へと役割を変えていきます。

業務改革ではなく、会社の作り直しへ
後半の対談では、鈴木氏が「AIエージェントになると、すべての企業の仕事のあり方が変わるのではないか」と問いかけました。これまでのIT導入は、メールや会計など業務の一部分をシステムに置き換えることが中心でした。しかしAIエージェントは、複数の業務やシステムを横断し、一連の仕事を担えるようになります。議論は、AIエージェントによる変化は単なる「業務改革」ではなく、「会社の作り直し」に近いのではないかという話にまで発展しました。
誰がどの仕事を担うのか、人とAIをどう組み合わせるのか。AIエージェントの登場によって、企業は組織そのものを見直す必要がありそうです。
成功する企業は「トップダウン×現場」
そこで鈴木氏が「AIエージェント導入で成功する企業と失敗する企業の違いは何か」と問いかけると、野尻氏は、実際の企業支援を通じて「トップダウンとボトムアップの両方が必要」だと語りました。
経営層が「AIで会社を変える」と号令をかけるだけでも、現場にAI活用を任せるだけでも不十分です。経営が方向性を示し、業務を知る現場が参加する。その両方が揃って初めて、AIを本当に業務へ組み込めるといいます。さらに、営業や経理などの業務部門とIT・DX部門をつなぐことも重要です。AI活用を「IT部門の仕事」にせず、会社全体のテーマとして扱えるかが問われています。
AIが進化するほど、人間の力が問われる
一方、鈴木氏はAIに判断を委ねすぎることへの危うさにも触れました。
「AIが素晴らしいからこそ、人間も同時に成長していかなければ使われてしまう」。そんな問題提起に対し、野尻氏も、AIを使うほど自分自身が考えなくなってしまう感覚があると応じました。AIが答えを出してくれる時代だからこそ、「何を問うのか」「どう判断するのか」「最後に何を選ぶのか」という人間側の力が、より重要になります。

AIエージェント時代に求められるのは、単に「AIを使う会社」になることではありません。AIと人が一緒に働くことを前提に、業務、組織、そして会社そのものをどう作り直すのか。3人の議論からは、日本企業がこれから向き合うAXの本質が見えてきました。
関連リンク
株式会社Kiva
https://kiva.co.jp




















