ガソリン補助金で価格は落ち着いているはずなのに、なぜ企業の悲鳴は止まらないのでしょうか。東京商工リサーチの最新調査で、中東情勢によるマイナスの影響が実に8割以上の企業に及んでいることが判明しました。特にグローバル展開する大企業を直撃している、深刻な調達危機の裏側に迫ります。
ナフサ高騰や調達難が大企業を直撃、4社に1社が経営戦略の修正へ
東京商工リサーチは2026年6月10日、米国とイスラエルによるイラン攻撃が企業の事業活動に与える影響をまとめた「中東情勢に関するアンケート調査」の速報を発表しました。6月1日から8日にかけて実施された2回目の調査では、有効回答を寄せた7,614社のうち、実に80.6%の企業が自社ビジネスに「マイナスの影響がある」と回答しています。これは4月に実施された前回調査の78.7%から1.9ポイント上昇しており、情勢の緊迫化とともに企業の危機感がさらに強まっている実態が浮き彫りになりました。特に大企業における深刻度が大きく増しており、マイナスの影響を訴える割合は前回の80.9%から5.4ポイントも上昇して86.3%に達しています。中小企業の80.2%と比較しても、生産規模が大きくグローバルなサプライチェーンを持つ大企業ほど、今回の地政学リスクの直撃を受けている様子が窺えます。
企業活動を脅かす具体的な要因を紐解くと、最も多かった理由は「原油由来の素材・材料の高騰によるコスト増」で73.3%にのぼりました。さらに「原油由来の素材・原材料の調達難」を挙げる企業が前回の45.5%から59.7%へと14.2ポイントも急上昇しており、ナフサやシンナーといった化学製品基礎原料の品薄と価格高騰が現場の大きな足かせとなっています。この調達難についても大企業の回答率は64.8%に達し、中小企業を5.5ポイント上回る結果となりました。一方で、前回調査で64.8%に達していた「ガソリン価格の高騰」を懸念する声は、今回の調査では41.3%へと23.5ポイントも大幅に低下しています。これは政府が実施しているガソリン価格の激変緩和措置が一時的な防波堤として機能し、燃料費への懸念を和らげているためとみられます。
このように足元の燃料価格が政策で抑えられている半面、先行き不透明な原材料の調達リスクは企業の長期的な事業計画に暗い影を落としています。紛争の長期化を見据えた経営戦略(調達、販売、人事、提携など)の見直しについて尋ねたところ、「すでに見直している」と回答した企業は24.0%に達しました。前回の15.2%から8.8ポイントも上昇しており、実に4社に1社の企業がすでに具体的な事業計画の修正やサプライヤーの変更といった防衛策を迫られている実態が判明しました。中東情勢の出口が見えないなか、従来の調達ガバナンスの維持は困難になりつつあり、多くの企業が抜本的な戦略転換へと舵を切り始めています。
見解として、政府のガソリン補助金で表面上の燃料コストが抑えられても、ナフサなど原材料の深刻な調達難という本質的なサプライチェーンのリスクまでは防ぎきれません。 中東リスクが8割の企業に広がるなか、物価の激変緩和措置に頼るだけでなく、不確実な時代を生き抜くための代替調達ルートの確保など、経営戦略の構造改革が急務と言えます。
詳しくは「東京商工リサーチ」の公式ページまで。 レポート/DXマガジン編集部 戸田





















