急病やけがの現場では、受診歴や薬剤情報を即時に把握できるかが搬送や処置の迅速化に直結します。マイナ保険証を活用するマイナ救急は、救急隊員が専用端末で医療情報を確認し、円滑な搬送先の選定や適切な救急処置につなげる取り組みです。本人や家族が情報を伝えられない状況でも、過去の受診歴や薬剤情報を確認できます。119番通報の段階で指令員がマイナ保険証の準備を依頼し、現場では同意を確認した上でカードを読み取ります。意識不明で同意取得が困難な場合は、生命や身体の保護が必要な時に限り同意なしで閲覧される場合があります。本人確認は顔写真照合で行われ、暗証番号は原則不要です。
マイナ救急は、令和7年度に全国の全消防本部と全救急隊で実証事業を実施しました。令和8年度からは消防本部主体の運用となり、712消防本部、5,417隊で実施されます。情報閲覧は専用カードリーダーとタブレットで行われ、受診歴や薬剤情報を搬送先の選定や救急車内での処置に活用します。閲覧した情報は端末に記録されず、税や年金など救急に関係のない情報は参照できません。過去の医療情報の閲覧履歴は後からマイナポータルで確認可能です。これまでの運用では、家族が動転して情報が得にくい場面でも病歴や薬剤情報の収集に役立ったという報告があります。会話が困難な傷病者でも、負担なく情報確認ができた点が評価されています。
メリットとして、傷病者や家族の負担軽減、救急隊による正確な情報把握、搬送先の受入れ準備の前倒しが挙げられます。具体的には、心肺停止の60代男性で病歴と薬剤情報を把握し早期手術につながった事例、意思疎通困難な70代男性で薬剤情報から消化管出血を疑い適切な医療機関へ搬送した事例、自宅で吐血した50代男性で手術歴から食道静脈瘤の既往を推測し早期治療に結び付いた事例、外出先で意識障害の60代男性で糖尿病の既往を確認してブドウ糖投与につなげた事例が示されています。いずれも、情報把握が処置の迅速化や救命に寄与した内容です。こうした結果は、平時からの準備の重要性を裏づけています。
令和8年4月からは、マイナ保険証を搭載したスマートフォンでもマイナ救急の利用が可能になりました。流れはカードと同様ですが、スマートフォンは本人の生体認証または暗証番号の入力が必要です。意識不明などで本人操作ができない場合は利用できないため、カードの携行が引き続き有効です。マイナ救急を利用するには、マイナンバーカードの取得とマイナ保険証としての利用登録が前提となります。外出時はできる限りカードを持ち歩きましょう。救急隊が参照できる主な情報は、過去5年分の受診歴、薬剤情報、手術情報、診療情報、特定健診の情報、過去100日分の電子処方箋情報です。もしもの時に確実な情報連携を実現するため、登録の早期完了と日常的な携行が重要です。





















