日本オムニチャネル協会の活動をサポートする役割を担う「フェロー」。各方面の専門家が集まり様々な活動に取り組みます。今回はそんなフェローの1人で、株式会社フェリシモ 新事業開発本部にて副本部長として活躍する市橋邦弘氏に話を聞きました。1995年の入社以来、30年以上同じ会社で働きながら、インターネット通販、システム開発、新規事業、物流と、新たな領域へ挑戦してきた市橋氏。一つの会社にいながら、なぜ変化し続けられたのか。その歩みから、変革を生み出す人と組織のあり方、これからの挑戦に迫ります。
インターネット黎明期、「わからない」から始まった挑戦
――市橋さんはこれまでどのような歩みだったのでしょうか。
市橋: 1995年に新卒でフェリシモへ入社しました。フェリシモは、ファッションや生活雑貨などのオリジナル商品を企画し、お客様にお届けしている会社です。当時は紙のカタログをお客様に届け、電話やはがき、FAXなどで注文いただく通信販売が中心でした。
ちょうどWindows 95が発売され、インターネットへの期待が高まり始めた頃です。フェリシモでもインターネット通販に取り組むことになり、私はホームページの立ち上げに携わりました。
――インターネット自体がまだ新しい中、社内で新たな仕組みを取り入れることへの戸惑いや課題はなかったのでしょうか。
市橋: そもそも「インターネットとは何か」「どうやって接続するのか」というところから、社内で勉強会を開いていた時代です。最初はHTMLを一行ずつ書いてホームページを作り、メールで届いた注文を印刷してコールセンターへFAXし、オペレーターが社内システムへ入力していました。
ところが利用者が増えると、それまでの仕組みでは対応できなくなります。例えば、Webで注文したお客様から問い合わせがあっても、注文情報がまだ社内システムに反映されておらず、コールセンターでは対応できないといった問題も出てきました。
「だったらWebと社内システムをつなげよう。」「アクセスが集中してホームページが落ちるなら、サーバーを増強しよう。」と、目の前で起きる問題に対応していく中で、少しずつ会社の仕組みも変えていきました。
試行錯誤の先に見つけた、 自社の強みを生かす新規事業
――その後、市橋さんは新規事業へと仕事を広げていますが、きっかけは何でしたか。
市橋: 会社として新規事業に取り組むことになり、代表から声をかけてもらったことがきっかけで担当になりました。
私自身、新しいことをするのが好きな性分なので、性に合っていたんだと思います。前例がなければ答えもない。そういう仕事の方が、私にとっては気が楽なんですよね。
――フェリシモには、そうした新しいことに挑戦できる環境もあったのでしょうか。
市橋: そうですね。代表自身が常に新しいことを考えている人で、我々がついていくのが大変なくらい、次々と新しいことに挑戦しようとします。
社内には新規事業を提案できる制度もありました。また、新規事業に取り組んでいた頃には、会社がMBAレベルの学びの機会を設けてくれて、マーケティングやファイナンス、組織、人材など、事業づくりに必要なことを学びました。
――実際に、新規事業をどのように形にしていったのでしょうか。
市橋: 最初の3年くらいは、なかなかうまくいきませんでした。
例えば、商品の製造過程で生まれる廃材・端材やデッドストックを販売するECサイトを作りました。商品は売れても、廃材・端材であるため、同じものを安定して仕入れることができません。売上を伸ばすために、わざわざ廃材を作ってしまったら本末転倒です。
そうした経験を重ねる中で、フェリシモが持っているアセットを生かして事業をつくった方がいいのではないかと考えるようになりました。そこで目を向けたのが物流です。取引先の商品もフェリシモの物流センターで預かり、一緒に配送すれば、お互いにメリットがあるのではないかと考えました。
ただ、私は物流のことを深く知らなかったので、毎日のように物流センターへ行って朝礼に参加し、一から学びました。そうして始めた共同配送事業は、その後も毎年成長を続けていきました。

――新規事業づくりで大切にしていることはありますか。
市橋: フェリシモでは「事業性」「独創性」「社会性」の3つを大切にしています。
きちんと事業として成立すること、オリジナリティがあること、そして社会にとって良いこと。この3つが重なるところで事業をつくるという考え方です。
単に利益が出ればいいわけではないですし、社会にとって良いことでも、事業として続かなければ意味がありません。この3つを成立させることを大切にしています。
――現在、AIがさまざまな変革を生み出しています。AIが広がる中で、市橋さんは何が大切になると考えていますか。
市橋: フェリシモには「知性・品性・感性」という価値基準があります。
AIによって「知性」は大きく広げられるでしょう。一方で、「品性」と「感性」は、人間だからこそ大切にできる部分だと思っています。AIはいろいろなことができるからこそ、それを良い方向に使うためにも、品性や感性がより重要になってくると考えています。
30年の挑戦は、会社の中から外へ
――30年以上、フェリシモの中で新しい領域に挑戦してきた市橋さんですが、これからはどのようなことに挑戦したいですか。
市橋: これからは、社外の方々とも新しい事業をつくっていきたいと考えています。
自分自身の可能性を広げたいですし、それが巡り巡ってフェリシモの可能性を広げることにもつながればいいですね。
――そうした中で、日本オムニチャネル協会にもフェローとして参画いただいていますが、どのような場だと感じていますか。
市橋: 企業同士が横につながれる場所は、あるようで意外と少ないものです。
展示会では出展企業とはつながれても、参加している企業同士が出会って、「一緒に何かやりましょう」となる機会はそれほど多くありません。
日本オムニチャネル協会には、業種も立場も異なる人が集まっています。そこで出会って話をするだけではなく、その先で実際に何かを一緒につくるところまで発展させられたら面白いと感じています。
関連リンク
日本オムニチャネル協会
https://omniassociation.com/





















