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コラム

50代、「外で通用する自分」はいるだろうか?副業とプロボノが教えてくれる“自分の現在地”の確かめ方

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「社外で自分の力を試してみたい」「これまでの経験を別の形で活かしたい」そんな思いを抱く50代が増えています。「副業」や「プロボノ」といった、「今の仕事を辞めずに」“社外で働く”選択肢が広がる中、自分のスキルやキャリアを社会の中でどう活かすかは、セカンドキャリアを築くうえで大きなテーマです。前回は、一歩を踏み出した先に「具体的に見えてくるもの」に焦点を当てました。今回はその実践例として注目される「副業」と「プロボノ」を取り上げます。両者の違いや共通点、始める前に知っておきたいポイントを通じて、“社外で自分の力を試す”ことから見える50代キャリアの可能性を探っていきます。【会社員から社会人へ!50代からのキャリア実践ガイド #7】

“社外で働く”選択肢への関心が高まる背景

ここ数年、「副業」や「プロボノ*」に関心を持つ人が増えています。エン・ジャパンの2024年調査によると、「副業やプロボノに興味がある」と回答した人は75%。そのうち副業希望が67%、プロボノ希望が45%を占めました(エン・ジャパン調査, 2024)。どちらも“社外で働く”という点では共通していますが、その内容や得られる経験は大きく異なります。これまで本連載では、セカンドキャリアを考える上での「動き出すこと」の意義と重要性をお伝えしてきました。「副業」「プロボノ」は、会社を辞めずに挑戦できる身近な選択肢ですが、それぞれに特徴と違いがあります。今回は活動を始める前に押さえておきたい、2つの働き方のポイントを整理します。

*プロボノ(Pro bono)
ラテン語の「Pro bono publico(公共善のために)」が語源で、ビジネスパーソンが自らの専門知識やスキルを活かし、社会課題の解決や非営利活動を支援する無償の社会貢献活動を指します。

「社外で自分の力を試す」ことで見える、自分の現在地

副業もプロボノも、「いつもの職場」以外の環境で自分のスキルや経験を試す機会です。こうした機会が一般化したのは、実はごく最近のこと。かつて副業といえば、就業後にコンビニなどで働く「アルバイト」のイメージが強かったのではないでしょうか。2018年の副業解禁をきっかけに制度やサービスが整い、今では幅広く認知されるようになりました。特に長く同じ組織で働いてきた人ほど、「社外で自分がどこまで通用するのか」を試してみたいというニーズが高まっています。

しかし、厚生労働省所管の労働政策研究・研修機構(JILPT)の2024年調査によると、日本の就業者のうち実際に副業をしている人はわずか6.0%。「興味がある」「やってみたい」という声に比べ、実際に「副業をやっている」の間にはまだ大きなギャップがあります。

副業で成果を意識しすぎると陥る“短期志向”の罠

副業は有償であるため、当然ながら成果が求められます。「報酬があるからこそやる気が出る」という方も多いでしょう。ただし、対価に見合う成果を意識するあまり、「確実に成果を出せる領域」でしか挑戦できなくなることがあります。たとえば、長年BtoBマーケティングを担当してきた方が「BtoCマーケティングにも挑戦したい」と思っても、すぐに副業として実現するのは難しいかもしれません。依頼側から見れば、「経験豊富な他の候補者ではなく、あなたに依頼する理由」を示す必要があるからです。

もう一つの落とし穴は、短期的な成果を重視しすぎることです。成果を急ぐあまり、相手の期待に応えることに集中しすぎて、信頼関係の構築や中長期的な視点が後回しになるケースもあります。その結果、関係が長続きせず、せっかくの機会が途切れてしまうことも少なくありません。

実は副業こそ、「短期の成果」と「中長期の関係づくり」の両立が重要です。一つの案件で終わらせず、次につながる関係を意識して取り組むことが、キャリアの広がりを生む第一歩になります。

プロボノは「試す」ことが許される実験の場

一方、プロボノは無償の社会貢献活動であるため、より自由度の高いチャレンジが可能です。副業では難しい「BtoBの経験を活かしてBtoCマーケティングに挑戦する」といった新しい試みも現実的になります。また、農業、教育、環境保全など全く経験はないけれど、興味のある分野に関わるきっかけとしても活用できます。現在の仕事では得られない体験を通じて、新しい関心や価値観に出会える可能性があります。

副業が「できること(Can)を活かす」場だとすれば、プロボノは「やりたいこと(Will)を育てる」場。
どちらも社外での実践機会ではありますが、活用の特徴が異なるのです。

“隣接領域”へのチャレンジはプロボノから

副業とプロボノはどちらかを選ぶものではありません。まずプロボノで試し、経験を積んでから副業へ移行する人もいれば、自信のある分野は副業で、未経験の分野はプロボノで挑戦するという使い分けもあります。自分の今後に合ったスタイルを探ってみる価値があります。また、受け入れ側の企業や団体にとっても、副業やプロボノの受け入れはまだ新しい試みです。プロボノは無償である分、双方にとって失敗や試行錯誤が許されやすく、「いつもと違う挑戦」をしやすい環境といえます。

キャリアの“外延”を広げるという発想

副業もプロボノも、キャリアを「変える」ものではなく、「広げる」ものです。自分の専門性や意欲を別の環境に持ち出すことで、新たな価値や活かし方に気づく。それが50代にとっての「キャリアの外延を広げる」ことにつながります。大切なのは、「今の自分にどんな挑戦が必要か」を見極めること。確実にできることを磨くのか、やってみたいことを試すのか。どちらの一歩も、次のキャリアを動かすための大切なスタートラインになります。

日本オムニチャネル協会のセカンドライフアカデミー、次回第4回は副業の実践者が登壇!会員以外にも開放していますので、ぜひご活用ください。

日本オムニチャネル協会セカンドライフアカデミー:https://omniassociation.com/activity/academy/secondlife

筆者プロフィール

大桃綾子
Dialogue for Everyone株式会社 代表取締役
1981年生まれ、新潟出身。三井化学にて人事・事業企画に約10年従事。トリドールホールディングスを経て、2020年創業、40代50代に特化したキャリア自律・越境学習プログラムを展開。 地方企業と都市部人材の副業マッチングサービスJOINS取締役、新潟県産業ビジョン2030委員、広島県呉市中小企業・小規模企業振興会議ワーキンググループ委員などを務める。プライベートでは2児の母。

日本オムニチャネル協会
https://omniassociation.com/

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