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インタビュー

顧客起点で考えるマーケティング、事例や手法を交えた具体策を多数紹介/プリズマティクスセミナーレポート

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戦略的なOMOを実現するプラットフォーム「prismatix」を提供するプリズマティクスは2022年4月14日、クラスメソッドと共催セミナーを開催しました。テーマは「顧客とつながる時代の『ビジネスモデル変革の戦略と実務』」。マーケティング関連の書籍出版記念対談のほか、マーケティング施策を展開する企業の事例、日本オムニチャネル協会リーダーによる討論会などを実施しました。小売業のマーケティングやDX推進担当者向けに、顧客接点の設計方法やデジタル化の進め方などを紹介しました。

「顧客とつながる」を前提にしたデジタルシフトを加速せよ

 セミナーでは最新本出版記念対談と題し、顧客時間 共同CEO/取締役 オイシックス・ラ・大地 COCOの奥谷孝司氏と顧客時間 共同CEO/代表取締役の岩井琢磨氏が登壇。両名が著者の書籍「マーケティングの新しい基本 顧客とつながる時代の4P×エンゲージメント」の内容に沿い、企業のデジタルシフトのポイントや具体的な事例を紹介しました。
 岩井氏は冒頭、コロナを機にデジタルイノベーションが加速したことに言及します。「イノベーションは一般的に、開始から普及、定着まで40年かかると言われる。デジタルイノベーションの場合、インターネットが登場し出した2000年に開始したと考えると、普及、定着するのは2040年ごろだ。今はちょうどその半分でターニングポイント。企業はこれからの20年をどう戦うかを考えることが大切だ」(岩井氏)と言います。
写真:顧客時間 共同CEO/取締役 オイシックス・ラ・...

写真:顧客時間 共同CEO/取締役 オイシックス・ラ・大地 COCO 奥谷孝司氏(写真右)と、顧客時間 共同CEO/代表取締役 岩井琢磨氏

 特にここ数年、コロナの影響により私たちの暮らしが一気にデジタルシフトし、企業も追随するようにデジタル化に舵を切りつつあると言います。その内訳を奥谷氏は、「私たちの暮らしがデジタルシフトしたことで、顧客の価値もシフトした。続けて競合もシフトするという変遷をたどった。企業のデジタル化はこのシフトに追随する。暮らしがシフトしたことで企業側はチャネルがシフトした(OMO)。顧客価値がシフトしたことでビジネスモデルがシフトした(D2C)。競合がシフトしたことで事業システムがシフトした(DX)」と分析。さらに、「デジタルの活用により顧客と常につながることができるようになった今、企業はOMOやD2C、DXに取り組んで顧客とつながる状態を作り出すことが不可欠だ」(奥谷氏)と指摘します。
図1:デジタルを前提としたシフトの変遷

図1:デジタルを前提としたシフトの変遷

 では、暮らしがデジタルシフトしたときのチャネルシフト(OMO)とはどんなケースを言うのか。セミナーではOMOの例として、米アマゾン傘下のホールフーズ・マーケットがオンライン専門のダークストアに転換したケースや、スポーツ衣料を取り扱うlululemonがスマートフォンを使って顧客とつながる仕組みを用意したケースを紹介します。「顧客とリアルな接点が制限されることを前提に、データをどう活用するかを模索する企業がチャネルシフトを進めた。コロナを問わず、データを活用する準備を進めていた企業のチャネルシフトが一気に加速した」(奥谷氏)と言います。国内でもニトリの店舗受け取りサービスや、カインズの受け取り専用ロッカー設置の事例を紹介。「オンラインに切り替えることが必ずしもチャネルシフトになるとは限らない。ニトリやカインズは店舗での体験価値を最大限生かしたチャネルシフトを展開する好例だ」(奥谷氏)と、リアルな体験の場を作り出すことがOMOには必要だと続けます。
 企業のチャネルシフトが進めば、顧客は新たなチャネルを利用することに価値を求め始めます。そこで企業は今度、ビジネスモデルをシフト(D2C)する必要性に迫られます。では、企業がビジネスモデルをシフトするときに大切なポイントは何か。奥谷氏は、「顧客とつながり続ける価値を可視化することに目を向けるべきだ」と強調します。つながる価値は何かを考え、その価値を創出するための体験を設計すべきだと言います。さらにその体験を生み出すモノやサービスを設計するというアプローチが必要だと指摘します。「モノやサービスありきで体験やつながる価値を考えるべきではない。最初に考えるのは、顧客とつながり続けるための価値だ。これをトップダウンにモノやサービスを設計するのが望ましい」(奥谷氏)と言います。モノやサービスの機能を価値として訴求するだけでは差異化要因になりにくく、体験価値、ひいては顧客とつながる価値を明確に示すことが強い差異化要因を生むと指摘します。
 具体的な事例として米Pelotonのビジネスモデルシフトを紹介します。同社はスマートバイクを使ったエクササイズサービスを提供する会社。スマートバイクに設置するモニタ越しにインストラクターの指導を受けられるサービスを提供する一方、フィットネスウエアを手掛ける事業も展開します。同社の顧客とつながり続ける価値について岩井氏は、「多様性のあるスターインストラクターを豊富に揃える点が強みだ。米国で同社のインストラクターはアイドルのような人気を誇る。同社ではインストラクターに高額な年俸を提示し、最初から顧客とつながり続けるための手段として人(インストラクター)に投資している」と指摘します。
 Pelotonのビジネスモデルについて奥谷氏は、「Pelotonはリアルのジム施設などを持たない。デジタルを活用し、顧客のいる場所(自宅など)にアプローチしたのが特異な点だ。さらに顧客の運動データなどを使って顧客の理解を深められるのも大きい。これにより、顧客に最適なフィットネスプログラムを提供できる。こうして顧客とつながり続けるビジネスモデルを確立した」と分析します。奥谷氏はPelotonのビジネスモデルを「Product as a Service(PaaS)」と呼び、プロダクトだけではなくサービスを付与するビジネスモデルにシフトすることの必要性を説きます。
 企業のビジネスモデルが変われば、競合の在り方も変わります。引いては企業の戦略も含めた事業システムシフト(DX)が求められるようになります。セミナーではDXの事例として前出のlululemonを紹介します。同社は衣料品を扱う小売事業を展開する一方、等身大の鏡型デバイスを使ったフィットネスサービスを提供するMirrorを買収。「鏡型デバイスという新たな顧客接点を作り出すとともに、サブスクリプション型のサービスを提供することで継続的に課金するビジネスモデルを手に入れたのが強みだ」(奥谷氏)と同社のDX戦略を分析します。
 なお、事業システムのシフトでは、事業の目的や目標、組織などの見直しも図らなければなりません。セミナーではDXを進める企業に対し、確認すべき9つの問いも提言しました。顧客とつながる価値を検討する上でも、これらを定義する必要性を訴求しました。
問1:デジタル社会における自社の「事業目的」とは何か
問2:デジタル社会における自社の「事業目標」とは何か
問3:その事業目標を達成するためにどのような「顧客戦略」が必要か
問4:その顧客が自社とつながり続けたいと思う「顧客価値」は何か
問5:その顧客価値を実現するためにどのような「顧客接点」が必要か
問6:その顧客接点を通して、どのような「顧客提案」が必要か
問7:その顧客提案を行うためにどのような「顧客理解」の仕組みが必要か
問8:これらの「事業成果」を、どのような指標で測るか
問9:これらを実現し運用するためにはどのような「事業組織」が必要か

(出典:奥谷孝司・岩井琢磨「デジタル事業システム」)

一次データ活用でユーザーの心理を読み取る

 セミナーでは、書籍で触れているヤマップの事例も紹介。ヤマップ コミュニケーションデザインマネージャーの小野寺洋氏が登壇し、「登山地図アプリYAMAPの『ユーザー起点行動マーケティング』の真髄」というテーマで自社の取り組みを紹介しました。
 同社が提供する「YAMAP」は登山地図アプリ。電話の届かない山の中でもGPSを使って現在地を特定するのが特徴で、国内外2万1000座以上の登山地図を参照できるほか、自身の登山記録を残す機能などを備えます。2022年4月時点のダウンロード数は300万件。国内登山人口(650万人)の約4割に相当するといいます。同社では有料版アプリを用意するほか、登山保険を扱ったり登山グッズを販売するECを展開したりすることで収益化を図ります。
写真:ヤマップ コミュニケーションデザインマネージャー...

写真:ヤマップ コミュニケーションデザインマネージャー 小野寺洋氏

 そんな同社が目指すのは、「タイムリーな行動マーケティング」(小野寺氏)です。ユーザーの行動や行動変容をいち早く把握し、ユーザーに応じたアクションの迅速な展開に主眼を置きます。とりわけ小野寺氏は、ユーザーの一次データを分析することの重要性を指摘します。「当社は300万ダウンロードユーザーの行動を把握できるのが強み。そこにはユーザーの心理を探るヒントが隠れている。最新のデータ、最新のユーザー行動に応じて施策を速やかに変えられるようにするのが、当社が目指すマーケティングの姿だ。これまでのように属性情報を分析するだけではユーザーの心理まで探れない」(小野寺氏)と指摘します。データから大きな動きや兆候を見つけることに加え、ユーザーを心理的側面から分析することが重要だと説明します。
 では一次データをどう活用するのか。例えば新型コロナウイルス感染症のまん延を機に、同社は一次データから「低山人気」や「山小屋の人数制限」といった情報をいち早く把握。この情報をもとに、ECで日帰り登山者などを想定した小型ザックの仕入れ数を増やすといったアクションを取りました。その結果、小型ザックを予定より5倍も多く販売できたと言います。
 ユーザーの導線把握も必要だと小野寺氏は続けます。ユーザーに違和感を与えないタイミングで、適切な情報を届けることにこだわります。YAMAPでは登山保険の案内通知を利用者に届ける仕組みを設けていますが、登山地図をダウンロードした直後に登山保険を案内することで加入者が急増したと言います。「登山地図をダウンロードするという行動の意味を考えた結果、ダウンロードした人は近いうちに登山するという仮説を立てられた。この仮説をもとに、登山するであろう人に適切なタイミングで登山保険を案内するアクションを打つことができた。行動の真意を考え、突き詰めることがお客様にも感謝され、利益にも直結する」(小野寺氏)と訴求しました。

CXを最大化する手段としてDXを活用する

 続くセッションでは、丸亀製麺 執行役員CMO 兼 トリドールホールディングス マーケティング部 部長の南雲克明氏が登壇。「逆張りで強みを磨く!『食の感動体験で顧客エンゲージメントを向上』丸亀製麺の革新」と題し、丸亀製麺の取り組みを紹介しました。
 丸亀製麺は2021年度時点で1716店舗をグローバル展開するうどん専門店。そのうち海外店は625店を数え、2027年度までに5500店舗のグローバル展開を見据えます。
写真:丸亀製麺 執行役員CMO 兼 トリドールホールデ...

写真:丸亀製麺 執行役員CMO 兼 トリドールホールディングス マーケティング部 部長南雲克明氏

 同社が進めるマーケティング戦略について南雲氏は、「持続的な成長のため、選ばれる確率を高め続ける戦略を打ち出す。そのためには消費者の頭の中とCX(顧客体験価値)を制することが欠かせない」と強調します。DXを進めることでCXを最大化し、パーパスやビジョンの実現、成果達成に結びつけることを目指します。同社はこの考え方を「DX for CX」と呼び、DXを事業システム変革の手段、かつ消費者から選ばれるCX実現のための手段と位置付けます。利用者のLTV(ライフタイムバリュー)を高めるためにDXをどう活用するかといったテーマに向き合い、課題解決に取り組みます。  では同社が考えるCXとは何か。南雲氏は、「当社の一番大事な提供価値は『手づくり・できたて』に他ならない。“打ち立て”や“生”のうどんといった魅力を引き出すことがCX最大化につながる。利用者のお腹だけではなく心も満たすことが持続的な成長には不可欠だ」と強調します。  そのためにはCXだけでなく、店舗で働くスタッフの体験(EX)や店舗そのものの体験(SX)にも目を向けなければならないと南雲氏は続けます。「顧客の体験価値最大化は、店舗やそこで働くスタッフの体験により左右する。CX、EX、SXの3軸でDXをどう進めるかといった視点の重要性がさらに増す」(南雲氏)と言います。同社では顧客やスタッフの推奨度などを可視化するKPIを設定し、3軸からの体験価値向上を明確な指標に基づき進めていく構想を検討しています。さらに南雲氏は今後について、「店舗が感動体験を生む舞台になることを目指す。来店者が『いつもより美味しかった』などと思える『おせっかい戦略』を打ち出し、体験価値のさらなる向上を追求したい」とまとめました。

顧客体験向上を前提とした施策の検討を

 最後のセッションでは、日本オムニチャネル協会の分科会リーダー3者が「オムニチャネルでつながる時代の顧客体験」というテーマで討論しました。同協会は小売事業者のオムニチャネルやDX推進を支援する団体で、現在は小売事業者やIT企業など、140社215名が参加。分科会活動を通じてオムニチャネルやDXの課題解決に取り組みます。
写真:日本オムニチャネル協会 分科会リーダー 郡司昇氏...

写真:日本オムニチャネル協会 分科会リーダー 郡司昇氏(写真左)、同リーダー 亀卦川篤氏(写真中央)、同リーダー 渡部弘毅氏

 そんな協会が考える「オムニチャネル」とは何か。分科会リーダーの郡司昇氏は、言葉の定義について「顧客接点を創出するといった従来のオムニチャネルの定義は当てはまらなくなりつつある。当協会では、顧客の体験価値を向上する手段と位置付ける。さらに、そのためには在庫などを緻密に把握するサプライチェーン最適化も求められる。顧客の体験価値を高める店舗スタッフの働き方や管理体制も見直さなければならない。現在の時勢に合うオムニチャネルは、CX、SCM、EXそれぞれを向上させることが欠かせない」と指摘します。なお、協会はCX、SCM、EXの各部会を用意。協会会員同士がそれぞれのテーマに沿った議論を深められるようにしています。
 セッションでは「アフターコロナのOMO顧客体験。成功例と惜しい例」という具体的なテーマを用意。マスクを着用した顧客の声を聞き取りやすくするため、レジ前にマイクとスピーカーを設置する店舗を例示し、この施策の是非を討論しました。
 分科会リーダーの亀卦川篤氏は、「利便性という面では有効な施策。ただし、エンゲージメントとセットで考えるべき。顧客やレジスタッフはマイクに向かって話さなければならない。こうした行動がエンゲージメント向上につながるかも含めて検討する必要がある」と指摘します。同じく分科会リーダーの渡部弘毅氏も、「一時的な対策として効果を見込めるが、本質的な対策としては疑問が残る。別の解決策を検討する余地があるはず」と亀卦川氏の考えに同意します。
 一方、郡司氏は、声を聞きやすくするための仕組みにとどまらない応用策を検討すべきと指摘します。「顧客やレジスタッフが話した内容をテキストマイニングすれば、顧客が何を思っているのか、レジスタッフの接客は適切だったのかを探れる。せっかく設置するなら、別の目的で活用する選択肢も検討するのが望ましい」と続けます。亀卦川氏や渡部氏も、顧客とのタッチポイントのログを収集することが重要だと述べ、体験価値創出に結びつけて考えるべきと強調しました。
 有人のインフォメーションセンターに代わるAIサイネージについても討論しました。亀卦川氏は、「対面での接客が難しい中、AIサイネージの役割は大きい」と評価する一方で、「店舗全体の顧客体験を考慮した施策であるかを検討すべきだ。来店者の問い合わせ対応を無人化するといった部分最適の施策にとどめるべきではない」と指摘します。渡部氏は、「重要なのは来店者の体験が向上しているかどうかだ。もし、AIサイネージの前に長い行列ができたり、不十分な回答しか得られなかったりするなら施策として不十分。有人のインフォメーションセンターを上回る体験を創出できるかを見極めるべき」と続けました。
 「顧客接点はどうつくる?バリューチェーンで考える顧客接点のあり方」というテーマでも討論しました。顧客の育成や創造、需要や市場の創造などに取り組むにあたり、社内のバリューチェーンが連携することの重要性を指摘します。亀卦川氏は、「売場や販促、接客、決済、物流などのあらゆる取り組みが顧客接点につながる。部分的な施策では進化し続ける顧客の期待に応えられない。会社としてさまざまな顧客接点で顧客をどう育成するか、想像するかを考え、全体最適に基づく仕掛けや仕組みづくりを進めるべきだ」と強調します。進化する顧客接点を今一度再設計すべきとの考えを述べました。
 渡部氏はバリューチェーン構築にあたり、短期的な視点と長期的な視点を勘案すべきとの見解を述べます。「さまざまな顧客接点を想定するバリューチェーンでは、顧客と長期的につながるLTVを考慮する一方で、短期的な売上アップにも目を向けなければならない。これらを同時に成し得る施策を1つのバリューチェーンで展開するのは現実的に難しい」(渡部氏)と指摘します。さらに、「マーケティング業界ではコンバージョンレートという言葉を使いがちだが、これは一時的な購入率などを示す指標に過ぎない。コンバージョンレートに一喜一憂するより、ECサイトの導線を見直したり、コンテンツを少しずつ増やしたりし、長期的に顧客体験向上に取り組む方が重要だ」(渡部氏)と続けます。郡司氏も、「昨日よりどれだけ売れた、先月よりどれだけ売上がアップしたといった短期的な視点から脱却すべきだ。そのためには社内改革を進めるしか手はない。自社の都合や視点より、顧客の都合や視点を優先することが何より大切だ」と強調しました。
プリズマティクス株式会社
https://prismatix.jp/
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