DXマガジンと一般社団法人 日本オムニチャネル協会は2026年4月、「イノベーションアカデミー」を開講しました。第1回のテーマは「イノベーションの正体を探る」。AIやDXが急速に浸透する今、企業や個人はどのように変化し、新しい価値を生み出していくべきなのか。世代や業界を越えた対話を通じて、“イノベーションの本質”に迫るセッションとなりました。
登壇したのは、日本オムニチャネル協会会長であり株式会社デジタルシフトウェーブ代表取締役社長の鈴木康弘氏、株式会社YKB 代表取締役の川邉雄司氏、New Commerce Ventures株式会社 代表取締役の大久保光平氏。協会が2026年度から本格始動する「オープンアカデミー」の狙いや、AI時代に必要となる“創造力”と“人間力”について語りました。
AI時代に必要なのは「技術」ではなく“人の変化”

セッション冒頭、鈴木氏は「DXやAIという言葉は広がっているが、本当に変われている企業はどれだけあるのか」と問いかけました。多くの企業がAIやSaaSを導入している一方で、本質的な変革には至っていないケースも少なくありません。鈴木氏は、「イノベーションとは技術ではなく、人の変化である」と指摘。新しいツールを入れるだけではなく、人の意識や行動が変わらなければ、本当の変革は起きないと語りました。
大久保氏も、スタートアップ投資の現場から「優れた技術があるだけでは社会実装にはつながらない」と説明。重要なのは、「その技術をどう社会へ届けるかを考えられる人材やチーム」であると述べました。また鈴木氏は、ソフトバンク時代に孫正義氏へ「なぜアリババへ投資したのか」と質問した際、「ジャック・マーの“目力”を見たからだ」というエピソードも紹介。投資の本質は技術ではなく“人”を見ることにあると語りました。
イノベーションとは「既存の価値基準を壊すこと」

セッションでは、「イノベーションとは何か」というテーマについても議論が行われました。鈴木氏は、「既存の常識を壊し、新しい価値基準を作ることこそイノベーションだ」と説明。過去の成功体験を捨てる勇気の重要性を語りました。大久保氏は、スタートアップの視点から、「比較されない価値軸を作れるか」が重要だと指摘。高機能化競争ではなく、“必要十分”や“新しい顧客価値”を提示できる企業が支持されていると説明しました。さらに鈴木氏は、AI関連展示会を視察した際の印象として、「技術の凄さだけを語る企業」と、「顧客のビジネスがどう変わるかを語る企業」に分かれていたと紹介。「技術説明だけでは改善に留まり、本当の変革にはならない」と述べました。
大企業を縛る「成功体験」と「減点文化」

イノベーションを阻害する要因として挙げられたのが、「成功体験の呪い」「組織の分断」「減点型の評価制度」です。鈴木氏は、「日本企業では失敗しない人が出世しやすい構造になっている」と指摘。一方で欧米では、「大きな失敗経験を持つ経営者ほど評価されるケースもある」と説明しました。また、ヤフー時代の経験を振り返りながら、「企業は大きくなるほど、新しいことを始めるまでに時間がかかるようになる」と語り、組織の硬直化がイノベーションを阻害している現状についても触れました。
協会が目指すのは「越境による化学反応」
今回のイノベーションアカデミーについて鈴木氏は、「異なる価値観や業界、世代が交わることで、新しい発想が生まれる場にしたい」と説明しました。実際、日本オムニチャネル協会には、小売、IT、物流、金融、メーカーなど、さまざまな業界の人材が参加しています。同じテーマを見ても、立場によって視点が大きく異なることが特徴です。
鈴木氏は、シリコンバレー視察でアマゾンの無人店舗を訪れた際のエピソードを紹介。小売関係者は売場を見て、物流関係者はバックヤードを見て、外食関係者は商品を見るなど、「同じ場所でも、人によって見ているものが全く違った」と振り返りました。こうした異なる視点同士が交わることで、新たな気づきや価値創出が生まれるといいます。川邊氏も、「普段の仕事では利害関係の中で動いているが、協会では肩書きを超えて自由に議論できる」と説明。「普段とは異なる環境だからこそ、よりアグレッシブな発想が生まれる」と語りました。
AI時代だからこそ、「体験」と「対話」が重要になる
セッション終盤では、「危機感」「越境」「体験」が、変化を生み出す人に共通する条件として語られました。鈴木氏は、「成功している人ほど、強烈な危機感を持っている」と説明。「今日が明日も続くとは考えていない」と述べました。
また、「AIは便利だが、過去データの集合体でもある。本当に人を変えるのは、自分自身の体験と対話だ」と強調。ネット検索や生成AIだけでは得られない一次情報や現場感覚の重要性を語りました。イノベーションアカデミーは、単なる知識習得の場ではなく、人と人が交わり、違和感や刺激を受けながら新しい価値を生み出す“越境の場”としてスタートしました。AI時代だからこそ、リアルな体験と対話を通じて創造力と人間力を磨く。その思想が色濃く表れた第1回セッションとなりました。
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