AI時代にサイボウズが提供するノーコードの業務アプリ作成クラウド「kintone(キントーン)」がどのような役割を果たしていくのかに迫る連載企画。第2回となる前回は、AIが業務で本当に機能するための鍵となる「コンテキスト(文脈)」に焦点を当て、マニュアルだけでは現場で使い物にならない理由や、企業の実情を理解するAIに必要なデータについて話を聞きました。最終回となる今回は、AI×データ活用の観点から見たkintoneの強みと将来の可能性にフォーカスします。AI時代において、kintoneはどのようなデータ基盤として企業の業務を支えていくのでしょうか。サイボウズ株式会社製品戦略室 兼 エンタープライズ事業本部 テクニカルエバンジェリスト 山下竜氏に話を聞きました。(聞き手:デジタルシフトウェーブ 代表取締役社長 鈴木康弘)
なぜ「不自由なkintone」の方が、AIを賢くできるのか
鈴木:AIが普及し、「SaaS is dead」といった極端な議論も聞かれる中、AI×データ活用の文脈においてkintoneはどのような役割を果たしていくのでしょうか。
山下:AI時代において重要なのは、人とAIが記憶(メモリー)や背景(コンテキスト)を共有することだと考えています。将来、AIネイティブな世界になれば、AIにとって現在のUI(ユーザーインターフェース)は不要になるかもしれません。しかし、人間にとっては依然として「使いやすいUI」が必要です。kintoneは、人とAIがそれぞれ最適なインターフェースを持ちながら、組織の知恵を共有する場として機能していくと考えています。
鈴木:共有される「データ」の質が、AIの精度に大きく影響しそうですね。
山下:おっしゃる通りです。AIに社内データを読み込ませる際に精度を高めるには、検索や解析がしやすい「AIレディ(AI準備完了)」なデータが入力されている必要があります。例えばスプレッドシートの場合、日付を入力する欄に「2月中旬」と書くなど、自由度が高いがゆえに表記揺れが生まれ、AIがデータを正しく理解できなくなることがあります。
鈴木:確かに、自由すぎることがAI活用においては逆に足かせになるわけですね。
山下:一方でkintoneは、アプリを作る際に「日付」や「ドロップダウン」など、入力形式に一定のルールを設けます。利用者はExcelのように自由に入力することはできませんが、この「入力時の制約」こそが、人間が後からデータを整理しなくても、入力された瞬間からAIが活用できる整ったデータ形式を自然に生み出しているのです。

エンタープライズの隙間を埋める価値「安全な中継基地」
鈴木:整理されたデータが自然と蓄積される仕組みがあるのですね。大企業(エンタープライズ)のお客様において、この強みはどのように生かされているのでしょうか。
山下:エンタープライズ企業には、重厚長大な基幹システムが存在する一方で、それ以外の業務はスプレッドシートで管理されていることが多く、システム間に大きな「隙間」が生まれています。基幹システムで開発するほどの規模ではないものの、Excelで管理するには限界がある。そうした領域を埋める役割として、kintoneは非常に相性が良いのです。
鈴木:既存のレガシーシステムをAIと連携させる際にも、その「隙間」を埋める役割が活きてきそうですね。
山下:はい。大企業のレガシーシステムはセキュリティ要件が厳しく、直接AIと接続することが難しいケースも少なくありません。そこで、AIに渡したいデータだけを一度kintoneという「安全な受け皿」に置き、そこからAIと連携させるといった使い方が増えています。
鈴木:重厚な基幹システムと、変化の速いAIの世界を繋ぐ橋渡しの役割ですね。
山下:その通りです。さらにkintoneは、「どの項目のデータを誰に見せるのか」といったアクセス権限の管理を非常に細かく、しかも簡単に設定できます。AI活用においては、「見せてよい情報」と「隠すべき情報」を適切に管理するガバナンスが不可欠です。こうした統制を現場レベルでコントロールできることは、大きなアドバンテージになります。

組織・システム・AIの分断を溶かす「つながるkintone」
鈴木:大企業が抱える悩みの一つに「組織やシステムの分断」がありますが、kintoneが間に入ることで、その境界を越えていけそうですね。
山下:おっしゃる通りです。エンタープライズ企業では、歴史的な背景から部署ごとにデータがサイロ化しがちです。kintoneはデータを出し入れしやすいハブとして、個人とAIの共有知を作るだけでなく、組織間の分断を解消する役割も担えると考えています。
鈴木:今後のAPI展開も含め、繋がりやすさがさらに強化されそうですね。
山下:もともとkintoneは外部サービスと連携しやすいオープンな設計ですが、現在はAPIのバリエーションを非常に速いペースで拡充しています。これまでの「データを操作するAPI」に加え、今後はAI機能に特化したAPIの提供も本格的に進めていく予定です。
鈴木:それは興味深いですね。kintoneのAPIドキュメントを見ると、そのオープンさと拡張性の高さにはいつも驚かされます。ユーザーを自社ツールの中に囲い込むのではなく、「外部の便利なサービスや最新AIとどんどん繋がってください」という思想が感じられます。
山下:ありがとうございます。まさにそこが私たちのこだわりです。一社ですべてを解決しようとするのではなく、エコシステム全体で価値を生み出していく。kintoneがデータの柔軟な「入り口」と「出口」の両方を担うことで、システムや組織の壁を取り払っていきたいと考えています。
鈴木:なるほど。単なる「アプリを作るツール」から、システムや組織、そしてAIとの境界線を溶かすハブへ。AI時代におけるプラットフォームの理想形が見えてきた気がします。データ基盤としての繋がりやすさが強化されれば、エコシステム全体がさらに面白くなりそうですね。最後に、今後のビジョンを教えてください。
山下:これからは、AIにどのようにデータを渡し、どのように人間と協働させるかが問われる時代です。kintoneがデータの入り口と出口を担うことで、人と人、システムとシステム、そしてAIを滑らかに繋ぐ「つながるkintone」を実現していきたいと考えています。
【関連リンク】
kintone 製品サイト
https://kintone.cybozu.co.jp/for-enterprise/





















