労働力不足が深刻化する中、定型作業を自動化するRPAへの関心が高まりつつあります。どんな企業のどんな課題を解決できるのか。RPAツールの導入効果を最大化するには何が必要か。ユーザーから高い評価を受けるRPAツール「Robo-Pat DX(ロボパットDX)」の強みについて、株式会社FCEプロセス&テクノロジー 代表取締役社長 永田純一郎氏に話を聞きました。(聞き手:DXマガジン総編集長 鈴木康弘)
人による制約をロボットで解消する機運高まる
永田:当社はFCE Holdings傘下のグループ会社で、事務作業などの自動化を支援するRPAツール「Robo-Pat DX(ロボパットDX)」を提供しています。
グループとして「チャレンジあふれる未来をつくる」というパーパスを打ち出します。さらにパーパスを実現するためのミッションには、「『人』×『Tech』で人的資本の最大化に貢献する」を掲げます。テクノロジの活用だけにとどまらず、人の成長も後押ししたい。こうした思いのもと、顧客の未来を一緒に描こうというのがグループの目指すべきビジョンです。
鈴木:具体的にどんな事業を展開しているのでしょうか。
永田:グループとして、DX推進を支援する事業と、教育や研修を支援する事業を展開します。グループの中には、世界でもっとも売れたビジネス書と言われる「7つの習慣」を取り扱う出版社もあります。仕事の仕方はもとより、マネジメント方法や戦略立案などの豊富なコンテンツを揃え、企業の教育や研修を支援できるのが強みです。こうした事業に加え、グループの新たな柱としてDX支援に乗り出しています。DX推進と教育/研修の両輪で事業を加速できればと考えます。
鈴木:御社の顧客が抱える課題にはどんな内容が多いですか。相談内容に傾向や特徴があれば教えてください。
永田:ほぼすべての顧客に共有するのは「忙しい」ということ。目の前の仕事に忙殺され、新しいことに取り組めずにいるケースが目立ちます。特に成長中の企業の場合、さまざまな業務が追い付かなくなっています。人の補充も間に合いません。今のスタッフで業務をどうカバーするか。社員1人あたりのパフォーマンスをどう向上させるか。これらに苦心するケースが多いですね。
事業が順調ではない企業ももちろん、生産性や効率性といった課題に直面しています。設備や人員補充に十分なコストを投じられない中、効率性を担保する作業環境をどう構築するかに頭を悩ませています。
鈴木:新型コロナウイルス感染症のまん延により、生産性や効率性がより求められるようになりました。コロナ前後で顧客の課題に変化はありましたか。
永田:コロナという外圧により、従業員の働き方は強制的に変わりました。働く時間や場所を問わない働き方が一気に浸透したのもコロナに起因しますよね。
しかし、こうした状況が新たな問題を顕在化させました。部署によってはテレワークを実施できないケースが現れたのです。例えば、経理や財務部門は社外秘の重要情報を扱うため、これらを社外に持ち出して仕事はできません。自社のセキュリティポリシーに基づき、社外から自社システムにアクセスできないケースもありました。テレワークの実施によって自社の制約が浮き彫りになったケースは珍しくありません。
鈴木:こうした顧客に対し、御社のロボパットDXがマッチするわけですね。
永田:コロナによって顕在化した課題はもちろん、生産性を高めようとする顧客に対し、ロボパットDXは有効です。社内でしか作業できないのであれば、社内での作業をRPAに代行させればいいのです。わずか数分の作業のために出社、というケースにもRPAが有効です。こうした使い方を提案すると、多くの企業がRPAに期待するようになりましたね。
鈴木:顧客に業種や企業規模などの特徴はあるのでしょうか。
永田:業種や企業規模はまったく問いません。一般企業はもちろん、病院や学校などの公的機関、自治体や税理士法人など、さまざまな業種、企業規模の団体で使われています。
鈴木:RPAツールの必要性を認識する企業が増えたことが、導入を後押ししているのでしょうか。
永田:RPAツールは当初、大企業を中心に導入が進みました。しかし現在、企業規模を問わず、導入されるようになりました。PCにインストールして使うデスクトップ型が台頭したことにより、導入の敷居が下がったのが主な要因です。サーバーを構築したり、情報システム部門主導で導入を進めたりする必要がなくなったのです。
さらに、DXの波が押し寄せたことも追い風ですね。DXに取り組もうとする企業の多くが、最初の一歩としてRPA導入を検討するのです。DXによってシステムのクラウド化が進みました。その結果、SaaS同士を連携したいというニーズも増え、こうした仕組みを構築するときにRPAツールが使われるようになったのです。複数のシステムを連携したいというニーズにRPAは相性がいいんです。こうした事例が増え、多くの企業の目に留まるようになったのもRPA導入を底上げしていますね。
業務部門の担当者が使い倒せるノーコードが売り
永田:特徴は柔軟性です。高精度の画像認識技術により、人がPCのモニタを見るように認識し、PCを使って作業する際のマウスやキーボードの操作を代行します。PCを使った定型作業であれば、どんな業務にも適用できる柔軟性が売りですね。
プログラムの知識なしに使えるのも強みです。情報システム部門がロボパットDXを使って作業を自動化するのではなく、業務担当者がロボパットDXを使えるわけです。情報システム部門に依頼して時間をかけるより、速くて正確な自動化ロボットを制作できるのです。
鈴木:いわば“ノーコードRPAツール”ですね。業務を知り尽くした現場がツールを使いこなせるか。ノーコードツールが市民権を得たことで、現場主導のシステム導入が浸透しつつあります。
永田:多くのRPAツールが業務部門自ら導入し、自ら使うことを想定するようになりました。しかし本当に使いこなせるかどうかは、ツールごとに異なります。ノーコードやローコードさえ意識せずに使えるRPAツールがある一方、プログラムの知識が前提となるRPAツールがあります。後者はノーコードとはいえ、プログラムの知識がなければ分からないUIやメニューを使いがちです。「Microsoft Excel」のマクロ機能を使いこなすくらいの知識がなければ戸惑ってしまうRPAツールもあります。プログラムやコードに関する知識なしには使えないRPAツールは意外と多く、習得するのに時間もかかることから導入のハードルは高くなってしまうのです。その点、ロボパットDXはこうした使いにくさを一切排除します。現場がツールを使いこなすことに重点を置くのが、類似の競合RPAツールとは大きく異なる点です。こうした姿勢で成熟度を高め続けてきたのがロボパットDXの一番の強みです。
鈴木:ロボパットDXの主な活用シーンを教えてください。
永田:例えば「難しくはないが、誰かが必ずやらなければならない作業」に向きます。人事や経理などの管理部門が担う作業を自動化するケースも多いですね。例えば、経理部門にとって月末や月初めは忙しい時期。この時期に請求書をダウンロードし、各担当者に請求書を送付するなどの作業にRPAツールが使われます。5分や10分程度で終わる作業でも、工程を細かく分解すると面倒なことが多いもの。ひたすらコピーし続けるなどの作業もあります。こうした単純作業にRPAツールが使われることも珍しくありません。受発注業務や在庫管理業務など、売上に比例して作業量が増える事務作業でも使われています。売上が増えるほど、作業を担う人がボトルネックに陥りやすくなります。ボトルネックを解消しようと増員すればコストも膨らみます。こうした人による作業を、RPAツールを使って自動化する企業は少なくありません。
鈴木:御社でもきっと使っているかと思います。具体的にどのように活用していますか。
永田:当社はロボパットDXを提供する企業であると同時に、ロボパットDXをどこよりも使い倒すヘビーユーザーでもあります。さまざまな業務で使用していますが、例えばロボパットDXのライセンス発行・管理業務でも利用しています。導入企業ごとのライセンス数や契約の更新作業などを自動化するのに使っています。今から4年前、ロボパットDXのライセンス数は現在の4分1程度でした。そのライセンスを2人のスタッフで管理していました。現在は4倍を越えるまでにライセンス数は増えたものの、管理するスタッフは変わらず2人のままです。作業工程を細かく分解し、ロボパットDXに代行できる作業をできる限り移行していったのです。売上が伸びたとき、さまざまな業務が追い付かなったり、人の補充も間に合わなくなったりといった課題を回避した好例ですね。
鈴木:ロボパットDXの導入や運用を支援するサポート体制などがあれば教えてください。
永田:当社では顧客がロボパットDXを使い倒すための支援体制を拡充させています。例えば、ITリテラシーに関係なくロボパットDXを扱えるようになる「ロボパットマスター認定プログラム」を用意します。これは、全5回で構成するオンライン型のトレーニング講座です。プログラムの知識に関係なく、ロボパットDXを使って作業を自動化できるようになるまでをサポートします。ロボパットDXの使い方や活用例などを学べる見放題のeラーニングサービスも提供します。
「Web家庭教師」と呼ぶ個別指導サービスも用意します。Zoomを使ったオンライン型の相談サービスで、利用者はインターネット経由で相談時間を予約しさえすれば、ロボパットDXのエンジニアの指導を個別に受けられます。マンツーマンで指導を受けられることから、周囲を気にせず疑問をぶつけられるのがメリットですね。
ロボパットDXの全社展開を支援するサポートサービスもあります。RPAツールを導入する企業の多くが、効果の出やすい部署からスモールスタートで運用し始めます。一定の効果を見込めた段階で全社展開に移行します。このときの全社展開をサポートするサービスです。具体的には、導入効果を発表する「ロボお披露目会」を実施し、お披露目会の運用ノウハウなどを提供します。「ロボ部」と呼ぶ部活動を社内に立ち上げ、部員同士で使い方を教え合ったり効果を発表し合ったりする取り組みも支援します。経営者や役員を発表会に呼んで活動を盛り上げるためのノウハウを提供しています。
企業内の活動にとどまらず、導入企業による事例発表会も年に2回開催しています。ロボパットDX導入企業が30分ほど、ロボパットDXの活用プロセスなどを赤裸々に語ります。導入企業同士で学ぶ機会を用意し、課題解消や効果最大化を目指せればと考えます。すべての導入企業がロボパットDXを使って成長する。そのための支援体制に余念はありません。
これらすべての支援をワンストップで受けられるのも特徴です。ロボパットDXを利用する企業はライセンス料さえ払えば、これらの支援を追加料金なしで受けられます。
鈴木:DX推進事業と教育/研修事業を2軸で展開するFCEグループならではの強みと言えますね。
永田:ありがとうございます。実は先日、アイティクラウドが運営する法人向けIT製品・サービスのレビューサイト「ITreview」で、ロボパットDXが評価の高かったITツールとして約7300製品中1位になったんです。RPAだけでなく、会計や生産、営業などのすべてのIT製品・サービスの中で、ユーザーの評価がもっとも高いツールに選ばれました。ツールを販売するだけではなく、導入後の運用や効果、全社展開なども含めた支援体制が評価されたと自負します。
鈴木:それはすごい。多くの企業から高い満足度を得られた理由をどう分析しますか。
永田:RPAツールは特定の部署や業務に限らず、さまざまな領域で使えるといった特性を備えます。例えば会計ツールが解決する領域って、経理部門などの一部に限られますよね。RPAツールはその点、利用者が使いこなしさえすれば部門の垣根なくいろいろな業務に適用できます。こうした柔軟性が多くの評価につながったと分析します。
とはいえ、企業の中にはRPAツールを導入したものの、使いこなせず塩漬けにしているケースもあるはずです。すべてのRPAツールが高い評価を得られるわけではありません。ロボパットDXの場合、FCEグループとしての強みである教育や研修といった“人起点”の支援体制を売りにします。こうしたグループの方針や姿勢が、ロボパットDXの高い評価を支えていると考えます。ロボパットDXは市場では決して高い知名度を誇っているとは思いません。そんな中でも1位になれたのは、運用や効果、組織づくりまで含めたワンストップの支援体制があったからこそ。そう考えます。
DXやRPAをポジティブに捉えて第一歩を踏み出せ
永田:業務さえ理解していれば、誰でも直感的に自動化ロボットを作れる。ロボパットDXでこんな未来を徹底的に追及したいと考えます。現場に軸足を置き、どんな機能があると助かるのかを考え抜き、日本の商習慣に対応する機能を拡充していきたいですね。例えば、Excelなどのアプリケーションと連携するための機能を直感的に使えるようにする。こうした利便性に直結する機能強化を図っていきます。プログラムの知識がなくてもデジタルを意識せずとも、その恩恵を受けられる状況を日本に広めたいですね。人によるオペレーションの延長線上にロボパットDXは存在します。グループのミッションで触れている「人」×「Tech」、ロボパットDXはまさにこの結節点でありたいと思います。
鈴木:御社として今後、どんな戦略や事業展開を見据えますか。
永田:日本企業の生産性向上にさらに貢献できればと考えます。とりわけ企業のデータ活用を促進できればうれしいですね。データを分析、活用する必要性が叫ばれて久しいものの、日本企業の取り組みは今なお不十分です。要因の1つがExcelへの依存です。多くの企業がExcelをデータベース代わりに利用しています。大量の情報を集約したExcelを運用する企業は珍しくなく、これが業務の非効率を招いていると考えます。日本企業の「脱Excel」。これを解決するのが当社の役割です。さらに、労働力が減り続ける中、企業の生産性を上げる。RPAツールを提供する当社として、この課題に目を向け、施策を打ち出し続けることが戦略立案の大前提ですね。
鈴木:多くの企業がDXに取り組みたいものの躊躇しています。RPAツールを導入したくても、失敗のリスクを恐れて導入に至りません。こうした企業に向け、新たな一歩を踏み出すためのアドバイスください。
永田:日本には多くの中小企業があるし、老舗と呼ばれる企業も多数あります。こうした企業は生き残り続けているのは、日本ならではの経営文化が根付いているからだと考えます。中でも高度経済成長期を経験した企業は、自由で独創的な戦略を打ち出すことで成長曲線を描き続けてきました。しかし今、日本企業が打ち出す戦略は限られます。「人」というリソースが限られているからです。個人的にはこうした状況はもったいない。そう感じます。RPAツールを使えばこうした制約を解消し、大胆な戦略に打って出ることさえ可能になります。世界の競合に引けを取らない勝負に打って出ることだってできます。
日本企業は今、DXという追い風に乗っています。デジタルを学びたいという社員の意欲も溢れています。DXやRPAに躊躇する企業は、こうした波に乗るべきです。前向きな姿勢でDXやRPAといったトレンドに向き合えば、経営は必ず楽になります。可能性だって無限に広がります。企業の経営者には、そんな思いを持ってほしいですね。
鈴木:DXに取り組もうとすると拒絶したり、否定的に考えたりする経営者って少なくないですよね。こうした人の意識が変われば、日本企業のDXは一気に加速するはずです。
永田:経営者の皆さんとDXについて話をする中で感じるのは、不安感や危機感です。さらに、DXに取り組まなければと構えがちな姿勢を示す人も多くいます。ネガティブに捉えるのではなく、もっとポジティブな姿勢でDXに向き合うほうが良い結果につながると思います。経営者の中には「自分はアナログ人間だから」などと言う人がいますが、こうした人の多くがアナログ好きではなく、デジタルを意図的に遠ざけていると感じます。言い換えると、現状維持にこだわっている人がアナログ人間です。デジタルかアナログかは問題ではなく、現状維持に固執しているのです。こうした人こそ第一歩を踏み出し、現状を打破すべきだと考えます。経営者が踏み出す一歩を支えたい。二歩目、三歩目とさらにその先まで伴走し続けたい。FCEプロセス&テクノロジーはそんな企業でありたいと思います。
鈴木:貴重なご意見、大変勉強になりました。本日はありがとうございました。
永田:こちらこそDXの考え方や企業の取り組み方など、鈴木さんのご指摘が大変勉強になりました。こちらこそありがとうございました。
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