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インタビュー

【特別対談:成井五久実×鈴木康弘】DXの鍵は“人が生み出すストーリー”と“企画力とシステムの掛け算”

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述べ1億PVを誇るメディアプラットフォームの運営やサイト構築CMS「clipkit(クリップキット) 」を提供するスマートメディア。同社はDXの次の一手として、ストーリーコマースを掲げています。今回は起業から1年後の2017年にメディア事業を売却し、売却先のベクトルグループ傘下のスマートメディアで代表取締役を務める成井五久実氏に話を聞きました。(聞き手:DXマガジン総編集長 鈴木康弘)

得意分野の失敗を糧にメディア戦略によるDX支援を展開

鈴木:DXを成功させるためには人が変わる必要がある。そこで最近、「成功=ヒト×DX 」という本を上梓したんです。成井さんの著書「ダメOLの私が起業して1年で3億円手に入れた方法」を拝読しましたが、昭和っぽくて若手に勧めたいと思いました。まず経歴を教えていただけますか? 成井:私の父が起業家で、起業家にずっと興味がありました。そこで上京して東京女子大学に通うかたわら、東京大学の起業サークルに4期生として参加していました。その後、南場智子さんに憧れてDeNAに就職し、ビッターズやモバゲーの「怪盗ロワイヤル」とのタイアップ企画を営業していたんです。  ただ損益計算書(PL)で試算せずに売上を伸ばすことに注力しすぎて大失敗もあったんですよね。とても大きな失敗でしたが、今振り返ると自分の糧になっていますね。  自己実現を目指して、ずっと30歳までに事業を起こすと決めていたので、起業の心得として「人・モノ・金」の補完を学ぶ必要がありました。そこで、当時マザーズに上場したてのPR会社のトレンダーズに転職しました。この転職が、現職のベクトルグループとの縁にもつながっています。  キュレーションメディアバブルが起きていたときに、デジタルのタイアップ広告やメディア広告のセールスを通じてお金の面で自信をつけたので、28歳で起業しました。当時は男性向けキュレーションメディアがなかったことから、JIONを立ち上げた次第です。
写真:スマートメディア 代表取締役 成井五久実氏

写真:スマートメディア 代表取締役 成井五久実氏

鈴木:影響を受けたというお父様は、どのような事業をされていましたか? 成井:父はバブルにのってゴルフ場経営や、観光施設などレジャー施設を手がけていました。母は心理カウンセラーとしてカウンセリングルームを軌道に乗せたので、大学で心理を学んで、母親の稼業を継ごうかなと考えていました。しかし、南場智子さんや東京大学の起業サークルでの出会いを通じて、気持ちが変わったんですね。世の中にないものを価値創造するのは面白い挑戦だと思い、起業家を目指すようになりました。 鈴木:立ち上げたJIONを、1年後に売却する判断はどのようになさったんですか? 成井:キュレーションメディアの信頼性が問われる騒動が起こった際、メディア運営そのものを考えるキッカケになりました。当時はDXのハシリで、「メディア×既存事業」を考える企業がたくさんいらしたんです。そこでメディア戦略を通じて、売上の最大化を目指す企業様を探しました。自己実現を目指す中で、M&Aも含めて可能な限りさまざまな経験をしておきたかったこともあります。 鈴木:人生100年時代なので、マルチステージという発想で生きるのもアリですよね。35歳あたりまで一気に進んで、一段落したら子育てして勉強しながら次に進む、そのようなプランをお持ちだったんですか?
写真:DXマガジン 総編集長 鈴木康弘

写真:DXマガジン 総編集長 鈴木康弘

成井:おっしゃる通りです。女性ならではのプランを念頭に置いて、時間を逆算しながら売却まで進みました。その後、売却先のベクトルグループがM&Aした5社を統合し設立したのがスマートメディアになります。そのためここ3年ほど異なる文化を統合してV字回復させて、ようやく経営が分かって落ち着いたという感じです。 鈴木:10年やると社長業務がどういうものか、よく分かりますよ。ところで、今後はどのような展開を描いていらっしゃるんですか? 成井:大変だった“第1章”がようやく終わったところです。会社が落ち着いて今後を考えると、DXにも通じるんですが、キュレーションメディアが細分化して今のメディアの最小単位は「人」になったんですよね。インフルエンサーの登場など細分化の流れの中で、メディアという軸を変えず柔軟に対応できる方法を提供しようと。そこで企業がメディアを通じたDXに取り組む際の支援ツールとして「clipkit(クリップキット)」を事業ドメインにしました。

システムと人が創るストーリーを掛け合わせる時代に

鈴木:1企業1メディアは正しい姿だと思います。そこにうまく軸となる人が集う形にしたいですね。
成井:そうですね。当社の方向性として、新しいマーケティング手法としてストーリーコマースを掲げると将来性があるかなと。ストーリー経由でモノを買い、サービスを摂取する時代ですので、ストーリーが紡ぐCMSの構築に力を入れています。D2C企業のDXとしてShopify(ショッピファイ)とAPI連携をしたclipkit for ECというCMSでは、コンテンツを通して商品の魅力を伝え、デジタル上で新しいCVRを生み出すことができます。  当社はシステム導入だけでなく、コンテンツの制作も手厚くしているのでアウトソースにも対応できるんです。大手企業のメディアへも、記事を納品させていただいています。そのあたりをセットで極めていきたいので、テクノロジーとコンテンツは両方投資していきますよ。 鈴木:個人としては、どのような目標をお持ちなんですか? 成井:南場智子さんがずっとおっしゃっていた「会社の業績は社会の通信簿だ」という教えが、私に大きな影響を与えています。将来的には、憧れの南場さんの事業規模を目指していきたいんです。  それが私なりの自己実現の在り方かなと。母が心理カウンセラーで、私も心理学を学んでいたことから「自己実現」という言葉の存在感が大きくて、夢として心の中にいつもあります。自分の強みを社会に発揮して、それが社会に受け入れられて業績として反応が返ってきた時が自己実現だと私は思っていて。  私の中で、南場さんの教えと、私の自己実現に対する考えが重なっているので、次は上場企業を作るなどして3000億円企業を目指す挑戦をしていきたいですね。 鈴木:とても大事な発想ですよね。若い頃は勝ち負けだと思っていましたので、今になって私はようやく成井さんの境地です。時間がいっぱいあるので、成井さんなら達成できるんじゃないでしょうか。ところでDXに対して、どういう風に感じてどういう風にすればいいと考えていますか? 成井:メディア運営の視点でお話しすると、モノを広めるためにはストーリーとシステムが必要だという考えです。システムだけではやはり不完全で、そこに改善する人がどうしても必要ですよね。ストーリーコマースにおいては、ストーリーを設計する人が必要となります。人の感性とシステムとの掛け合わせがカギになるでしょうね。 鈴木:なるほど、同感です。DXを私は「企業変革」と訳しています。やはり人間がカギですよね。AIだけでは、未来を予測しきれないと思うんですよ。 成井:そこで当社は「人がメディアになる」ことを前提に、個人のプロフィールを集約できるプラットフォームをリリースする予定です。本当良いと思うモノとコトをつなげる役割にフォーカスするのが、当社の方向性かなと思いますね。 鈴木:若い世代は、DXに取り組まなきゃと分かっているけれども踏み切れない。彼らに向けて、DXに取り組むアドバイスをいただけますか? 成井:私がDXを進める上で大切にしているのは、やはり人と会うことです。新型コロナの感染対策は万全の上で、お目にかかってお話を聞く。  先ほどお話しした「Clipkit for EC」をリリースさせて、サービスを普及させるためには、やはり小売業界の現状を知らなくてはいけないんですよ。  私はこういうテーマを掲げたら、カンファレンスなどで経営者とつながり、B2Cの最前線にいる人からの情報を耳で聞くようにしています。人と会って自分の困ってることを伝えて、参考になる情報を聞いてという方法です。実際に、人に会わないと分からない課題というものもありますしね。 鈴木:おっしゃる意味、よく分かります。結局DXとは、色々な業界や組織を横断的につないで、今まで壁としてあったものを無くしていく。そうすると新しい価値が生まれるので、社会から反応を得られるような面白いことができる、ということですよね。 成井:私はストーリーでモノを売る時代に突入したなと思っています。これだけSDGsやサステナブルという動きが広まると、消費行動も変わらざるをえないですよね。もう大量消費ではなく、消費者にも1個のものを長く使うリテラシーが求められる時代になっています。そうすると、消費者が商品を吟味する材料が必要ですよね。そこにストーリーを紡ぐツールを渡しにいくのが、弊社のDX支援かなと考えています。 鈴木:あと、やったことのないことを恐れないことが大事ですよね。人の機微というのかな、取り引きしたいのに相手にされない苦しい状況でも、一緒にご飯食べたり歌ったりすると、コトが動く場合があるんですよ。  苦しみながらやった仕事は成果が出るんですよね。でも成井さんは、楽しそうですね。 成井:ありがたいことに、「デジタルでコンテンツを作る」が当たり前のことになってきているので。ようやく私の企画力に対して需要が生まれている状況です。 鈴木:成井さんのさまざまな思いがあって今がある。とても興味深くお話を聞けました。本日はありがとうございました。 成井:ありがとうございました。

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