近年、特に発達障害を持つ子どもたちに対する運動支援の重要性が増しています。本記事では、愛知県名古屋市に本社を置く株式会社リィが展開する「Lii sports studio」における最新の取り組み、具体的には2,000種類のWellTech(ウェルテック)コンテンツについて詳しく紹介します。これらのデジタルプログラムは、発達障害を持つ子どもたちの運動意欲を育むために開発されたものです。
WellTechとは、従来のヘルステックが焦点を当てる「体の健康」だけでなく、「心の健康」や「より良い生活」の支援を含む幅広い概念を指します。具体的には、心理的および身体的な健康を統合的に支援することを目指す技術です。発達障害の子どもたちにとって、運動機会を創出し、興味を引くための新しいアプローチとして、LiiはこのWellTechを積極的に取り入れています。Lii sports studioは、未就学児を対象にした運動型児童発達支援施設です。このスタジオは、子どもが「やりたい」「やってみたい」という気持ちを尊重し、それを実現するための支援を行います。特に重要なのは、子どもたちが自身の成功体験を感じられるような環境の提供です。このアプローチによって、運動に対する苦手意識を取り除き、主体的に体を動かす楽しさを体験させることを目的としています。定期的に行われるプログラムには、プロジェクターを活用したデジタルスポーツが導入されており、ゲーム感覚での運動が可能です。例えば、ケンケンやサーキットトレーニングなどがゲーム化されることで、家では感じられない楽しさが生まれています。
株式会社リィでは、これまでデジタルスポーツ支援を通じて運動支援を行ってきましたが、スタジオ数の増加とともに、個別に作成された質の高いコンテンツが社内で適切に共有されていないという課題がありました。これに対処するために、社内プロジェクト「DEA(Digital Ecological Approach)2000」を立ち上げ、子どもたちの年齢や特徴、発達段階に応じた体系的なコンテンツを開発しました。このプロジェクトによって、運動に関する多様なニーズに応えるためのキーワードとして、「強化感覚(視覚、前庭感覚、固有感覚など)」、「年齢」、「レベル」、「テーマ」の4つの条件が設定され、ターゲットに応じた最適なプログラムを提供可能にしています。例えば、発達障害を持つ子どもたちには、視覚的な刺激を活かした運動が効果的です。プロジェクターを介して映し出されたアニメーションを見ながら、動作を真似して踊ったり、ボールを使った運動をしたりすることで、楽しさを提供することが可能です。このような刺激的でインタラクティブな体験が、運動意欲を向上させるのです。
さらに、各プログラムは子どもたちの反応をリアルタイムで記録することができ、必要に応じてコンテンツの調整も行います。これにより、各個人が自分のペースで成長できるよう、最大限のサポートが提供されるのです。Lii sports studioでは、サービス提供開始以来、運動支援に対する利用者の満足度を示す「ネット・プロモーター・スコア(NPS)」が高い評価を得ています。このスコアは、顧客ロイヤリティの指標であり、42.5という数値は、ユーザーからの信頼を証明するものです(Appleのスコアは47)。これは、運動機会を提供することが、発達障害を持つ子どもたちにとって非常に価値のある体験であることを示しています。
株式会社リィが提供するWellTechコンテンツは、発達障害を持つ子どもたちに新たな運動体験を提供するツールとして、今後ますます注目されることでしょう。運動不足が懸念される現代社会において、こうした取り組みは、子どもたちの心身の健康を支える鍵となります。さらに、運動を通じて得られる自己肯定感やコミュニケーション能力の向上も期待でき、多様な支援を行うリィの姿勢に今後も注目です。
レポート/DXマガジン編集部香田