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金融取引の“ミリ秒競争”を支援 NTTグループが香港で低遅延ネットワーク「APN InterLink」を商用展開へ

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NTTグループの通信・ICT子会社であるNTT DOCOMO BUSINESSとNTT Com Asiaは、2025年10月24日付で、香港を拠点に「APN InterLink」サービスを2025年11月1日から商用展開すると発表しました。この新サービスは、次世代ネットワーク構想IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)を支える技術として、光通信に基づく「All-Photonics Network(APN)」を活用し、金融機関が必要とする「超低遅延」「高信頼」通信を実現することを目的としています。

サービスの概要

APN InterLinkは、香港の金融機関を対象に、以下のような機能を備えたサービスです。

  • APN DCLink:NTT Com Asiaの金融データセンター(Financial Data Center)と香港の太和(Tai Po)データセンターをAPNで直結することで、香港取引所(Hong Kong Stock Exchange)付近からのアクセスを含む超低遅延ネットワークを提供。
  • APN DedicatedLink:顧客の拠点やデータセンターを香港内で任意に接続できる専用リンク。これにより、顧客拠点から取引所までのアクセス時間を短縮し、低遅延通信を実現。

さらに、将来的には東京と香港を結ぶ海底ケーブル「Asia Submarine‑cable Express(ASE)」を活用し、日・香港間、さらにはアジア各金融センター間でのネットワーク拡張を目指すことも明らかにしています。

背景と狙い

近年、金融業界ではリアルタイム性や低遅延性が取引競争力を左右する重要な要素となっており、特にアルゴリズム取引や高頻度取引(HFT)では「ミリ秒単位」の遅延削減が利益に直結します。APN InterLinkは、こうしたニーズに応える通信インフラとして位置づけられています。

また、NTTグループが掲げるIOWN構想の一環として、電子伝送から光通信に軸を移し、ソフトウェア統合型ネットワークを展開する動きが進んでおり、APN InterLinkはその「金融向け応用例」という意味合いを持ちます。

期待される効果と市場へのインパクト

金融機関がAPN InterLinkを活用することで、以下のようなメリットが期待されます。

  • 香港を中心としたアジアの金融拠点から、低遅延かつ高信頼な取引環境の確保
  • データセンター間・拠点間の通信を高速かつ安定して実現することで、災害復旧(Disaster Recovery:DR)や事業継続(Business Continuity:BCP)対策の強化
  • アジア域内における金融データのリアルタイム処理・分析・AI活用を支える基盤として、フィンテックの進展を促進

一方で、この種の通信インフラは構築コストや運用コストが高く、導入初期段階では費用対効果やサービス価格の競争力が課題となる可能性があります。また、他の通信キャリアやクラウド事業者、金融ITベンダーとの競争・連携も激化が予想されます。

今後の課題と展望

今後注目すべきポイントとしては、まず、実際に提供される遅延削減効果の数値や導入企業数、サービス価格といった具体的なデータの公表が挙げられます。これらの情報が明らかになることで、サービスの実効性や市場での競争力がより明確になるでしょう。
また、日本国内で展開中の「docomo business APN Plus」との連携や、東京–香港間の海底ケーブルを活用した広域ネットワーク展開の実現にも期待が高まります。これにより、安定した通信基盤をアジア圏全体へと拡大する動きが加速すると考えられます。
さらに、シンガポール、上海、韓国など、アジアの主要金融センターへのサービス拡大も重要な注目点です。地域間の接続性強化が、国際的な金融取引やデータ連携の効率化につながる可能性があります。
そして、単なる通信インフラの提供にとどまらず、AI・データ分析・クラウドサービスといった先端技術との融合によって、金融サービス全体の高度化をどのように実現していくかも、今後の大きな焦点となるでしょう。

「APN InterLink」の商用展開発表は、NTTグループが通信インフラの提供者から、金融・産業向けの高度なサービス基盤へと進化する転換点と言えます。光通信を軸に、低遅延・高信頼のネットワークを金融機関に提供することで、アジアの金融市場における競争力強化を後押しする構えです。今後、このサービスがアジア全域に広がることで、金融ビジネスやフィンテックの構図がどのように変化するか、注目されます。

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