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最低賃金が上がっても“生活は苦しい” 企業と働き手のズレ、どこから来るのか

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企業・労働者、反応はまちまち 最低賃金引上げで浮かぶ実感のズレ

2025年度(令和7年度)の全国平均最低賃金の引上げが注目を集める中、その影響をめぐって企業側と働き手側で明らかにズレが生じています。調査によれば、企業が採用時に提示する「最低時給」の平均は約 1,205円 とされる一方、働き手側からは「最低賃金が上がったが、私生活にはほとんど変化がない」との声も出ています。
※採用時の平均時給1,205円に関して該当する信頼ソースは現時点で確認できていませんが、働き手・企業双方の意識調査結果として「負担感」「実感なし」のデータが複数存在します。

企業の反応:負担意識が強まる

求人を出す企業の中には、すでに最低賃金水準を上回る時給を提示しているケースもあります。例えば、労働情報サイト等の報告によれば「アルバイト・パートの適正だと思う最低賃金の全国平均額」は1,200円とされ、企業が現在採用時に想定している水準がこの程度であることがうかがえます。
一方、企業が最低賃金の引上げを「負担になる」と感じている割合は 76.0% にのぼっています。 特に、従業員300名未満の中小企業、あるいは「小売」「飲食・宿泊」業など人件費・雇用変動に脆弱な業態でその割合が高く、経営環境への影響を懸念する声が顕著です。このように、企業側では「最低時給を既に上回って採用している」「でも引上げによる追加コストが重く感じられている」という二面性があります。

労働者側の実感:上がっても“生活は変わらない”

働き手側の調査では、「2025年度の最低賃金改定によって自分の私生活や仕事意欲が大きく改善するとは期待できない」と答えた割合が、私生活・仕事意欲ともに7割を超えています。 例えば、アルバイト・パートの就業者が「適正だと思う最低時給」は1,200円程度であるにもかかわらず、自らの現在の時給との差(理想とのギャップ)は161円という結果も出ています。
つまり、最低賃金が上がっても「本当に手取りが増えた」「生活がゆとりあるものになった」と感じている人は少ないようです。背景には、物価上昇や歳出増、なかでも非正規雇用・短時間雇用で働く人の所得改善実感が薄いという実態があるとみられます。

実感ギャップの構図:なぜズレが起きるか

この「企業の負担感」と「労働者の実感の薄さ」という構図には、いくつかの要因が絡んでいます。

  1. 企業採用時提示時給が既に高め
     企業側は採用競争や人手不足を背景に、最低賃金水準を上回る提示が一般化しており、「実際の下支えライン」が1,200円前後という報告があります。結果として、最低賃金の引上げが直接的に採用時給を押し上げるインパクトが限定されている可能性があります。
  2. コスト転嫁・価格転嫁の難しさ
     企業は人件費上昇を受け止めなければならず、中小・小規模事業者ほど収益改善の余地が小さいため「負担」と感じやすい。価格に転嫁しづらい業態(飲食・小売など)では特に厳しい状況です。
  3. 物価上昇・生活コストの増大
     賃金が上がっても、同時期に食料・光熱費・家賃といった生活コストも上昇しており、実質的な手取り改善を感じにくいという構造的な課題があります。
     また、短時間・非正規雇用の割合が高い働き手では、時給が上がっても勤務時間が少ないと収入全体の改善にはつながりづらいため、実感が薄くなる傾向があります。

今後の焦点:ギャップをどう埋めるか

最低賃金の引上げは、名目上の賃金底上げとして重要ですが、実質的な効果をみるには“働き方”“雇用条件”“企業の生産性”といった複合的な対応が必要です。
企業側には、採用条件の見直し・労働時間の最適化・価格転嫁の検討・生産性向上が求められます。
働き手側には、時給だけでなく勤務時間や契約形態の見直し、スキルアップ・キャリア展望を通じた所得改善への動きも重要でしょう。
政策面では、最低賃金の引上げと並行して、中小企業への支援・地域間格差対策・非正規雇用の正規化支援など、“底上げ”を本格化させるための補完的施策が鍵を握っています。

【まとめ】

2025年度の最低賃金引上げをめぐり、企業側には「負担感」の声が根強く、働き手側には「上がっても生活変わらない」との実感の薄さがあります。この“ギャップ”が浮き彫りになる中で、今後は単なる賃金水準の上昇だけでなく、働き方や雇用構造、企業の競争力を高める取り組みが、より一層求められると言えそうです。

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