スマートフォン普及とともに拡大したキャッシュレス決済の裏で、小売業の「支払手数料」負担が重くなっています。株式会社帝国データバンクが小売業の財務データを基に試算した結果、売上高に占める支払手数料の平均比率は2024年度に2.04%となり、2014年度の1.41%から45%上昇しました。なかでも飲食店は2014年度の1.54%から2024年度に2.94%へとほぼ倍増しています。決済の利便性や業務効率化の効果が広がる一方、加盟店手数料や各種手数料が継続的コストとして経営に影響を与えています。持続可能なキャッシュレスの実現に向け、手数料負担の適正化が求められています。
小売業の支払手数料は2.04%に上昇 分析対象は約8千社の刈り込み平均
株式会社帝国データバンクは、同社の企業データベースから小売業を抽出し、売上高と販売費および一般管理費のうち「支払手数料」相当の支出がある企業を対象に分析しました。平均値は上下各5%、計10%を除いた刈り込み平均を用いており、2024年度の支払手数料比率は2.04%でした。2014年度は1.41%であり、10年間で約4割上昇しています。2019年度頃までは前年度比の上昇幅は0.1ポイント未満にとどまっていましたが、その後はQRコード決済の導入促進策やポイント還元、非接触ニーズの高まりでキャッシュレス利用が拡大し、2021年度には初めて2%を超えました。支払手数料を計上する企業数も増え、2022年度には1万社を初めて超え、2024年度時点で分析可能な小売企業の約7割に達しました。2025年度は確定が少ない段階ながら、集計可能な約4千社で2.07%と過去最高水準で推移しています。
飲食店で負担が急拡大 少額決済の置き換えやプラットフォーム利用が影響
業態別では飲食店の負担増が際立っています。2014年度の手数料比率は1.54%でしたが、2024年度には2.94%とほぼ倍増しました。QRコード決済が初期費用や手数料の無料キャンペーンで急速に普及した後、近年は手数料が有料化していることが影響しています。客単価が低く少額決済が多い飲食店では、現金中心だった会計が手数料2%から3%のキャッシュレスに置き換わり、負担が増えたとされています。コロナ禍で広がったデリバリープラットフォームの活用もコスト増の要因に挙げられています。飲食料品小売でも決済頻度が高いため、手数料比率は10年前から1.54倍に上昇しました。百貨店や総合スーパーなどを含む各種商品小売は高額決済や自社クレジットカードの利用が多く、業態別で最も高い手数料比率となりました。
アパレルやECモール手数料の重さ 自動車関連は相対的に低水準
織物・衣服・身の回り品小売は高水準が続き、2014年度の2.61%から2024年度は3.90%に上昇しました。キャッシュレス決済手数料に加えて、自社ECを持たない中小企業を中心にECモールの出店手数料や販売代行手数料が、売上確保に不可欠なコストとしてのしかかっています。一方、自動車・自転車小売は2024年度で0.89%と全業態で最も低くなりました。振込や自社ローンによる割賦販売が中心で、決済事業者への支払いが相対的に少ないことが背景にあります。なお、支払手数料には決済代行業者への手数料のほか、出店費用や入出金手数料など多様な費目が含まれるケースがあるため、実態把握は会計項目の内訳確認が前提となります。業態や販売チャネルによって負担構造が異なり、費用の増減を把握するためには年次の比率推移をモニタリングし、コスト源を識別することが重要です。
普及進む一方で持続可能性が課題 手数料負担の適正化がカギ
経済産業省の公表値によると、国内のキャッシュレス決済比率は2025年に58.0%へ達し、2030年には中間目標として65%の達成が掲げられています。全体ではクレジットカードが約8割を占め、PayPayなどのQRコード決済が定着して比率の底上げに寄与しています。利便性の向上や会計業務の効率化などのメリットがある一方、入金サイクルの長期化や手数料の増加で資金繰りが悪化するデメリットも顕在化しています。決済頻度の上昇に伴い、少額決済でのコスト負担が重くなる店舗では現金支払いを希望する声が生じるなど、現場の課題が示されています。キャッシュレスのさらなる普及に向けては、小売事業者の手数料負担を適正化し、バリューチェーン全体で利便性とコストを公平に分配する制度設計が不可欠とされています。費目の見える化や決済手段のポートフォリオ見直し、チャネル別の採算検証といった取り組みが、持続可能なキャッシュレス環境の構築に資するでしょう。
詳しくは「株式会社帝国データバンク」の公式ページまで。レポート/DXマガジン編集部






















