デジタル庁が、政府職員約18万人規模を対象にした生成AI利用環境「源内」の大規模実証を進めています。政府全体でAI活用を推進する「ガバメントAI」構想の一環として進められている取り組みであり、日本の行政DXにおける大きな転換点になる可能性があります。
行政DXは「電子化」から次の段階へ
これまでの自治体DXは、紙の電子化やオンライン申請、システム導入など、“業務をデジタル化する”ことが中心でした。しかし、生成AIの登場によって、行政DXは次の段階へ進み始めています。今起きている変化は、単なるAI導入ではありません。行政そのものが、“AI前提”で再設計され始めているのです。
デジタル庁、「源内」の大規模実証を開始
デジタル庁は2026年度、全府省庁の約18万人の政府職員を対象に、「源内」の大規模実証を開始すると発表しました。「源内」は、政府職員が安全・安心に生成AIを活用できる環境を目指して整備されている基盤であり、法令や官報などの政府共通データセットとの連携も進められています。また、デジタル庁は「源内」のソースコードをオープンソースとして公開しており、地方自治体でも同様の環境を構築できるようにする方針を示しています。ここで重要なのは、「どの生成AIを使うか」という話ではありません。
行政知識そのものがAIと接続され始めている
本質は、“行政知識”や“行政データ”をAIと接続し始めている点にあります。これまで行政業務では、多くの知識やノウハウが職員個人に蓄積されてきました。しかし今後は、法令解釈、制度理解、行政文書、過去事例といった知識そのものが、AI活用を前提に整理されていく可能性があります。つまり、行政DXは「電子化」の段階から、「AI組織化」の段階へ移行し始めているのです。
重要になる「国産AI」「行政データ」「AIガバナンス」
この流れの中で、今後特に重要になるのが、国産AI、行政データ、セキュリティ、AIガバナンスです。行政は、民間企業以上に機密性の高い情報を扱います。そのため、生成AI活用においては、情報漏洩対策や利用ルールの整備、出力内容の正確性、責任所在の明確化などが不可欠になります。また、日本の行政特有の制度や文脈を理解する必要があるため、「行政に最適化されたAI」の重要性も高まっていくとみられます。デジタル庁も、生成AIの調達・利活用ガイドラインを公表しており、AI活用促進とリスク管理を両立する方向性を打ち出しています。
「AIを導入する」から「AIを前提に組織を設計する」へ
こうした動きは、単なる業務効率化の話ではありません。今後、政府や自治体では、AIを前提とした組織設計そのものが求められていく可能性があります。例えば、データが分散している組織ではAIは十分に機能しません。業務フローが属人化していても、AI活用は進みません。つまり、AI時代における行政の競争力は、「高性能なAIを導入しているか」ではなく、「AIが活用できる状態になっているか」で決まり始めているのです。
「AI Readyな政府」が求められる時代へ
企業領域ではすでに、「AI Ready」という考え方が広がり始めています。これは、AIを導入しているだけではなく、データや組織、業務そのものがAI活用前提で整備されている状態を指します。同じことが、今後は政府や自治体にも求められていくのかもしれません。今回の「ガバメントAI」構想は、日本の行政が“AIを使う組織”へ変わるだけではなく、“AI前提の組織”へ変化していく始まりとも言えそうです。
レポート/DXマガジン編集部





















