デジタル給与払いを導入する企業が拡大しています。特に、 PayPay の「PayPay給与受取」の導入が進む一方で、 楽天銀行 などのネット銀行も給与受取サービスを強化しており、“給与DX”が新たなフェーズに入り始めています。デジタル給与払いは、給与の一部または全部を、銀行口座ではなく資金移動業者アカウントで受け取れる制度です。日本では2023年4月の制度解禁以降、厚生労働省が指定した資金移動業者を通じて導入が進められてきました。
その中でも注目を集めているのが、PayPayの「PayPay給与受取」です。PayPayは2024年8月、厚生労働省から指定資金移動業者として認可を受け、給与デジタル払いサービスを開始しました。PayPayによると、2025年4月時点で導入企業数は100社を突破しており、サカイ引越センターや吉野家、三井住友海上火災保険などで導入が進んでいます。従業員は給与をPayPay残高として受け取り、そのまま決済や個人間送金などに利用できます。
一方で、楽天銀行も給与受取口座の囲い込みを強化しています。
楽天銀行は、給与受取口座に指定した利用者に対し、楽天ポイント付与や他行振込手数料の優遇などを提供しています。これは制度上の「デジタル給与払い」とは異なりますが、“給与受取を起点に金融サービスへ接続する”という点では共通しています。従来、給与は「銀行口座へ振り込まれるもの」という位置づけでした。しかし現在は、スマートフォン決済やネット銀行との連携によって、“受け取った後すぐ使える金融体験”へ変化し始めています。
特に若年層を中心に、「銀行アプリよりも決済アプリを日常的に使う」という利用スタイルも広がっています。その結果、給与受取そのものが、金融UXの入口として重要性を増しています。
なぜ“給与DX”が進んでいるのか
今回の変化は、単なる給与受取手段の追加ではありません。企業の人事・労務・金融インフラそのものが、スマートフォン中心へ移行している点に本質があります。これまで給与は、「月1回、銀行へ振り込む」という仕組みが当たり前でした。しかし現在は、キャッシュレス決済やデジタルウォレットの普及によって、「受け取った後すぐに使える状態」が求められ始めています。
また、企業側にとっても、給与DXは採用競争力の強化につながる可能性があります。特にアルバイトや若年層では、「普段使っている決済アプリで給与を受け取りたい」というニーズも出始めています。さらに今後は、給与データと家計管理、ポイント経済圏、金融サービスが連携することで、“給与を起点とした金融プラットフォーム化”が進む可能性もあります。
DXマガジン編集部視点
デジタル給与払いは、「給与の受け取り方が変わる」という話だけではありません。本質は、“銀行中心の金融構造”が変化し始めている点にあります。これまで銀行は、「給与振込口座」を起点に顧客接点を築いてきました。しかし現在は、スマートフォン決済アプリやネット銀行が、その入口を奪い始めています。
特にPayPayのようなスーパーアプリは、「決済」「送金」「ポイント」「金融」を一体化し、生活インフラ化を進めています。その中で給与受取まで取り込めれば、“お金が流れ込む入口”そのものを押さえることになります。給与DXは、単なる人事DXではありません。決済・金融・生活導線を巡る、新たなプラットフォーム競争が始まっているのかもしれません。
レポート/DXマガジン編集部






















