株式会社NTTドコモと日本電気株式会社は、NTTと共同で、6Gの主要技術として期待される40GHz帯ミリ波を用い、複数の高速移動車両で同時に安定した大容量通信を実現する技術を開発しました。2026年3月に国土交通省 国土技術政策総合研究所の実大トンネル実験施設で実施した実証では、対向車線を高速で走行する複数の無線端末車両が高いスループットを安定維持し、平均スループットは従来比で約1.3倍に向上しました。基盤となるのは、基地局から多数のアンテナを分散配置する分散MIMOに、送信周波数と送信タイミングの事前補正を組み合わせた点です。結果として、ミリ波を活用した自動運転や没入型の車内体験など、社会実装に向けた進捗が示されました。展示はワイヤレスジャパン×ワイヤレス・テクノロジー・パーク2026およびつくばフォーラム2026で行われます。
背景と課題 高速移動下でミリ波通信が不安定になる理由
自動車や列車のように高速移動中にミリ波など高周波数帯で通信すると、基地局切り替えが頻発し、ドップラー周波数や伝搬遅延が急変して通信品質が低下します。両社とNTTはこの課題に継続して取り組み、2025年3月には高速移動車両1台に対し基地局側で送信周波数と送信タイミングを補正することで安定化させる実証に成功しています。今回の実証はその技術を発展させ、対向車線を互いに向かい合って走行する複数端末が同時通信する、より複雑な条件に対応しました。焦点は、アンテナ切り替え時に発生する受信周波数と受信タイミングの差をいかに抑制するかにありました。トンネルのように反射が多く伝搬路が複雑な環境は、現実の鉄道や道路環境に近い厳条件として設定されています。高速移動時のハンドオーバー品質を保つことが、6G時代の移動体サービス拡張の鍵といえます。
技術の特長 分散MIMOと事前補正で複数端末の差異を同時解消
本技術は、基地局の各アンテナが受け取る上り参照信号をもとに、各無線端末車両ごとに適切な送信周波数と送信タイミングを事前推定する点が中核です。推定結果に基づき、複数端末向けに多重化する下り信号を端末ごとに事前補正して合成し送信します。これにより、アンテナ切り替え時に端末ごとに異なる受信周波数や受信タイミングの差を同時に解消します。分散MIMOによりアンテナをエリア内に分散配置し、端末とのMIMO伝送を行う構成は、広いエリアでリンク品質を確保しながらハンドオーバーの影響を抑える狙いがあります。1台対応から複数台対応へ拡張した今回のアプローチは、車群や列車編成など多数端末の同時接続が前提となる用途で有効性を示しました。ミリ波の大容量性を安定的に引き出すための、基地局側インテリジェンスの高度化が示されています。
実証条件と結果 トンネルでの厳条件下でもスループット低下を抑制
実証は2026年3月26日から27日にかけて、実大トンネル実験施設で実施されました。道路片側に150メートル間隔で3台の分散アンテナを設置し、2台の無線端末車両を時速60キロで対向走行させて下りリンクの伝送を評価しました。まず従来技術のみを適用した場合、トンネル内での反射や頻発するアンテナ切り替えにより、合計スループットは切り替え時に550Mbpsから110Mbps程度まで大きく低下し、30秒平均は約430Mbpsとなりました。これに対し新技術を適用すると、切り替え時のスループット低下が抑制され、380Mbps以上を安定維持、平均は560Mbpsに向上し約1.3倍となりました。加えて、累積分布関数における下位5%値は従来の270Mbpsから480Mbpsへ約1.8倍に改善しました。複数端末が同時にハンドオーバー影響を受ける条件でも、品質の底上げが確認されています。
社会実装への意義 自動運転や車内体験の高度化に前進
今回の成果により、複数の自動車や列車が高速移動する環境でも、ミリ波分散MIMOを用いた大容量かつ安定した通信が可能であることが確認されました。これにより、車内でのXRなど没入型サービス、生成AIを活用したリアルタイム翻訳や案内、協調型自動運転に向けたセンサデータ連携といったユースケースでの活用が期待されます。今後は高速鉄道や在来線、幹線道路などさまざまな実環境での検証を進め、6G時代の安定大容量通信の実現に貢献する計画です。展示予定は、東京ビッグサイトのワイヤレスジャパン×ワイヤレス・テクノロジー・パーク2026、およびNTT筑波研究開発センタでのつくばフォーラム2026となっています。実環境での検証拡大とともに、基地局側の事前補正制御の実装性や運用性も評価対象となります。
導入と展開に向けた実務ポイント
分散MIMOの効果を引き出すには、アンテナ配置の最適化と上り参照信号の安定確保が前提となります。本技術は基地局側で端末個別の周波数とタイミングを推定し事前補正するため、端末側の変更を抑えつつ下り品質の底上げが可能です。トンネルなど反射環境では切り替え頻度が高くなるため、アンテナ間間隔や配置高度、ビーム制御の一貫性が性能に直結します。検証では150メートル間隔での3アンテナ構成で効果が示されており、今後は鉄道や幹線道路の線形に合わせたスケール設計が重要になります。実証で示された平均スループット約1.3倍、下位5%で約1.8倍の改善は、ピーク性能だけでなく最低品質の引き上げが可能であることを示唆します。多端末同時接続を前提に、ハンドオーバー時の品質確保を軸とした設計指針が有用です。
詳しくは「株式会社NTTドコモ」の公式ページまで。レポート/DXマガジン編集部





















